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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔出し中は好きにやらせていただく 6

「美しく散れて良かったじゃないか」


「ずる~いッ! トドメは私が差したかったのに~ぃ!」



コクピットを貫かれ爆発したチェストブレイクの残骸を見下ろしながら、まるで映画の黒幕さながらのセリフを言い放つギルド『ナイツオブジオン』のチーム『片翼の天使』のキザ男。


よくわからんが、彼らはこうやってこのゲームを楽しんでいるのだろう、楽しみ方は人それぞれだ。


正直、あまりいい趣味とは言えないが…



「一体何なの、こいつら!?」

「ああやって身内でダンガムごっこして楽しんでる変な人たちなんだろう、そっとしておこう」

「そ… そうね… 」



そうだ、こういうのに関わると決まって面倒事に発展すると俺の短い人生経験の中で既に証明されている。


怪しいやつらには関わらないのが1番だ、さっさとログアウトしてしまおう。



「いやー、ありがとうございました。危ないところを助けていただいて、じゃあ俺らはこの辺で… お疲れ様でした~ ほら、行くぞ西野」


「ちょっと待ちたまえ!」

「ぅッ…!? な、何か御用でしょうか…?」



背後に振り返って、距離を取ろうとしたところにキザ男からお声が掛かってしまう。



「 僕たちも、今は君たちと一戦交えるつもりはないよ」



じゃあ何故呼び止めた? と思ったが口にはしなかった、俺も大人になったものだ。



「次の全日本大会、君たちも参加をするんだろう?」

「いや~、俺たちは趣味でやってる者なんで、大会とかはちょっと~… 」


「その話詳しく聞かせて!」



西野さーん。


首突っ込んだらダーメだって、ほんと。



「『第3回戦場の友情全日本大会』公式が開催している唯一の大会で、3人1組での参加が条件。 上位入賞者にはレアなパーツと二つ名が手に入るとあって参加者は例年100万人を軽く越えている。 すでに受け付けが開始されているから参加するなら早くした方がいいですよ」


「わかったわ、ありがとう」



「おい西野、お前まさか参加するつもりじゃないだろうな? まあ、西野が参加するのは勝手だが、俺まで巻き込まないでくれよ?」


「何でよ、一緒に出てくれないの!?」

「いろいろ注目されて大変なんだぞ!? もう懲り懲りなのッ!」



以前、第1回大会に参加した時は俺もまだ若かった、あれは俺の中で忘れたい黒歴史として胸に刻まれている。


もう同じ過ちは繰り返さないと心に決めたのだ。


今の俺なら当時の自分が、なぜあんな厨二病全開だったのかよくわかる。


そう… 坊やだからさ。



「ゼロ、いいのか? 彼奴らをそのままにして」



運命の名を冠されたダンガムが、漆黒の翼を持つダンガムと紅いダンガムに暗号通信を繋げる。



「ゼロが許可してくれれば、いつでも撃ち抜いてあげちゃうんだけどな~」



「貴方達ではどう足掻いても彼を倒すことは出来ませんよ。今の状態の彼に3機で掛かっても、悪ければ相討ち、良くても誰か1人はヤられるでしょう」

「あのゴフカスタム、そんなに強いの? そうは見えないけど」


「彼の左腕は慎くんの攻撃で損壊したのでしょう、慎くんは最初に必ずギガソニック砲を撃ちますからね。 しかし、損壊部位に応急処置が施されているということは… 」


「自陣に戻り応急処置をしたということか…. 」

「何々!? どういうことよ! アタシにも分かるように説明してッ!」


「その間、あちらのヴァーチェカスタムの方は1人で慎くんを抑えていたことになります。 それに彼に至っては片腕でだけで慎くんを追い詰めた… 」


「慎がクソ弱かっただけじゃないの?」


「いえ、慎くんは違法パーツを幾つか組み込んでありましたから、それだけ使えば素人でも上級者までなら簡単に倒すことが出来ます。 けれど、あのゴフカスタムには左腕損壊以外、目立ったダメージがないんですよ」


「腕が1本ない状態で、チート攻撃を受けることなく慎を追い詰めたってこと?」


「彼は間違いなく二つ名持ちでしょう。ならば、万全の状態で本気の彼と戦ってみたい… そして我々『片翼の天使』こそが二つ名を受けるにふさわしいと証明しましょう!」



俺と西野の討論がヒートアップしている最中、あの3機は何やら暗号通信で会話をしていたようだが、さしずめ俺たちをどうするかということを話し合っているのだろう。


一戦交えるつもりは無いとは言っても、隙あらばいつでも墜とすっていう雰囲気ムンムンだし、さすがにこっちは、この状態で仕掛けられたら勝ち目はないから、できれば穏便に済ませたいものなのだが、さっきから西野がヒートアップしていて、売られてもいない喧嘩を買いに行きそうで怖い。


今のところは西野の怒りの矛先が俺に向いているから、このまま西野と調子を合わせて置くか。



「だいたい勇志はいつも何事にもやる気ない感じのくせして、やるときはなんでもサラッとこなしちゃって、カッコ良くて… いろいろな才能があるのに全部中途半端で、もっと「俺は1番になる!」とか「海賊王に俺はなる!」とか欲はないわけ!?」



なんでゲームの大会の話から俺の人格の否定の話にまでなってるんだろう…


それに海賊王は関係ないだろ。



「夫婦喧嘩の途中で悪いのですか…」

「違うわい!!」

「夫婦だなんてそんな… 」



なんで申し訳なさそうに話し入って来るんだ! もっと堂々と入ってこいよ、悪役設定だろ!?



「そろそろ僕たちは失礼させてもらうよ」

「えッ? お、おう… 」


「それではまた会おう」



相手3機が次々とログアウトしていく。


サラッとログアウトしていったことに少し拍子抜けしてしまったが、正直今は戦いたくなかったから戦闘にならなくて良かった。



「なあ西野、俺たちも1度ログアウトしないか?」

「そうね、勇志も私も大分損傷しているし、1度ログアウトしましょうか」

「よし、じゃあお先な」



そう言ってすぐに戦闘をリタイアし、そのままログアウトする。


VRヘッドセットを脱ぎ、コクピット型のアーケードマシンの外へ出と、ちょうど向かいのマシンから西野も出て来たところで、身体をほぐすように大きく伸びをしていた。



「お疲れさん西野」

「おつー勇志、なんか物凄く疲れたわ、どこかで休憩しない?」


「そうだな… だけど、その前にあそこでパンパンにホッペを膨らませてるやつに謝らないと」



戦場の友情が置かれているエリアのすぐ横にちょっとしたイスとテーブルが置かれていて、そこには1人仲間外れにされて怒っているのであろう妹の愛美がソッポを向いて座っていた。


一応、ここに来る前に場所と断りのメールは入れたのだが、かなり長い時間放ったらかしだから機嫌損ねたのだろう。



「愛美、待たせたな」

「本当だよ! すごく待った!」


「ごめんね愛美ちゃん、今度埋め合わせするから」

「私、プンプンですからね! 2人になるのは構わないけど、私の目の届かないところで2人きりになるのはダメなんだから!」



お前は俺の保護者か! というツッコミが喉まで出かけたが、何とか飲み込む。


ここは愛美の機嫌を取らねば、後々面倒なので愛美の気をひくであろう話題を振ることにする。



「悪かった愛美、近くに今話題のアイス屋さんがあってだな、なんでもオシャレ女子を中心に人気が高いらしい… 」



ピクピクとソッポを向いている愛美と西野の耳が動く。


西野さーん、どうしてアナタまで反応してるのかな?



「そこでお詫びと言ってはなんだが、好きなアイスを買ってや… 」

「しょうがないな~、私はいつまでも怒っているほど器の小さな人間じゃないからね!」


「そうね、今回の件はそれで水に流してあげるわ」



ガタッと立ち上がり腰に手を当てて堂々と胸を張る愛美と、脚を組み直して机に頬杖をつく西野。


おおー、さすが愛美さん、懐の広いお方だ。その口元から垂れてるヨダレがなければ兄として鼻が高いのに…


そして西野さん? どうして西野も奢ってもらう気マンマンなんでしょうかね?



「じゃあ早速、話題のアイス屋さんへ行こーッ!」



勢い良く立ち上がった愛美は、また勢い良く外へ飛び出して行った。



「場所わからないだろー? 迷子になるから1人で先に行くなよー」



気持ちが先走っている愛美の後を追って、俺と西野もゲーセンを後にした。

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