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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔出し中は好きにやらせていただく 23

「なッ!?」

「うそ… 」


森林地帯に面している丘には先程倒したunknownの中ボスと同じ奴が2体、市街地にいる俺たちを見下ろしていた。


そのうちの1体が左手で引きずっていた物を市街地に向かって投げ落とした。


鈍い金属音を立てながら丘を転がり落ち、ビルに弾かれて止まったそれは、ボロボロになった黒いダンガムの頭部と胴体が少しだけ残ったスクラップで、その特徴的なシルエットから誰の機体だったかはすぐにわかった。



「ダンガムウイング… ゼロがやられたのか…? 」


「嘘だろ!? ゼロって、あのナイツオブジオンのナンバー2じゃねぇか… 」



ゼロという名前を聞き、すぐさまナイツオブジオンというワードがロックの口から出される。


それ程までに、ゼロという人物が戦場の友情というゲームの中で実力者であったことが伺える。


しかし、そんな実力者であったはずのゼロの機体が見るも無残な姿で今、目の前にある。



「まさか… 全滅したの…?」



全員が心の中に芽生えていた疑問を西野が口に出してしまう。


そのたった一言には、全員が確信していた希望を消し去るに十分な力があった。



「ギィギィギィギィギィィィイイ!!」



中ボスのunknownが天に向かって雄叫びを上げると、その後ろから通常のサイズのunknownが中ボスの横を抜き去り、市街地になだれ込んできた。


駄目だ! このまま心に絶望を植え付けられた状態で戦えば間違いなく全滅する。



「各機、小型のunknownを撃破しつつ補給エリアまで後退、俺はあの2体を引き付ける… 」


「無茶よ! 1体でも手強いのに、1人で2体も相手をするなんて!!」



西野が当然のように俺の無謀な提案を止めさせようと声を上げる。



「勝算はある… 信じてくれ」

「でも!」

「莉奈、勇志なら大丈夫。勇志が信じてって言ったときは絶対に大丈夫だから…!」


「歩美!? …わかった… 私も勇志を信じる」

「ありがとう、西野… 全機散開!!」



デスゲイズを全速力でチームから離し、ビームサイズの刃を中ボス2体に向けて飛ばす。


中ボス2体はいとも簡単にビームの刃を躱して丘を降り、俺に向かって突進してきた。


これでチームからこの2体を離すことには成功したが俺1人でやれるか? いや、やるんだ! これ以上誰もやらせるわけにはいかない!



「ノエル! この中型サイズのunknownの復活までの時間はわかるか!?」


「データが少なすぎて… 」

「ならこれでどうだッ!!」



突進してきた最初の1体をバックステップで避けると思わせて、スラスターを全開にして突進。


一瞬で間合いを詰め、中ボスのunknownを一刀両断にする。


そのまま切り抜けて後ろの2体目に斬り掛かるが、両手のコアからビームスピアを出し交差するように出現させてビームサイズの攻撃を防ぎ、鍔迫り合いになる。


ジリジリとunknownが俺の攻撃を受け切れなくなってきたが、先程倒した1体目がゆっくりと半分に切断された身体を再生させながらデスゲイズの背後に立ち上がる。



「時間は!?」

「復活までのタイムラグ、5秒ジャストです!!」


「それだけあれば十分だ!!」



鍔迫り合いをしていたビームサイズのビームの放出を切り、サイドステップで横に抜ける。


突然鍔迫り合いを解かれたunknownは力を逃がしきれずよろめく。


再びビームサイズのビームを放出して鎌を形成すると、後ろのunknownもろとも斜めに斬り下ろす。


よろめいていた手前のunknownは右肩から左腰にかけて切断したが、後ろのunknownには避けられてしまうが、そのままビームサイズを横に構え突進し、斬り伏せたunknownごとビルに押し付けた。



「ギィィィ、ギィギィギィギィ!」

「これといってあいつに思い入れはないが… 」



左腕で手前のunknownのコアを掴み、腕から引き抜く。そのままコアを手前のunknownの顔面に殴りつけ、後ろのunknownの頭ごと圧し潰し、コアを握り潰す。


2体合わせて残り3つのコアを復活するまでの5秒の間にすべて斬り捨てた。



「仇はとったぞ、ゼロ」



エネルギーも底を尽きかけているし、デスゲイズの左腕がunknownを殴り潰した影響で損傷してしまった。


このまま戦えば間違いなくやられるだろう。ここは1度補給エリアまで撤退したいところだが…


「ノエル、全員撤退したか?」

「ダメです!敵の数が多過ぎて足止めを受けています!! 味方機が何機が戦闘不能に… 」


「わかった、直ぐに向かう!」











「中型unknown2体、041に撃破されました」

「流石だよ、入月勇志くん。そろそろ私の出番かな」



このオペレーションルームの大型モニターにはゲームの参加者全員の様子や、見ている映像をリアルタイムで観察することができる。


とは言っても、すでに半数以上のプレイヤーがすでにゲームオーバーになっているため数人のプレイヤーしかモニタリングしていない。


さらに言えば、私の個人的な感情もありモニターの1つとオペレーターの1人を専属で入月勇志くんの監視と報告に当てている。


そのため、メインステージの中継映像も必然的に入月勇志くんの映像が多く流れているが、大会参加者の中でも彼の活躍は群を抜いているため、会場の観客たちはこれまでにないほどの盛り上がりを見せている。


これがデスゲームだというブラフに踊らされているプレイヤーたちの恐怖や絶望に、観客たちは快感と満足感を得ているのだろう。


人は他人の不幸を見て、自分の幸福に満足する生き物だからな…



「おいアンタ! ちょっとこれはやり過ぎじゃないのか!?」

「アキラちゃん!?」


「月島アキラさんでしたね? やり過ぎとはどういうことでしょうか?」



アイドルユニット『kira☆kira』の2人。


彼女たちの方から大会を間近で見たいと申し出てきたために、このオペレーションルームで見学させているが、何かと突っ掛かってきて迷惑極まりない。



「人があの気持ち悪いのに喰われるとか、痛みがどうとか… いくらゲームだからって騙すような真似して!」

「騙すなど人聞きの悪い… 」


「それに! あの勇志ってやつに対して必要以上に追い込んでるじゃないか!?」


「何度も言っているように、それも全て観客を盛り上げるためのシナリオなんですよ、ご理解ください」


「わかんねぇよ! 仮にそうだとしてもあの勇志ってやつは本気で命を賭けて戦っているようにしか見えないじゃねえかッ!!」


「アキラちゃん!!」

「キアラは何とも思わないのかよ!?」


「私だって! …私だってあの人が本気だってわかるよ… でも、郷田さんがシナリオだって言ってるから… 」


「041、チーム4に合流。unknown次々に撃破されていきます」

「中型unknownを3体を送り込み、全員を補給エリアまで誘導しろ」


「了解しました。中型unknown3体、ポイント28に出現、チーム4と接触まで4、3、2、1… 会敵しました。041と交戦開始、映像メインモニターに出します」


「ふふふふふ… 素晴らしい!! 入月勇志くん!! 君はどこまで私を楽しませてくれるんだッ!! すまないが私はもう行くよ… あとは手筈通り頼む」

「了解しました」


「こらーッ! まだ私の話は終わってねぇぞ!!」



私は遂に待ちきれなくなり、kira☆kiraのアキラが騒いでいるのも耳に入らず、中型unknown3体を相手に奮闘する入月勇志くんの映像が映し出されたモニターを背に、オペレーションルームを後にしたのだった。

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