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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔出し中は好きにやらせていただく 18

ブリーフィングルームに全員が収まると、テント内の明かりが消され、中央にある正方形の台座が光だし、空中に立体映像が表示される。



「すげぇー…」

「うひゃあ~」



どこからともなく感嘆が漏れる。


それもそのはずだ、アニメとか映画で見たようなブリーフィングルームの映像が目の前で繰り広げられているのだから。


直ぐに、立体映像の前に郷田宏人が出てきて話し始めた。



「さて、これから皆さんにはブリーフィングをしていただくが、その前にこの中からリーダーを決めたいと思う」


「リーダーは必要なんっスか?」



郷田の言葉を遮るようにどこからか質問がされる。



「迅速な判断が求められる戦闘中に、多数決で決めるというのであれば必要ないでしょう」



郷田の冗談を受け、テント内に笑いが起こるが、俺と西野と歩美はニヤリともしなかった。



「時間もあまりないため、私の方からリーダーを決めたいと思います、何か異議はありますか?」



誰からも反論の声は上がらず郷田は話を続ける。



「ではミスター・サムライくん、前へ」

「はい」



郷田の指名を受け、ミスター・サムライが立体映像の前へ進み出てくる。



「彼はプレイヤーの中で最年長であり二つ名持ちです。 また戦場の友情の国内大会は全て参加し、そのどれもでベスト4以上戦績を残しています。 ではここからはミスター・サムライくん、よろしく頼むよ」


「たった今、郷田宏人氏よりリーダーに任命されたミスター・サムライだ、呼び名は好きなように読んでくれて構わない」



ミスターサムライは小慣れた様子で、皆に挨拶をしている。


見た目からしてリーダーというような風貌と、喋り方もあってリーダーにぴったりな気がする。



「私がリーダーをするにあたって納得のいかない者も少なくないと思うが、この協力プレイでは我々がいかに協力し、連携をして敵を倒すかが求められているはずだ!」



ごもっともでございます。



「よって、我々は現時点で一致団結する必要がある! 皆どうか力を貸して欲しい… それぞれ考え方は違えど、同じゲームの元に集まった同志、戦友だ! 『戦場の友情』というこのゲームのタイトルに恥じないような戦いをしようじゃないかッ!!」


「「「おおおーッ!!!」」」



よくもまあミスター・サムライはあんな臭い台詞が後から後から出てくるもんだよな、聞いてるこっちがむず痒いわ。


この長い演説の後にジーク何たらと付け足せば立派な反乱軍が1つ出来上がるくらいの説得力はあるんじゃなかろうか。


ミスター・サムライはプレイヤーの中を見回し、俺と目が合うと小さくウィンクをした。



「勇志ってそっちの趣味だったの?」

「違う!断じて違うからな!」


西野がジト目で俺の顔を見てくるが違うぞ!? ミスター・サムライのやつ、全くいい迷惑だ。



「それではステージマップの説明をする」



ミスター・サムライはスタッフに手渡されたA4サイズの端末を見ながら説明を始める。


すると中央の立体映像も画面が切り替わり、ステージマップが大きく表示された。



「これが今回我々が挑むステージだ。見て分かる通り、従来のステージよりかなり広く作られている。 そしてエリア毎特色があり、山、森林、荒野、海、旧市街地などで大まかに分かれている」



中央の立体映像がそれぞれのエリアの映像を順番に映し出してくれるため、マップの全体像がよく分かる。



「サムライ質問いいか?」

「何だ?」



声の主は赤髪の男でかなり整った顔をしている、歳も俺たちと変わらないくらいだろうか。



「マップ中央のエリアだけ表示されている色が違うが、どうしてだ?」



確かにあの男の言う通り、立体映像のマップは薄い緑色で表示されているが、中央のエリアだけ青色で表示されていた。



「そこは我々全員の補給エリアだ、スタート地点もランダムではなく、全員この中央の補給エリアから開始になる。従来通り大破以外の損傷であれば、この補給エリアに戻ることで、ある程度ダメージを回復することができる」


「へぇー、それなら全員で戦闘と回復のローテを組めば楽勝なんじゃねえっスか?」



いかにもお調子者といった感じのやつが短絡的な考えで発言をする。



「残念ながらそう簡単にはいかないだろう。 敵はこのマップ中央の補給エリアに向けて進行してくる、しかもこのマップのどこから出現するかはランダム、最悪の場合、補給エリアを背に360度囲まれてしまうことも考えられるわけだ」


「まじっスか! それって中々の無理ゲーじゃないっスか!?」


「難易度はかなり高いことは間違いないだろう、だからこそ、この場でしっかりと作戦を練る必要があるんだ」


「敵が中央のエリアを目指して進行してくるなら感覚的には防衛戦に近い動きになるな… 」



再び赤髪の男が呟くように発言をする。



「そうだ、さすがナイツオブジオンのギルドマスター、赤星レンだな!」


「げッ!? あいつが赤星レンか… 」

「ナイツオブジオンって、あのゼロってやつが所属してるギルドよね!?」



西野もナイツオブジオンという言葉に反応して前のめりになる程に反応している。



「ああ、しかもそこのギルドマスターと言えば、『赤い流星』の二つ名を持ち、ただの一度も負けたことがないと言われていて、去年の全国大会で優勝して、名実共に最強のプレイヤーと言われている」



この赤星率いるチームとトーナメントで当たっていたら、間違いなく負けていただろう。



「一度手合わせ願いたいわね!」

「だからって、いきなり後ろから撃ったりしないでくれよ?」



西野の無駄話に付き合っている間にも作戦会議は進んでいった。


マップを大雑把に5分割し、元々の3人チームを5つ集め、15人ずつ5チームになるように編成し、チーム毎割り振られたエリアを防衛していく形になった。


そして各チームの隊長はミスター・サムライが独断と偏見で任命するらしい。



「それではリーダーを発表する!」



ミスター・サムライの指示で15人ずつの5チームに分かれたプレイヤーたちの視線がミスター・サムライに集まる。



「チーム1 隊長は赤星レン」



ミスター・サムライに任命されたのに顔色一つ変えず、胸の前で腕を組み目を閉じている、さも当然って感じだな。


まあ最強と言われるギルドのギルマスであり、前回大会のチャンピオン、これだけの肩書きならば誰からも文句は出ないだろう。



「チーム2 隊長、ゼロ・ルシフェル」


「皆さん、僕のことはゼロと読んでくださいね」

「さすがゼロね!」

「ゼロならば当然だ」



早速自分のチームメイトに挨拶を始めるゼロ。


前に乱入して来た時に一緒にいたやつらだろうか? 両サイドにはツインテールの女子とガタイのいい男がゼロを囲んでいる。


乱入された時にちゃんとは見てなかったが、ゼロの動きは中々だった。


おそらく、かなりの手練れだろう。



「チーム3 隊長は工藤翔太(くどう しょうた )」


「よっしゃ! 俺っスね~、みんなよろしくぅ!!」

「翔太が隊長だってよ」

「ウチらのチームが1番心配ね」


「みんな~、酷いっスよ~ぉ」



あいつはここに来て1番最初にリーダーが必要なのかと質問したやつだったな。


他の2人の隊長と比べると1番接しやすい雰囲気だが、どうもお調子者っぽいな。


何となく、歩く災害の小畑に似てる気がする… 顔は翔太ってやつのが10倍は格好良いがな。



「続いてチーム4 隊長は… 」



ミスター・サムライのやつやけに勿体振るな、早く言えよ。


そう思ってミスター・サムライを見ると俺とバッチリ目が合い、嫌な予感が込み上げてくる。


いや、まさかな…



「隊長は入月勇志に頼みたい、やってくれるな?」

「はぁー… 拒否権は?」


「残念だがない、期待しているぞ入月青年! そして、チーム5は無論私だ、よろしく頼む。 それでは時間もあまりない、各チーム毎で簡単な自己紹介してから、立体映像のマップでそれぞれの配置を確認してくれ! 終わったらもう一度ここに集合してくれ、以上だ」



あの時のミスター・サムライのウィンクって、このことだったのか~!


「面倒事を押し付けるから覚悟しとけよ、入月青年 (笑 」ってことだったんだな!? 覚えてろよサムライ~!



「まあ、勇志が隊長なら私と歩美はやり易いわね」

「うん、期待してるぞ! 入月青年!」


「あッ、歩美までそうやってからかってー」



歩美が上目遣いでミスター・サムライを真似してウィンクをしてくる。


ちょっと可愛いなと思ったことは内緒だ。



「お前が俺たちのチームの隊長だな、確か入月って言ったか? 」


歩美、西野と話していると、後ろから声を掛けられて振り返るとチーム4のメンバーが集まっていた。


その筆頭にいるのがプロレスでもやってそうなガタイの良い大男で、腕組みをしながら、その鋭い目で品定めをするように俺のことを見下ろしている。



「入月勇志だ、こうなったからには全力を尽くす。だからその… よろしく頼む」


「お前はこの大会では結構な有名人だからな、どんなヤバイやつかと思ってみんな警戒していたんだが、どうやら考え過ぎだったみたいだな… 俺はロックだ! よろしくな!」



そう言って差し出された右手に、こちらも握手しようと手を上げるとロックが強引に握手をしてきてブンブン腕を振り回される。



「お、おう! わかったわかった! それで俺が有名人って何の話だ?」



何とか握手を解除して腕をさすりながらロックに尋ねると、何だ知らないのかと言わんばかりの顔をして答えてくれる。



「姿なく相手の背後に忍び寄り、その大鎌の一振りで命を狩る… 戦った者は皆、口を揃えて2度と戦いたくないと恐怖するという、冷酷で残忍な死神… 」


「何それ怖い! 俺ってそんなふうに言われてたの!?」


「まあしょうがないわよね、私も味方じゃなかったらと思うと背筋がゾッとするわ」



と、西野



「私は機体とか戦い方のことはよくわからないけど、悪趣味だと思う」



歩美まで!?



「ダメだ~、俺やっぱり隊長出来そうもないから誰か代わってくれ… 」


「おいおい、決まっちまったもんはしょうがないだろ、それに時間もないから早くマップ確認しに行こうぜ、隊長さんよ!」



ロックに引きずられるようにして立体映像のマップでチームの配置を確認したのだった。


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