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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔を出すの? 出さないの? いえ両方です 6

《ポリポリポリポリ… 》



L字に並んだソファーの反対側に座り、テーブルの上のお菓子をパクつく義也を横目に、前に立って腕を組んでいる歩美をそっと見上げる。



「じゃあ、1度話を整理します」

「はい…」



生徒会の緊急会議が終わった後、ガップレの真のリーダーである歩美に事の次第を話したところ、ガップレも緊急会議を開くということで、 翔ちゃんを除くGodly Placeのメンバー4人がこうして俺の家に集まっていた。


なぜ翔ちゃんが来ないかと言うと、翔ちゃんは今キッチンで母さんの料理の手伝いをしている俺の妹、愛美に落武者と罵られ、警察まで呼ばれそうになったのがトラウマで来れないそうだ。


すまんな、翔ちゃん。俺の妹の所為で… 離れていても心は1つだよ!



「まず当日、私たちはGodly Placeとして自分たちの学校の学園祭のステージに立ちます」

「はい…」


「そこへ、何故かkira☆kiraも私たちの学校の学園祭に参加して、私たちと同じステージに立つ」

「はい…」


「しかも、kira☆kiraは自分たちの側から学校側に出演を依頼して、出演料も謝礼も要らない代わりに、入月勇志に学校の案内と身の回りのお世話をするという条件を出してきて、学校は了承した」

「はい…」


「さらに、クラスの出し物がメイド執事喫茶になって、ゲストステージの時間はくじ引きで店番の人を決める、と…」

「はい… その通りでございます…」


「ハァ… どうしたらこんな過酷な状況になるのか教えて欲しいわね」

「俺の方が教えて欲しいです…」


「そもそも、どうしてkira☆kiraは勇志を名指しで指名したんだ? 超スーパーアイドルが自分たちの方から高校の学園祭に参加したいってのもおかしな話だし」



今まで黙って聞いていた真純が俺も1番疑問に思っていることに対して質問してくる。



「いや、俺も色々考えてみたけど全く身に覚えがないんだよ… ガップレの活動以外でkira☆kiraに会ったのはゲーム大会だけだし…」


「なるほど、理由はわからないのか… 」


「ちょっと勇志!? それ本気で言ってるの?」



何だ? 俺の話に納得した真純とは真逆の反応をする歩美。本気も何も、本当にわからないんだからしょうがない。



「勇志くんの鈍感は筋金入りだもんね~、《ポリポリ…》」



歩美に便乗するように義也まで変な事言っている。ていうか、お前はいつまでお菓子を頬張っているつもりだ。



「義也、皆の分のお菓子も残しとけよ?」

「はーい」



返事をした後、すぐにお菓子を取る手を止める義也。そういうところだけは素直で可愛いんだが。



「それで? 勇志は本当に自覚がないの!?」

「自覚? はて、何のことやら」


「「ハァー…」」



何だ何だ2人とも、どうしたんだよ!? まるで俺が何にもわかってないみたいな感じじゃないか!



「なあ2人とも、勇志はともかく、俺にもわかるように説明して欲しいな」



どうやら真純も、俺と同じでよくわかってないらしいが、俺の方をチラチラ見ながら2人に説明を求めいるところを見ると、おそらく俺の事を気にして聞いてくれているのだろう。


本当に真純はいい奴だな。今度、九条麗香に紹介してあげよう。ガップレのマシュにそっくりですって紹介すれば食いつくだろう。



「そうね、真純くんはゲーム大会いなかったからわからないもんね、えーと… 」


「じゃあ、僕が代わりに説明してあげましょーう!」

「んんッ!?」


義也が歩美の言葉を遮るように説明を始めるが、ちょっと待て! 義也はゲーム大会にはいなかったはずだよな!?



「ユウこと勇志くんと、ミュアこと歩美ちゃんは、神無月学園の西野莉奈さんと一緒に3人で、戦場の友情というゲームの大会に参加しました」


「あ~、あの明るくて元気な子ね、それでそれで?」


「何とそのゲーム大会のゲストにkira☆kiraが来ていて、事もあろうに、ユウのお面を被っていない勇志くんたちと接触してしまったのです。何とかその危機を乗り越え、いざゲーム大会が始まると、何とそのゲーム大会はプレイヤーをデスゲームに巻き込まれたと思わせるように仕組まれていたのです!」


「おお~ッ!! それでそれで!?」


「あっという間にデスゲームだと思い込んでしまった勇志くんは、歩美さんと莉奈さんを助けるために、いつもグータラやる気ないくせに、珍しく本気を出してデスゲームを勝ち抜き、終わらせました。そこで初めてこの大会がデスゲームじゃないと知り、めでたしめでたしとなるはずだったのですが…」


「ですが….!?」


「ゲーム大会中の本気の勇志くんは、会場のモニターに常に中継されていて、いざという時に頼りになるとか、カッコいいとかで、ひっそりとファンクラブが出来るくらい人気になったんだよ」


「ほほぅ」

「えッ!? ファンクラブ!? 俺知らないんだけど!!??」


「大丈夫、ファンクラブの方は僕の勇志くん観察に支障が出そうだったから、潰しておいたよ」



なにそれ、ヤダ、コワイ。



「それで、勇志の人気がkira☆kiraとどう関係してるんだ?」


「kira☆kiraのアキラたんはね、いざという時に頼りになる男らしい人がタイプでね~。偽のデスゲームでカッコいいところを見せた勇志くんに、コロッといっちゃったってわけ」


「はあッ!? アキラが俺を!? ってか、何で義也がそんなこと知ってるんだよ!?」


「それは企業秘密」



なにそれ、ヤダ、コワイ。



「ゲーム大会の最後、アキラから握手された時、何か貰ってたでしょ?」



歩美が俺の顔を覗き込みながら問いかける。歩美の澄んだ大きな瞳に見つめられて、恥ずかしくなってつい顔を逸らしてしまう。



「えーと、そう言われれば貰ったんだったな、連絡先…」


「それで連絡はしたのか?」



間髪入れずに真純が問い掛けてくる。そんなにまくし立てなくてもいいだろ…


あれ? そういえばアキラの連絡先どうしたかな? 確かあの後、大会のパンフレットに挟んで…


あ…



「いや~、大会のパンフレットと一緒に捨てちゃったみたいだわ~、だから… してないです…」


「まあ、これでkira☆kira、と言うより、アキラの目的がはっきりしたわね」


「アキラたんの勇志くんにダイレクトアタック作戦ってとこかな? 歩美ちゃんもそれくらい押しが強ければ…」

「うるさいー!」


「う、嘘だ… いつも会えば嫌な顔されて、舌打ちしてくるようなアキラが、俺の事を好きになるなんてありえない…!! そもそも俺がモテるなんてことがあるのか!?」



答えのない自問自答のループにハマり、頭を抱えて蹲る。それは目の前の歩美と義也の会話が途中から聞こえなくなるほどだった。



「まあアキラたんはユウと勇志くんが別人だと思ってるからしょうがないんだけどね~」


「お兄ちゃん、凄いじゃん! もしアキラちゃんが義姉さんになったら、私は妹として鼻が高いよ~」


「あらやだ、どうしましょ〜」


キッチンで母さんの料理の手伝いをしていた妹の愛美が、大好物の恋バナに反応して声を上げる。


母さんも呑気なこと言ってる場合じゃないぞ!?



「そんなんじゃないってば! 真純ぃ~~! 助けてくれぇ~~!」



ついに耐えられなくなった俺は、隣に座る真純の腰の辺りに抱き付く。真純はそんな俺を慰めるように、ポンポンと優しく頭を撫でてくれた。



「よしよし、でもほら良かったじゃないか! 相手はあのスーパーアイドルkira☆kiraのアキラだろ!? 可愛くて歌が上手くて、口が悪くて、男勝りで…って、あれ!?」


「途中から褒めてないし… あ゛~~!! 俺はもっと女の子らしい笑顔が似合う可愛い子がいい~~ぃ!!」



結局、真純のフォローは失敗。俺はグリグリと真純の腰に頭を押し付けて気を紛らわそうとする。



「ほら勇志? 笑顔が似合う可愛い子ならここにいるわよ?」



膝と腰をクイっと曲げて、両手を後ろで組んで笑顔を作る歩美。あの雨の日の告白以降、歩美が俺を意識しているか、それとも俺が歩美を意識しているのか、とにかく背中が痒くなるような、そんな照れ臭い感じがする。




「う、うん、可愛いよ、歩美は…」

「そんな照れないでよ… 恥ずかしいでしょ…?」

「ヒュー、ヒュー」



そんな甘ったるい空気に耐えられなくなったのか、隣の真純が俺に訪ねてくる。



「それで勇志はどうしたいんだ?」

「もちろん、アキラには俺のことをきっぱり諦めて貰って、何事もなくお帰り頂きたい!!」


「こうなったらもう勇志がアキラに、自分はガップレのユウだってカミングアウトしたらどうだ?」


「それはちょっとリスクが高いよ。芋づる式に僕たちまで身バレしちゃうだろうし…」



確かに義也の言う通り、俺もそのことを考えたことが、そうなれば俺だけの問題じゃなくなってしまうからな。



「それに…」



義也が凄く真剣な表情をして話を続ける。俺がカミングアウトすることが、そんなにも悪影響が出てしまうのだろうか?


「それに… そんな事したらつまらないじゃない、折角面白そうなのに」

「おい、ちょっと待て! 今何て言ったのこの子?」



俺以外のメンバーは義也の言葉をサラッと流して話を続ける。



「じゃあ、アキラにごめんなさい、諦めてくださいって言えばいいか?」

「あの~…」


「まだ好きとも言われてないから、それは出来ないわね。アキラに勇志を諦めてもらう方向で考えたらいいんじゃないかしら?」

「ちょっと~、すいませーん…」


「そうだね、学園祭でアキラたんを案内している間に、勇志くんは実はナヨナヨしてて、かっこ悪くて、鈍感で、だらしなくて、引きこもりで、やる気のない男って思わせればいいんだね」

「もういいです、ごめんなさーい…」



みんな酷い、酷いよ…

ちょっと拗ねようかしら。


そう思っていると、後ろから母さんの手伝いを終えた愛美が俺の隣に座りながら口を開く。



「義也さん、それっていつものお兄ちゃんじゃない?」


「そうね」

「そうだな」

「そうだね」


「おいーッ! 酷いよ、みんな酷いよ!! 確かにそうだけどさ、そうなんだけどさ? せめて、やればできる子って入れてくれない!? せめて!」


「じゃあ、勇志が普通に学園祭案内すれば、そのうち気付くから気にしなくていいわね」



最後、結局適当じゃないですか!!もうちょっと皆さん、親身に考えてくれません!?


まあ結局俺が何とかするしかないんだろうけどさ、そうだけどさ。



「後は、ゲストライブの時間に抜け出せるかどうかだけど、勇志と真純くん以外は問題なく抜け出せそう?」


「僕の方もクラスの催し物が忙しそうだったけど、女子に上目遣いでお願いしたら抜けても大丈夫だって」



そう言って上目遣いでウインクする義也。もうここまで来ると見ていて笑えてくるよ。



「翔ちゃんの方はは、まあサボるだろうし、大丈夫かな? 歩美の方はどうだ?」


「私も何とか抜けられそうかな」


「じゃあ、問題は俺と真純だけか…」


「俺、くじ引き自信ないんだよな~」


「大丈夫だよ真純、くじ引きなんて所詮確率なんだからハズレが続いた時にササっと引けば当たるから!」



そうやってバンバン真純の背中を叩きながら励ます。さっきの恨みも多少込めておく。



「皆んなー、ご飯できたから食べていってね~」

「「「はーい」」」



母さんのご飯が出来たため、今回の緊急会議は終了した。


その日は、ガップレの皆んなは晩飯を食べて帰ってた。


あれ? 1人忘れてる気がするがまあいいか。


そして後日、ゲストライブの時間帯のフリー権を賭けたクラスのくじ引きに俺だけ見事に外れたのであった。

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