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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
76/127

顔出し中は好きにやらせていただく 17

「はぁ… やっちゃった… 」



マネージャーさんからは例えガップレのユウさんのことを聞かれたとしても、良いお友達ということ以上は何も言わないでと、あれほど釘を刺されたのに、目の前でユウさんのことを悪く言われて、つい怒ってしまいました。


そうでなくても最近週刊誌などで、ユウさんと私の根も葉もない噂が流れていて、マリーさんからも気を付けるように言われていたのに、先程のことで余計に話がややこしくなってしまうかもしれません。



「ユウさんにこれ以上迷惑掛けたくないのにな… 」



先程からこんなことばかり考えているからでしょうか、誰もいない控え室が尚更に寂しく感じます。


ユウさんは週刊誌で噂になっていることを知ってるのでしょうか?


携帯のメールフォルダを開き、ユウさんとのやり取りを読み返して文字を指でなぞります。


もし知ってたらどう思ってるのでしょうか?


私みたいにちょっと嬉しく思ったりしたのでしょうか?



「ユウさんに会いたいな… 」



そう思って携帯を握りしめているとメールの着信が鳴り、びっくりして携帯を落としてしまいそうになります。


画面を見るとユウさんからのメールでした。



『週刊誌に俺とキアラのことが噂されているってさっき知ったよ。 ごめんね、迷惑掛けちゃって… これから俺のことでキアラが嫌な思いをしてほしくないから、俺のことを聞かれたら気にしないで適当にあしらってね』



ユウさん…


自分もスキャンダルに遭って色々大変なはずなのに私のこと気遣ってくれて、本当に優しい人ですね。


もういっそのこと、このままユウさんとお付き合いをして、堂々と交際宣言をすれば、これ以上ユウさんに迷惑を掛けないで済みますし、私も幸せに…


キャーッ!!

無理です無理です!!


私からユウさんに告白するなんて恥ずかし過ぎて絶対にできません!! それにユウさんが私のことをどう思っているかもわかりませんし…


でもメールだったらこのまま…



『こちらこそ私のことでユウさんにご迷惑をお掛けして本当にごめんなさい。 その… 1番早い解決方法がございまして… もしユウさんが嫌ではなければの話なんですが、その… 私とユウさんが… お、おつ…』


「そんな真剣な顔して何やってんだ? キアラー 」

「えぇえッ!? あ、アキラちゃん!? いつの間に!!??」



驚いた拍子に手の上で2、3

回バウンドした携帯を両手でキャッチして再び画面を見ると、そこには『送信しました』の文字が表示されていました。



「キャーッ!!! どうしよう~!? 送るつもりなかったのに送っちゃったよぉ~~!! 」


「真剣な顔をしてると思ったら今度は大慌て、キアラは忙しいな~」



アキラちゃんは私とテーブルを挟んで向かい側の椅子に座り、頬杖をついてニヤニヤしています。



「う~~… アキラちゃんが脅かしたからなのに~」


「それよりさ、今さっきまで大会の初戦を見てたんだけど、すっごく強い奴がいてさー! 死神みたいな見た目でビームの鎌でズバーァァァって!!」



アキラちゃんは私の眼の前で鎌を振るうようなジェスチャーをして興奮気味に説明してくれていますが、私はそれどころじゃなくて、今送ってしまったメールをユウさんに何て言って説明しようかということで頭が一杯でした。


幸い『付き合う』という文字は打ち込みきれていないから大丈夫だとは思いますが…



「ねえー、キアラ? ちゃんと聞いてる~!?」


「はいはい、聞いてるよ。確かアキラちゃんはゲームとかあんまり好きじゃなかったでしょ? 室内でテレビゲームするより、外で身体を動かす方が好きだって言ってたじゃない」


「いやー、思ったより全然迫力あって格好良かったんだよねー、3対3のチーム戦だから連携とか相手チームの裏をかいたりとか、単純なゲームのテクニックだけじゃないってところが面白いんだよー!」



いつになくアキラちゃんがゲームのことをすごく褒めています。


久々にアキラちゃんの興奮する姿を見て、私も少し興味が湧いてきました。



「アキラちゃんがそこまで褒めるなんて本当に面白いんだね、次の試合からは私も観戦しようかな」


「そう来なくっちゃ! 私たちが大会を観戦するなら特別にオペレーションルームとかいう所で観戦していいって偉い人が言ってたから、一緒にそこに行こうよ!」


「あッ! ちょっとアキラちゃん!? ちゃんと付いて行くから手を引っ張らないで!」



高ぶる気持ちを抑えられないアキラちゃんに手を引かれ、私たちはオペレーションルームに向かいました。














俺たちのチーム『莉奈と歩美と愉快な仲間』の初戦は特に苦戦することなく勝利した。


西野と歩美のコンビネーションがうまくハマっていて、逃げてきた相手を最後に俺が斬り伏せて終わった。


西野と歩美、2人の息が本当にぴったりなんだよな。


出会った頃はいきなり喧嘩を始めたりで、とても仲良くなるとは思ってもなかったのに、近頃では話も合うみたいで笑い合ってる姿をよく見る。


いつの間に仲良くなったんだか、俺も一緒にいたはずなのに全くわからんのです。


そんな2人を横目に、今俺たちは開会式があったメインステージの前にいる。


初戦を勝ち抜いたチームは第2戦の前に全員メインステージ前に集まるように指示を受けたからだ。



「それにしても何でまた集められたんだ?」

「それは第2戦以降の内容が変わるからということらしいですよ」



独り言のつもりで呟いた言葉に、目の前の男が親切に答えてくれる。


ゆっくりと振り返った男は、すらりと背が高く銀髪のロン毛でニコニコと嘘くさい笑顔を振りまいていた。



「あ、親切にどうも」


「いえいえ、どういたしまして。 それより、君のテクニックはやはり素晴らしいね、ゴフカスタムの時とは比べ物にならないね」



この人の声、どこかで聞いたことのある気がする、それにゴフカスタムを知っているとなると… 遊園地のゲーセン行った時か?



「あんた、ゼロって人か?」

「覚えててくれたんだね、光栄だよ入月勇志くん」


「ゼロってあの時のやつ!?」



ゼロという名前に反応して、隣で歩美と話していた西野が獲物を見つけたような顔をして間に割り込んでくる。



「君は西野莉奈さんだね、そちらが桐島歩美さんかな」



自己紹介などした覚えもないのに、ゼロは俺たちの名前を次々と言い当てていく。



「勇志、この人誰?」



いきなり話し相手がいなくなった歩美が俺の所に寄ってくる。



「あー… なんか俺強いですよーっていう雰囲気を服装とか髪型とかで頑張って出そうとしてる可哀想な人だから気にしなくていいよ」

「ふーんそう、厨二病なのね」


「あのー、全部聞こえているからね…?」


「それより! どうして私たちの名前を知ってるのよ!?」



ゼロは一瞬驚いた顔をしたが、すぐにいつもの嘘くさい笑顔に戻り西野の問いに答える。



「これは失礼したね、君たちは大会参加者だから顔と名前は公表されているんだ、調べようと思えば誰でも知ることが出来るんだよ」


「そう、それで? ここにいるってことはあんた達も第2戦に勝ち進んだってことよね?」

「そういうことになるね」


「この手で倒せるのが今から楽しみだわ!」



西野のやつすごく物騒なことを言ってるけど、まさか直接殴り倒したりしないよね? ゲームの話だよね!?



「望むところだと言いたいところなんだけど、これから始まるルール説明次第ではそうもいかないかもしれないね、ほら丁度始まるみたいだよ」



ゼロが言う通り会場にはBGMが鳴り出し、照明も徐々に薄暗くなっていく。


会場に集められたプレイヤーと観客たちも話すのをやめ、ステージに注目し始めた。



「見事初戦を勝ち残ったプレイヤーの皆さん! お集まりいただきありがとうございます!!」



毎度お馴染みの女性司会者がステージに現れ、初戦を勝ち残ったプレイヤーたちを労う。



「本来ならば、このまま第2戦以降のトーナメントも実施する予定でしたが、本大会のエグゼクティブ・プロデューサーであり、戦場の友情のメインプログラマーでもある郷田宏人氏より、大会を盛り上げるために来年より実装予定だった協力プレイのβ版を大会に組み込むことが急遽決定いたしました!!」


「これは凄い、もうβ版がプレイ出来るのか、これだけでも大会に参加した価値はありますね」



思わずゼロが感動を溢しているが、正直に俺も同じ気持ちだった。


ゲームの情報誌ではまだ噂程度だった話なのに、まさかここまで開発が進んでいるなんて知らなかった。



「それではここで郷田宏人氏に挨拶とβ版の説明をしていただきましょう!」



スポットライトがステージ脇を照らすとそこからスーツの上に白い研究服を着た男がステージの中央に進み出て司会者よりマイクを受け取り話し始める



「皆様ようこそ第3回、戦場の友情全国大会へ! 私は只今紹介がありました郷田宏人です」



茶色い髪をオールバックで固め、いかにもプログラマーっぽいレンズが小さめの眼鏡を掛けている。


一見、愛想の良さそうな雰囲気だが、何か違和感を感じる。


思っていることと言っていることが違うような、腹の奥に何か隠し事を秘めているような嫌な感じ…


それとあの人、笑顔なのに目が笑っていない。



「本来であればこの場所に立つ予定はなかったのですが、ここにいる一流のプレイヤーたちに敬意を表して、こうして皆さんにご挨拶をしています」



用意されていたであろう定型文の挨拶に会場が沸き、それを郷田が手を広げ落ち着かせる。



「それでは全国大会に組み込む協力プレイの説明をします」



その言葉の後、会場が暗転しステージ後ろと両サイドのスクリーンが協力プレイのβ版についての説明を映し出す。



「協力プレイと言うからには、第2戦に勝ち残った皆様には全員で協力してもらいます」



全員協力するという言葉だけで会場全体がかなり騒つく。



「そして全員で協力して、立ち向かってくる敵のボスを倒せばゲームクリアとなります、これが協力プレイの大まかな説明になります」



それから敗北条件と細かなルール、フレンドリーファイア、敵についてなど質疑応答も含め、かなりの時間をかけて説明された。


敗北条件は味方の全滅でタイムアップはないこと。


フレンドリーファイアは可能だが、敵の強さを考えるとバカはしない方がいいということ。


敵はunknownという設定でここで全ては明かせないが、『地球外生命体』であるとだけは公開された。


詳細を明かさない狙いは、直接プレイヤーたちが対峙する中で、行動パターンや弱点を見つけてほしいということらしい。



「それではプレイヤーの皆さんには、これからブリーフィングルームに移動して顔合わせと作戦を考てもらいます。 また公平を保つためにプレイヤーたちには、こちらで用意したオペレーターが付いて情報整理などのバックアップをしてくれます。 それではブリーフィングルームに移動してください」



メインステージの会場から隣のテントのような所へ会場係りスタッフが声を張り上げ誘導を始める。


俺たち3人も前の人に後に続くようにテントに向かった。



「ねえ勇志、どう思う?」



俺の横に並んで歩いている西野がざっくりと聞いてくる。


まあ西野が言いたい事は何となくわかる。



「しきりに公平って言ってたけど、どう考えてもプレイヤー側が不利だ、こっちは75人なのに対して、敵の数も強さも不明、ボスを倒せばいいと言っていたけど、最初からボスが出現しているかどうかもわからない」


「そうよね、しかもこっちは全滅が敗北条件でタイムアップはないのよ? 75人もいて全滅が敗北条件なんて、敵が強く設定されていない限り、そんな強気なことできないわよね?」


「郷田って人がこの大会の途中で、急遽協力プレイのβ版を入れてきたのも変だし、どうもキナ臭い感じがするよな。 最初聞いた時はβ版が出来ると思って嬉しかったんだけどな~」


「いいんじゃない? 余計なこと考えないで楽しんだら」



隣で歩美が不思議そうな顔で俺と西野に話し掛ける。


確かに歩美の言う通り、所詮ゲームなんだからそんな問題になるようなこともないだろう。


折角だし、協力プレイβ版の1番乗りを楽しめばいいか。


気を取り直して、俺たちはブリーフィングルームへと向かっていった。

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