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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔出し中は好きにやらせていただく 1

「お兄ちゃん!? もうちょっとちゃんとした服着ないとダメだよ!デートなんだから!」



休日の朝から妹の愛美が俺の部屋に乗り込んできたと思えば、いきなり俺の着替えた服にイチャモンを付けてくる。



「だれもデートなんて言ってないだろー?、こっちはお前の保護者として付いていくつもりなんだから。それにデートって3人でするもんなのか?」


「違います! 莉奈さんとのデートでしょ!?」

「西野と俺はそんなんじゃないっての、そういうこと西野の前で言ったら怒られるから言うなよ?、そうじゃなくてもアイツ怒りっぽいから」


「お兄ちゃんの鈍感! 鈍ちん! おたんこなすー!!」

「はいはい、そうですそうです」



結局、愛美に言われるがままにTシャツ、スエットからワイシャツにチノパンというそれっぽい服装に着替えた。


以前、西野が家に来た時、愛美と俺と3人で遊園地に行くという約束をしてしまい、今日がその日というわけだった。


最近忙しくて、自分の時間が殆んど取れていなかったから、久々の休日を思う存分趣味に当てようと思っていたのに、面倒くさいことになったものだ。



「ほらお兄ちゃん! 急がないと遅刻だよー!?」

「はいはい今行くって、じゃあ行ってきまーす」


「気をつけていってらっしゃーい、莉奈ちゃんによろしくね~」



母さんに見送られ家を出ると、既に愛美が自転車の荷台に乗ってスタンバイしていた。



「じゃあお兄ちゃん運転よろしく!」

「はぁ… かしこまりました」



今日、俺は愛美の保護者兼、アッシーということなのだと改めて理解し自転車を駅に向けて漕ぎ出すのだった。







……


………






西野とは遊園地の最寄駅で待ち合わせということになっていて、俺たちは予定より1本遅れの電車で目的の駅に着いた。



「西野さーん! ごめんなさい、遅れましたー!!」

「べッ、別にいいわよ… 私も今来たとこだから… 」


「もう! お兄ちゃんがチンタラしてるからだよ!?」

「悪かったって…! 遅れてすまん西野、ん? 何か今日の西野、いつもと雰囲気違うな」

「そッ、そんなことないわよ、別に…」



相変わらずの金髪だが、西野の服装は黒いヒラヒラのミニスカートに白のニットカーディガン、足元はウェッジソールの靴を履いていて、全体的に凄く女の子らしい感じだ。


考えてみれば、私服の西野を見るのは今日が初めてだな。何か普段の性格からもっと男っぽい服装なのかと思ったが、意外と女の子らしい服を着るんだなーと、ついジロジロと見てしまう。



「あッ、あんまりジロジロ見ないでよ! 恥ずかしいでしょ…?」

「おッ、おう、ごめん… 」



西野に指摘され、慌てて目をそらす。



「(莉奈さん、なかなか好感触だよ。だからお兄ちゃんは女の子女の子してる方が好みだって言ったでしょ?)」

「(う、うん… だけどやっぱり恥ずかしい~… )」



2人で反対を向いてコソコソやっているが、女の子は男に聞かれないようにコソコソするものなのだと最近そう思うようにしている。



「おーい、そろそろ行かないかー?」

「あ、はーい! 行こう莉奈さん、戦いはこれからだよ!」



何か物騒なこと言ってるが大丈夫だろうか?


遊園地のチケットブースで3人分のパスポートを受け取り、遊園地のゲートを潜り抜ける瞬間、少しワクワクしている自分がいた。


せっかく遊園地に来たのだから、今日くらい日常から解放されて、1日を目一杯楽しんでもいいよな?



「お兄ちゃん、あれ乗ろうッ!」



遊園地に来て1番はしゃいでいるのは、やはり愛美で、近くのジェットコースターを指差しながらキラキラした目で俺を見てくる。



「げッ! いきなりあんな大物に乗るのかよー」

「いーじゃんいーじゃん! 莉奈さんも行こー!」

「ちょっと愛美ちゃん!?」



はやる気持ちを抑えきれなくなったのか、愛美が西野の手を引っ張って駆け出していった。


でも、愛美が乗りたがってるやつ、回転数と距離でギネス認定されてるやつだけど大丈夫なのか?


愛美のやつが絶叫系が好きだった記憶はないが、まあ苦手ということもなかった気がするから平気かな。


そういえば小さい頃はよく愛美と一緒にジェットコースターに乗ったけか。


あの時の愛美は、どこにいっても俺の後について来て離れようとしなくて困ったものだったが、今は逆に西野の手を引っ張って走り回ってる。


妹の成長は兄の俺にとって嬉しいような、少し寂しいような、そんな気がするな。



「お兄ちゃーん!! 何やってるのー? 早くしないと置いてっちゃうよー!!」



コースターの入り口で愛美が大声を出して俺を呼んでいる。


全く、人の気も知らないで…


俺は駆け足で愛美と西野の元へ向かった。



ジェットコースターに並びながら辺りを見回していると、走り回っている子供や、ベビーカーを押している夫婦などがよく目に付く。


今日は休日なのにそんなに混雑しておらず、いつもなら人でごった返す遊園地もゆったりとした時間が流れている気がする。


まあ、インドア派の俺にとって人混みは苦手中の苦手だから助かった。


隣で一緒に並んでいる西野はいつもと少し様子が違い、なんかヨソヨソしい感じがする。


西野は俺と違って人混みは苦手じゃなさそうな感じだが、人は見かけによらないのかもしれない。



「西野はこういうところはよく来るのか?」



少しは西野に気を遣って話を振ってみる。



「うん、学校の友達とたまに来るけど、正直全然楽しくないのよね」

「それなら別の場所でも良かったけど?」


「違う違う! 遊園地は好きだけど、私、学校ではキャラ作ってるから、それで結構気を遣っちゃってさ」

「何でまたわざわざキャラ作ったりするんだ?」



そんなキャラを作るほど、悪い性格してないと思うのだが?



「うちの学校、お嬢様学校とか言われたりしてるでしょ? 」

「確かに、いいとこのボンボンか、スポーツできる奴がたくさんいるって印象だな」



西野の通う『神無月学園』は、この辺りじゃ有名なお嬢様学校だもんな。



「その通りよ、男子はスポーツ特待生とボンボンが半々、女子は殆んどがお嬢様って感じなのよ」

「なるほど、それで周りと合わせるためにキャラを作ってるわけか、西野も苦労してんだな」


「まあね、それに私ってかなり可愛い方でしょ? だからちょっとキャラ作ると、すぐ男が寄ってきて困るのよ」

「自分で言うか、それ?」



まあでも、うちの学校に来た時も、男子生徒たちに後を追い掛けられてたもんな。


確かに俺も西野を可愛いとは思うけど、こいつの本性を知ってるからどうもな〜…


知らない方が幸せってこともあるんだな。



「何か今、失礼なこと考えてるでしょ!?」

「全然! 何も! 考えてない! ほんと」



突然俺の顔を下から覗き込むように見上げる西野、なんて勘の鋭いやつだ。



「お二人さん、とっても仲よろしくされているところを悪いのですが、次は私たちの順番です」


「こッ、コラ! 愛美ちゃん!? 変なこと言わないの!」

「えー、だって本当のことじゃーん」



そう言ってじゃれ合う2人、何とも微笑ましい光景だ、ずっと見ていられるな。


俺より愛美の方が、よっぽど西野と仲良さそうだけどな。


そうこうしているうちに乗車の順番が回ってきたので乗り込む。


奇数なので俺は1人でいいと言ったのだが、愛美が西野と一緒に乗れと一歩も引かず、結局2人乗りのシートに西野と座り、その後ろに愛美が1人で座る形になった。


このジェットコースターは真ん中のラインの左右に座席が2つずつ、計8つ付いていて、ムカデの足のような作りになっている。


この真ん中のラインを中心に座席がグルグル回りながら進んでいくもので、さらに座席同士も独立して縦にグルグル回転するという、聞いただけで恐ろしくなるようなジェットコースターだった。



「なあ西野、このジェットコースターに乗ったことあるか?」



座席に固定され、宙ぶらりんの状態で隣の西野に問いかける。



「実は私、このジェットコースター初めてなんだよね… 」

「奇遇だな、俺もだ」



発車前から既にユラユラしているシートに恐怖感がどんどん煽られていく。


隣の西野も同じようで、乗車前までの元気がもう既に見られなかった。



「こんなこと男の俺が言うのもどうかと思うんだけど」

「な、何よ…?」


「俺、これダメそうだから、悪いんだけど手を握っててもらえないかな?」

「はぁ!? どッ、どうして!?」


「お願い、頼む! 一生のお願い… 」

「そんな… まだ心の準備が…!」


「では、みなさん! いってらっしゃ~い!!」



キャストのお姉さんが笑顔で手を振ると、ゆっくりと車体が後ろ向きに動き出した。



「西野ぉ~~!! はやくぅ~~!!」



もうこの際、恥など捨て、半べそをかきながら西野に訴えかける。



「わわわ、わかったわよ! ほら!」



西野は俺の左手を優しく握るが、そんなのではすぐ解けてしまう!


俺は西野の指を組み合わせるように、手を繋ぎ直した。


俗に言う“恋人つなぎ”というやつだが、今は非常時だからそんな悠長なことは言っていられない!


俺たちを乗せたジェットコースターはぐんぐんと坂を登っていく。


宙ぶらりんで後ろ向きに吊るされているため恐怖は何倍にも倍増していた。


そして、ついにその時は来た。



「あ… 」



全身に物凄い重力と遠心力を感じながらグルグルグルグル上も下もなく回転して落ちていく。


余りにもの勢いで、お尻は常にシートから浮いている状態で、今にも振り落とされそうな感覚に襲われ続ける。


俺は声もあげることができず、ただただ振り回されるこだけだった。



「キャーーーッ!!!」



隣に座る西野も同じ感覚を味わっているのか、普段聞かないような声で叫んでいた。 俺の方から握ってと頼んだ手は、西野の物凄い握力とコースターの回転と遠心力が加わり、変な方向に曲がっていた。



「いたたたたたたた!! 手がぁぁ!? 手がぁあああアアアッ!!!」







……


………








「あははははは! お兄ちゃん、これすっごく面白かったね! … あれ? お兄ちゃん?」



ハッと気付いた時には、俺はフードコートの座席に座っていた。


何故かコースターの途中辺りから記憶がないが、今は再び地面に足をつくことができたことを喜ぼう。


隣を見ると、西野も座っていたが意気消沈しきっているのか、心ここに在らずといった感じだ。



「お兄ちゃん、莉奈さん、大丈夫?」



ふと見上げると、飲み物が乗せたトレーを持った愛美が心配そうな顔をして立っていた。



「はい、冷たい飲み物」

「すまん、助かる」



飲み物を受け取ると、物凄く喉が渇いていることに気付き、喉をゴクゴク鳴らせながら一気に中身を飲み干した。



「はい、莉奈さんもどうぞ」

「ありがとう、愛美ちゃん」



西野も愛美から飲み物を受け取ると、豪快に中身を飲み干していく。


さすがにさっきのことの後で、女の子ならもっと上品に飲んだらと注意することもできまい。



「あんなの、人の乗り物じゃないわよ… 」

「同感だ、あれはもう兵器だよ。宇宙で撃墜されて大気圏突入するダンガムって、あんな感じなのかな… 」


「どうかしら? 撃墜の度合いにもよるけど、制御バランサーがあるからあれよりマシじゃない?」



ダンガムのコアな例えにちゃんと答えを返して、さらに上乗せしてくる辺り、西野とは中々に濃いダンガムトークができると見た。



「ほう、お主中々に話せるやつですな?」

「まあ、ダンガムは外伝、OVA含め全部制覇してるから」



すげぇ!! 西野さんまじパネーっす!


ゲーセンで1人でダンガムやってるくらいだからもしやと思ったけど、いるんだなー、ダンガム女子!


やっぱりダンガムの素晴らしさは男女の垣根も越えるんだなー、うんうん。



「莉奈さんって、お兄ちゃんと同じような趣味だったんですね、なんか意外〜。でも、お兄ちゃんからした高得点なんじゃないかな?」


「 ホントッ!? って、愛美ちゃん何言わせんのよッ!!」

「キャーー!」



西野にほっぺたグニグニ伸ばされる愛美、本当に仲のよろしいことで。



「お兄ちゃんも莉奈さんも、もう大丈夫なら次いこーよ!」



西野に顔をグニグニされながら愛美がまだ遊び足りないと訴えかけてくる。


せっかく遊園地に来て、最初でバテてたら勿体無いな、もう少し楽しもう。



「よしッ、じゃあいくか!」

「そう来なくっちゃ! よーし、じゃあ次行ってみよー!!」



元気に立ち上がった愛美に続き、俺と西野もまた立ち上がったのだった。

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