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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔出し中は好きにやらせていただく 2

「お兄ちゃーん! 次は観覧車乗ろーう!!」

「はいはい、あんまりはしゃぐと転ぶぞ、気をつけろよー」


「はーい!」



愛美と西野と俺という、よく分からない組み合わせの3人で遊園地に来ているのだが、愛美のハイテンションは留まることはなく、ジェットコースターの後もいろいろなアトラクションに付き合わされていた。


ジェットコースターの後は、これまたギネス記録を持つ、世界最長のお化け屋敷に3人で挑み、寿命が縮むような怖い思いをした。


お化け屋敷なんてせいぜい学園祭の他クラスがやっている、手作り感満載のものくらいしか経験がなく、生まれて初めて、ちゃんとしたお化け屋敷に入って、自分はお化け云々の体制が全くないということを知ることになった。


入る前は余裕綽々だった愛美も、お化け屋敷のエントランスで看護婦に扮したキャストに注意事項を説明してもらっている時には、既に真っ青な顔をしていた。


結局、怖いもの耐性が強い西野を真ん中にして、俺と愛美が左右から抱きつく形で、何とか途中リタイアすることなく完走した。


西野には「あんまりくっ付かないでよね!」とか何とか言われたが、あの場ではしょうがないし、恥もヘッタクレもなかった。


3人の中で唯一の男なのに、全くカッコつかないというのは情けないこと極まりないが、何を隠そうこれが入月勇志という人間なのである。


その後も脱出ゲームのようなアトラクションだったり、シューティングゲームみたいなアトラクションなど、いろいろやったが、2人よりも俺の方が楽しんでしまった。


そして、次は観覧車に乗りたいという愛美のご要望で列に並んでいて、もう間もなく乗車するところだ。



「しまったーッ! 急にお腹がぁぁア!? 私、トイレ行ってくるからお兄ちゃんと莉奈さんの2人だけで乗ってくれない?」

「おい、大丈夫か? トイレまで送っていこうか?」


「えッ!? それじゃ意味な… じゃなくて恥ずかしいからやめてよ、お兄ちゃん!」

「お、おうわかった、何かあれば連絡してくれ」


「うん! じょあ莉奈さん頑張ってね!」

「えぇッ!? 愛美ちゃん!!??」



なんか愛美のやつ、ちょいちょい俺と西野を2人きりにさせようとしてきたりと、様子が変なんだよな、今も本当に腹が痛いのかどうか怪しい。


西野と俺を2人きりにする愛美の狙いはいったいなんだ…? 何か俺が西野を怒らせるようなことをして謝らせる機会を作ってくれている…?


いや、今日の西野は少しよそよそしい感じはあるが、俺に怒っているようには見受けられない。


となると、今日はもしや西野の誕生日なんじゃないか? そうだとすれば俺からのおめでとうという言葉やプレゼントに期待しているということになるのか?


いやでも、それならわざわざ愛美が俺と西野を2人きりにさせる必要はないか…



「ねぇ… 勇志、大丈夫?」

「あ、うん大丈夫、ちょっと考え事をしてた、ごめん」



西野と2人で観覧車に乗り込んだものの、難しい顔をして黙り込んだ俺は、西野に声を掛けられるまで、目の前にいる西野のことを蔑ろにしていたことに気付かなかった。



「勇志はさ、私と一緒にいてもつまらないんでしょ?」

「どうした突然?」


「今日だって、愛美ちゃんがいるから来てくれたんでしょ?」

「元々行く気なかったのに、愛美が無理やり連れて来たんだよ」


「同じことじゃないッ!! 私がメールで何度も誘っても、ずっと断ってたでしょ!?」

「おい… 少し落ち着けよ…」


「落ち着いていられないわよ!! 私が1番遠いのよ? 歩美も時雨も、女バスの1年の子よりも、ずっとずっと私の方が勇志から遠いの!」


「どうして歩美と委員長と花沢さんが出てくるんだよ?」

「知らないッ!!」



そう言って俯く西野の顔はどこか泣いているように見えた。


沈黙の中ゆっくりと回る観覧車が、俺にはまるで時間が止まってしまったかのようなに感じられた。


西野の気持ちは正直よくわからないけど、キャラを作っていない、ありのままの自分を出せる相手として俺を見てくれているのだとしたら、少し嬉しい気はする。


それなのに西野の気も知らず、ずっと忙しいことを理由に西野を遠ざけていた、ほんと身勝手だよな、俺。



「なあ西野… 」

「何よ… 」



いつの間にか観覧車は3時の辺りを過ぎようとしていたが、相変わらず俯いたままの西野は、俺の声かけにもそのまま姿勢を変えることなく、バツの悪そうな返事を返してくる。


いつもの俺ならこういう時は無理に話しかけたりしないのだが、今度はちゃんと西野と向き合うと決めたんだ。


西野の両肩に手を置き、強引に上体を起こすようにして西野の目を覗き込むように見つめる。必然的に西野との距離が近くなるが、そんなことはお構いなしだ。



「ちょッ!? そんなイキナリ! えッ!!??待って… まだ心の準備が… 」



目の前の西野が顔を赤くして慌てふためいている。


まあ急に身体を起こされたと思ったら目の前に俺の顔があるんだから驚くのも当然だ、そのまま俺は言おうと決めていた言葉を口にした。



「西野、この後ちょっと付き合ってくれないか!?」

「へ!?」

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