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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
58/127

顔出しNGで新曲作ります 11

「さて、今夜のミュージックスタジオは、たっぷり2時間生放送でお送りしていきます。それでは早速ゲストの方々をお呼びしていきましょう!最初は、今をときめくアイドルユニット《kira☆kira》のお二人です!」



番組のテーマ曲に合わせて、スタジオの中央の階段からkira☆kiraの2人がカメラと観客に向かって手を振りながら降りていく。


さすが天下のkira☆kiraだけあり、観客の歓声もマイク越しのアナウンサーの声が掻き消されるほどのボリュームだ。


kira☆kiraの2人を皮切りに次々にゲストが呼ばれて中央の階段を歓声を受けながら降りていく。



「そして最後は、新しいジャンルを開拓し始めた5人組バンド、《Godly Place》のみなさんです!」



司会の方に呼ばれて、俺たちガップレの面々もキャーキャー騒がれながら階段を降りていく。


さすがにkira☆kiraほどの歓声ではないが、俺たちガップレも今話題の新人バンドというだけあって、中々大きな歓声に包まれていた。



「ガップレ今日もよろしくお願いしまーす」

「よろしくお願いします!」



もう1人の大御所司会者から挨拶をされるが、しっかりとミュアが受け答えしてくれる。


ガップレの中で、インタビューなどの受け答えはミュアの担当というのが暗黙の了解となっていた。



「今夜のミュージックスタジオはご覧のアーティストの方々と一緒に、2時間の生放送でお送りしていきます」



女性アナウンサーのセリフの後にすぐさま番組のテーマ曲が流れ、CMとなる。


俺たち含めアーティスト面々は用意された雛壇に順番に座っていく。この番組は初めてではないのでだいぶ慣れてきたが、毎回毎回、昔からテレビで見ていた有名な方々と一緒に雛壇に座るので緊張と感動が入り混じったような、よくわからない気持ちになる。


あっという間にCMが開け、最初のトークが始まる。



「まず最初はkira☆kiraのお二人です」

「「よろしくお願いしまーす」」


「kira☆kiraは先日、全世界同時サテライト中継のコンサートをしたんだってね!? すごいねー」


「はい、途中で停電に見舞われるというハプニングがありましたが、とっても楽しくコンサートができました!」



キアラはトークもうまいんだよなー、本当に大したもんだ。俺なんてトークを振られても全然上手く返せなくて、一言二言で返しているうちに、いつの間にか無口キャラみたいになっていた。それにこんなお面を被っているから尚更だろう。


まあ、それはそれでトークに気を使わなくていいので願ったり叶ったりだ。



「たしか、コンサートのスケットがガップレのユウだったってね? ユウはどうしてkira☆kiraのスケットをすることになったの?」



油断してたらトーク振り来たーッ!!


ちょっと考えれば俺に話が来ることぐらいわかったはずなのに、何にも考えてない!? どうするどうする!?



「いや、その… 事務所を通してオファーを受けまして… 」


「はい! 私たち2人ともガップレの大ファンですから、それで熱烈なオファーをさせていただきました」



キアラが見事に引き継いでくれた。ありがとうキアラ! その隣で私も!?と驚愕の表情を浮かべている誰かさんとは大違いだ。キアラには後でちゃんとお礼を言っておこう。



「ユウはkira☆kiraと一緒にやってみてどうだった?」



またしてもトークを振ってくる大御所司会者、これ以上俺を全国ネットで恥をさらせないでくれー…



「あ、はい、とっても可愛かったです」

「なッ!?」

「そんなユウさん… なんて大胆… 」


「ん? まあそうね、たしかに可愛いけどね、そういう意味で聞いたんじゃないんだけどな~」



スタジオに失笑が溢れる。

まじか、やってしまった…

隣でミュアがすごい怖い目で睨んでくる、ごめんなさい、わざとじゃないんです。


アキラは動揺してるし、キアラは顔を真っ赤にして俯いている。そうだよな、普通に考えたら可愛かったですなんておかしいよな。

はあ… 先が思いやられる。



「じゃあkira☆kiraスタンバイお願いしまーす」

「は、はいッ!」



元気よく返事をした2人は雛壇の隣のステージへと移動する。



「それでは歌っていただきましょう。《kira☆kira》で『片道切符の片想い』」



アナウンサーが曲フリをすると同時にイントロが流れ始める。


軽快なテクノサウンドに合わせて、華麗に踊る2人。ダンスに関してはよくわからないけど、歌も踊りも本当に上手だと思う。


特に歌声に関しては、2人とも独特な声をしていて、歌声に自分の個性がしっかり出ている。


だから、歌声を聴いただけでkira☆kiraだなとすぐにわかるくらいだ。


アキラは力強い歌声で芯が通っていて、キアラは優しく包み込むような歌声、その2つが合わさると何とも言えない、心に響く素敵なハーモニーになるのだ。



「kira☆kiraで『片道切符の片想い』でした。お二人ともありがとうございましたー」



大歓声と拍手を浴びて雛壇に戻る2人。それに続くように続々と次のアーティストたちが順番に曲を披露していく。



「それではここで今週のミュージックランキングを見ていきましょう。このランキングはCDの売り上げとダウンロード数を合わせて算出したものになります」



雛壇足元あるモニター画面が切り替わり、ランキングの映像になる。10位から順番に発表されていき、中には今週のランキングに入ったアーティストが出演していて、拍手が起こる。



「今週の第3位は《Godly Place》で『wake up in the new world』」


「おぉ!」



驚いて思わず声が漏れてしまった。スタジオも溢れんばかりの拍手で祝福してくれている。


俺と翔ちゃんとで作った新曲がまさかの3位とは、他のメンバーも意外だったようで、それぞれ顔を見合わせていた。


中でも、翔ちゃんだけは腕を組み、さも当然のように首を縦に振っている。


かなり聴きやすいサビを当てたつもりだったが、正直なところガップレのファンに受け入れられるか不安が大きかった。


しかし、初週で3位につけているという事実は俺たちガップレにとって何よりも大きな励ましになる。



「第2位は《taku》で『the END』」

「takuは来週のミュージックスタジオでゲストに来てくれまーす」


「それでは第1位です! 第1位は3週連続続けて1位となりました。《kira☆kira》で『片道切符の片想い』です!」



今日1番の大喝采を浴びるkira☆kira。

アキラは満更でもなさそうだが、キアラの方は少し照れ臭いようでペコペコ頭を下げて応えている。


『この片道切符の片想い』はkira☆kiraには珍しく主人公の女の子が積極的に相手の男の子にアプローチをしていくという歌詞で、キアラが自分の恋の体験を書いた歌になっている。


そのリアルな実体験が世の絶賛片想い中の女子の心を掴み、片想い女子の応援歌に認定されつつあるのは結構有名な話だった。


ちなみに楽曲を提供したのは俺で、初対面のキアラに大変酷いことをしてしまったお礼ということで曲を提供したのだが、まさかそれが3週続けて1位を取るとは正直驚きだ。


まあ天下のkira☆kiraが歌っているのだから当然と言えば当然か。



「kira☆kira、3週連続1位おめでとうございます」

「「ありがとうございます!」」


「話に聞いたところ、この曲はガップレのユウが提供したということだけど、ユウよく出てくるね~」


「はい、いろいろありましてkira☆kiraのお二人には大変お世話になっております」



ふふ、今度は予想していたぜ。なかなか上手く返せたんじゃないの、これは!



「実はプライベートも案外良い関係なんじゃないの?」

「え? いや特にこれといって何もないですけど… 」


「キアラちゃんはどう?」

「えぇッ!? えーと、その、はい… これと言っては… 」


キアラさん!? そこでゴモッて俯いたら変な誤解されちゃうからね!?


あ、ミュアさん? そんな目で見ないで、別にやましい事は何も… いや女湯事件は事故だからセーフだし!



「いや、全くこれっぽっちも全然ないですから!!」



キアラの代わりにズバッとアキラが答えてくれた。俺への配慮など全くないが、この際良しとしよう。



「そういう事にしておきましょう。じゃ最後はGodly Placeです、お願いしまーす」



何とか話題が切り替わり、俺たちの番が回ってきた。大御所司会者の隣にはミュアが座りトークの受け答えをしてくれる手筈になっている。



「ガップレ3位おめでとうございます」

「ありがとうございます」


「僕も聴いてみたけど、新しいジャンルを開拓していってるね~」

「はい、メンバーがそれぞれ好きな音楽のジャンルが違うので、今回はリードギターの翔さんがヘビーメタルが好きで、この曲を書いてくれました」


「かなり攻撃的な曲だけど、サビが聴きやすくていいよね~」

「サビの部分はギターボーカルのユウが担当してくれたので、ちょっとメタルはと思っている方たちも聴きやすい曲になっていると思います」


「ミュアちゃんは歌わないの?」

「今回、私はシンセで忙しいので、代わりに翔さんがシャウトします」



それを受け、翔ちゃんがカメラに向かってメタルお決まりのポーズを取る。そんなことできるんだ翔ちゃん…



「じゃあガップレスタンバイお願いしまーす」

「はい、お願いします」



スタンバイの間はCMで繋いでくれるらしい。しかし、何故か俺たちだけ演奏するステージが隣のスタジオということだった。


リハで1度ステージに上がったが、何というか狭いライブハウスのようなセットになっていて、何でわざわざこんな所に移動してやるのだろうと疑問に思っていた。


だが、移動して来てその理由がわかった。


俺たちが立つステージのすぐ下では、どこからか集められたメタラー達がひしめき合っていた。


やだ、何これ….

この人たち怖いんだけど…


この人たち、まるでどこぞの暴力が支配する弱肉強食の世紀末の方々のような格好してらっしゃるのですが…


本当にここで演奏するのだろうかと思っていると、隣で翔ちゃんがステージギリギリに立ち、メタルお決まりのポーズを取ると、世紀末の方々から歓声が起こる。



「翔様だ!」

「翔様!バンザーイ!!」

「翔様~~!!」

「しょうざまぁぁあアアア!!」



何だ何だ何が起こってるんだこれは、翔ちゃんはどこぞの異世界に飛ばされた聖戦士だったのか?


いやいや、俺には今の翔ちゃんはどこぞの危ない新興宗教の教祖にしか見えないのだが…


その前分けの長い髪が尚更そう思わせるな。


なんかよくわからんが世紀末の方々はノリノリのようなので、覚悟を決めてメンバーに開始の合図を送り、半音下げチューニングをしたエレキでリフを弾き始める。


すると、今までの騒音が嘘のように止み、全員がこれから始まる曲に聴き入っていく。


翔ちゃんのシャウトを合図に、全員がヘビーなイントロを弾き始めると、世紀末の方々は狂ったように頭を激しく前後に大きく降り出した。


まッ、まさかこれがあの伝説の〝ヘッドバンギング〟なのかッ!?


曲に合わせて全員がシンクロして大きく首を振るこのヘッドバンキングはステージの上から見ると、まるで芸術とも言えるような光景だった。


その芸術は曲が終わるまで続き、曲が終わると、一瞬の静寂が訪れた。


そして世紀末の方々から、まるで爆発のような歓声が沸き起こった。



「翔ちゃん、メタルって芸術なんだね!」

「ユウちん、君もメタルの素晴らしさが少しわかったようですな」



すぐに翔ちゃんのところへ駆け寄り、今の素直な感想を述べる。翔ちゃんもなんだか嬉しそうだ。



「みんなお疲れさま!」

「ミュアお疲れー」



ミュアも普段聴いたこともないようなジャンルを見事に演奏しきってくれた。さすがガップレの歌姫です。



「2バスにまだ慣れなくて違和感あるけど、何とかなったかな?」



マシュの方もバスドラムを1つ増やし、2つのバスドラムで演奏していた。初めて2バスを経験してから、あっという間に演奏出来るまでに持ってきたマシュの技術の高さには感服するばかりだ。



「ねぇー、僕も6弦ベース弾ききったんだから誰か褒めてくれてもいいんじゃない?」

「ヨシヤくん、えらいえらい」



甘えん坊ヨシヤをミュアが頭を撫でながら褒めてあげている。


まあヨシヤも弾いたことない6弦ベースを見事に弾ききってくれたから、俺からも褒めてあげようかな。



「ガップレー! サイコーだったぞー!!」

「ありがと~~う!!」

「俺らみんなガップレのファンになったからなー!!」

「これからも応援してるぞー!!」



ヨシヤを褒めようとすると、ステージの下の世紀末の方々から熱いお言葉を頂いた。どうやら俺たちガップレは世紀末覇者にでもなったらしい。


何はともあれ、ガップレはまた1つ新しいジャンルを開拓し、新しいファンを獲得したのであった。

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