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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔出し中は好きにやらせていただく 8

「「ただいまー」」

「ユウくん、愛美ちゃんおかえりなさーい、ご飯出来てるわよー」



玄関を開けると、香ばしくジューシーな香りが鼻をくすぐられ、お腹の虫が反応する。


俺と愛美と西野は夕飯に間に合うように遊園地を出て、1つ手前の駅で西野と別れた後、真っ直ぐ家に帰宅した。


靴を揃えて上がり、洗面所で手洗いとうがいを済ませて夕食の席に着くと、母さんお手製のハンバーグが湯気を立てて出迎えてくれてた。



「「いっただきまーす!」」



ハンバーグの真ん中にゆっくりとナイフを通すと、まるで肉の方が勝手に裂けていくようにスッとナイフが皿につく、ナイフを手前に引くと、そこから溢れんばかりの肉汁が流れ出てきて、思わず喉を鳴らしてしまう。


一口サイズの大きさに切り分けたハンバーグをフォークに刺し、口で包み込むように食すと、口一杯に広がる旨味をひと噛みひと噛み味わいながらゆっくりと飲み込む。


この美味さを一言で表現するのであれば、そう…



「幸せだな~… 」

「ほんと! お母さんのハンバーグは最高だよ!!」



母を褒める声の主は向かいに座る愛美で、一口食べては頬に手を当て幸せそうな顔をしていた。


母さんが作る料理はどれも美味しくて、“母の味というのが普通の料理屋よりも美味い”というのが普通じゃないことを知ったのはつい最近のことだった。


なんでも、父さんの胃袋を母さんの料理でガッツリ掴んで惚れさせたらしいから、その腕前は確かだ。


いつだか母さんに料理をどこで教わったのか聞いたことがあったが、「自己流なのよ~」だそうだ。


そこから母さんと父さんの昔話が始まり、聞きたくない出会いの馴れ初めまで聞く羽目になったので、あれ以来その話は振らないようにしている。


なんでも、昔はモデルとか女優をしていた母さんに唯一靡かなかったのが父さんらしく、それが悔しくて父さんを振り向かせようとしているうちに好きになってしまったのだそうだ。


そして、父さんを射止めた決めてが母さんの手料理だったらしく、その時のメニューがこの母さんお手製のハンバーグということらしい。


そんなハンバーグに纏わる話とは関係なく、俺も愛美も母さんの作ったハンバーグが大好きなのだが、この母さんのハンバーグを嫌いになりかけたことがあった。


それは俺が子供の頃、悪いことをしたり、親の言う事を聞かなかったりした時、夕飯のメニューは決まってハンバーグになるのだが、そのハンバーグの中にはギッシリとグリーンピースが詰め込まれているのだ。


あの緑のパサパサした不味いモンスターたちは、恐らく地球を侵略しに来た地球外生命体か何かに違いない!


そんな気味の悪い奴らが、俺の大好きなハンバーグの中にこれでもかと所狭しに詰まっていて、後にも先にもあれほど絶望を感じたことはなかった。


あれ以来、事あるごとにハンバーグを人質に取られ、泣く泣く言う事を聞くというシステムが入月家では出来上がっていたのだった。


そして今回、遊園地へ行く際も愛美と一緒に夕飯までには帰るようにと、ハンバーグを人質に取られてしまったので、なんとか愛美を説得して夕飯に間に合うように帰って来たわけなのだが、その為に払った犠牲は大きい…



「ご馳走様でした!」



用意された食事をキレイに平らげ、空いた皿をまとめて洗い場まで持って行き自分の分の皿を洗う。



「お兄ちゃん、私の分もよろしくー!」

「はいはい」



後から追加された妹の分の皿も洗いあげて自分の部屋に戻ると、先程から着信を知らせている携帯をポケットから取り出して、履歴から電話を掛けなおす。


呼び出しのコールを左耳に聞かせながら、隅にあるデスクの椅子に座りPCの電源を入れたところで電話の相手が出た。



「遅い! 何してたの?」

「帰ってすぐ夕飯だったんだよ、おかげでグリーンピース抜きの美味しいハンバーグが食べれたよ。 ありがとな、西野」



電話の相手は西野莉奈だ。


あの後、西野も愛美の説得に加わってくれて、こうして俺は無事に愛美を夕食の時間までに家に送り届けることができたわけだ。


もし、西野まで帰らないと駄々をこねられていたら、今頃ハンバーグの中から一粒一粒、グリーンピースを箸で別の皿に避ける作業を黙々とやっていたと思うと背筋がゾッとする。



「べっ、別にいいわよ… そ、それに交換条件だもの気にしないで… 」

「戦場の友情の全国大会出場の話だよな、まあ約束だからちゃんと出るよ」



西野が出した交換条件とは、愛美を一緒に説得する代わりに、西野と一緒に戦場の友情の全国大会に出場するというものだった。


正直少し悩んだが、グリーンピースの脅威に比べたら大会など大したことはない。俺は二つ返事で了承したわけだ。



「それより大会は3人1組が出場条件だろ? もう1人当てはあるのか?」



回転式の椅子に座り、くるくる回りながら西野の返答を待つ。



「当てがあったら1人でゲーセンに行ったりしないわよ、勇志は誰か当てがないの?」

「そうだなー、1人だけ心当たりがあるが、あまりお勧めしないな」


「どうしてよ?」

「そいつはかなり面倒くさいヤツなんだ、特に女子に対して」


「う…. 他に当てはないの?」

「ないな。 何なら出場を諦めても…. 」

「いいわ! そいつに会いに行きましょう!」


「どうなっても知らないからな」



その後、待ち合わせの場所と時間を決めて電話を切ったのであった。

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