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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔出しNGで新曲作ります 9

「会場は溢れるばかりの人で埋め尽くされ、kira☆kiraのコンサートの開始を今か今かと待ち望んでいます。こちらは会場前の横山です。私たち取材班も会場の外に設置された超大型スクリーンの前で、惜しくも抽選漏れしてしまったファンの方々と共にkira☆kiraのコンサートの開始を待っております。それでは少しファンの方々にインタビューしていきたいと思います。今のお気持ちはどうですか?」


アナウンサーが先程から隣でカメラに向かってピースをしているファンにマイクを向ける。



「kira☆kiraサイコー!! アキラちゃん!キアラちゃん頑張ってー!!」


「チケットの抽選に漏れてしまった時の気持ちはどうでしたか?」


「この世の終わりだと思いました。でもチケット1枚の倍率が500倍だと聞いたので諦めもつきました。でもこうしてサテライト中継をしてくれるので、会場の中にいるファンも、ここにいるファンも、世界中のファンもみんな心は一つ! 精一杯kira☆kiraを応援したいと思います!!」


「ありがとうございました。コンサート会場の外ですが、会場の中に負けないくらいの熱気を感じます! 以上、会場前から中継でした」












「すごい人だなー!、何かワクワクしてきたーッ!」



舞台袖にある客席のモニターを見ながらアキラちゃんが子供のように目を輝かせています。


たしかに今まで沢山コンサートをしてきて、ここまで多くの人たちを前に歌うのは初めてだと思います。


しかも、サテライト中継ということで、世界中に同時に中継されるのでその数は未知数です。


アキラちゃんとは違い、私の方は今までにないほど緊張していました。


その1番の原因は、今隣で膝の曲げ伸ばしのストレッチをしているGodly Placeのユウさんが一緒にコンサートに参加してくれるからです。


私はユウさんに恋をしています。


先日、ユウさんが間違えて女湯に入っていた時も、ユウさんにだったら裸を見られても構わないとさえ思ってしまったほどでした。


しかし、まさか逆にユウさんの大事な部分を見てしまうとは思っていませんでしたが、ユウさんは気にしていないようで安心しました。


本当は、今度こそユウさんの素顔を見たかったのですが、またいろいろあってお預けです…


今、ステージの裏の控え室で、間も無く始まる本番に備えてひとりひとりがウォーミングアップをしたり、最後の準備に追われています。


私も気合いを入れないと!



「キアラ!私たちなら大丈夫だって!一緒に楽しもうな!!」

「うん! アキラちゃん、頑張ろうね!」



私が緊張していることに気付いたアキラちゃんが純粋な笑顔で励ましてくれています。


これまでkira☆kiraとして、アキラちゃんと2人で頑張って来ました。だから、お互いのことは誰よりもよくわかっています。


いつでも私のことを1番に考えてくれていて、励まして支えてくれるアキラちゃんが私は大好きです。



「皆さん時間です、スタンバイお願いします!」



スタッフの方が緊張した面持ちでコンサート開始の時刻を教えてくださいます。



「よーし、みんな!手を出して!!」



アキラちゃんがメンバーの前に出て、いつものように円陣の声掛けをします。


アキラちゃんの右手の上に次々と手が置かれ、私も自分の右手を乗せました。


すると、私の隣にユウさんが来て、私の手の上にユウさんの手が重なりました。


思わず声が出そうなのを必死に堪えて、平然を装います。


私、顔赤くなってないかな…?



「今日もみんなで最高のコンサートにしよーう! そして何よりみんなで作るkira☆kiraの音楽を心から楽しもーッ!!」


「「「おーーーッ!!!」」」







……


………







照明が暗転し、イントロの曲が流れ始めると、会場のボルテージが一気に最高潮に達します。



「「「kira☆kira!!kira☆kira!!kira☆kira!!kira☆kira!!」」」



沸き起こるkira☆kiraコールに応えるように、バンドメンバーたちの演奏が始まります。


私とアキラちゃんがステージの中央、所定の位置に着き…


今幕が上がりました!!



「「「うおッーーーー!!!」」」



最初の曲はkira☆kiraの中でもアップテンポなロックナンバー。


会場の盛り上がりをそのままこの曲にぶつけて貰います!


すごい…


バンドメンバーが私たちの呼吸に合わせるかのように曲を奏でています。


その中でも、ユウさんは私たちと練習を始めて1週間ほどしか経っていないのに、誰よりも私たちに合わせて演奏してくれているのが分かります。


Godly Placeというバンドが短期間であっという間にメジャーのトップシーンに上り詰めたのは、目で見てわかるテクニックだけじゃなくて、こうした相手の呼吸に合わせる演奏が出来ること、相手を思いやる気持ち、それがGodly Placeの魅力の1つだと、一緒に音楽を奏でて始めてそのことに気付きました。


以前、一緒にkira☆kiraの曲を作る時に、初めてユウさんとセッションをしましたが、あれほど気持ち良く歌えて、時間を忘れるくらい歌うことに夢中になって、何よりもあんなに楽しく歌うことが出来たのは初めてでした。


あの時から、私はユウさんのことが好きになったんだと、今ならよく分かります。


コンサートは順調に進み、終盤に差し掛かりました。



「じゃあ次の曲いっくよーッ!!」

「「「おーーー!!!」」」



アキラちゃんの掛け声に、会場もより一層の盛り上がりを見せます。


ステージの上で汗を流しながら、歌って踊るアキラちゃんは、いつもよりも輝いています。


次の曲のイントロが終わり、アキラちゃんが歌い始める瞬間、会場の照明が一斉に落ちて、辺り一面何も見えなくなってしまいました。



「何が起こったんですか!?」



突然の出来事に驚き、マイクを持ったままつい言葉が漏れてしまいます。


しかし、私が漏らした声はマイクに伝わることはありませんでした。



「もしかして… 停電…!?」

「キアラ… 」



ステージの反対側で歌っていたアキラちゃんが、私の所へ来ました。


視界はほとんど真っ暗ですが、ステージの足元の蛍光目印でお互いの大体の場所は把握できます。



「アキラちゃん、大丈夫?」

「うん、それよりこんな時に停電なんてタイミングが悪過ぎだよ~!」



しばらく経っても電気が回復する様子はなく、ファンの方々も痺れを切らして騒いでいる人が少なからず出て来ていました。


スタッフが個別に対応に当たってくれているみたいですが、数が多過ぎて対応しきれていません。この広さでは拡声器もあまり意味がないようです。



「いい加減にしろよ!!」

「電気はまだつかねぇのかよー!」

「誰だ!? 今俺にぶつかった奴は!」

「もう帰っていいかしら!?」



だんだんと不安が募り、暴言の声も大きくなっていきます。


先程まで、みんなが歌で心を1つにしていたのに、どうしてこんなことになってしまうのでしょうか…



「キアラ、アキラ、大丈夫か!?」

「ユウさん!」

「大丈夫に決まってるだろ!」



ステージの後方からユウさんがこちらにゆっくり向かって来ます。


「やっと目が慣れてきて、ここまで来れた」

「何しに来たんだよ!?」

「アキラちゃん!」



私たちを心配してくれたユウさんに向かってアキラちゃんが酷いことをいいます。


本当にどうしてアキラちゃんはこういう時までユウさんに辛く当たるのでしょうか?



「いや、こういう時こそ2人の歌をみんなに届けないといけないと思って」



そう言って、手に持っていたアコースティックギターをスッと持ち上げて、ストラップを肩に掛けます。



「キアラ、俺と一緒に作った歌、今歌えるか?」

「はい、歌えます!」


「アキラも歌えるか?」

「言われなくても歌えるよ!」


「よっしゃ! じゃあ俺たちは今出来ること、俺たちにしかできないことをしよう!」


「はい!」

「… わかった、他に手もないしな!」



ユウさんはギターを掻き鳴らし、音を奏でます。それに合わせて、私とアキラちゃんが歌を乗せていきます。


大きな騒音の中で僅かに聴こえる歌、でも、確かに聴こえるその歌に、初めは全く気付かなかった人たちが徐々に気付き始め、その歌に聴き入り、そして口ずさみ、いつか会場全体に広がって、全員で歌う大合唱になりました。


客席では、サイリウムや携帯の光が広がり、満天の星空の下にいるような幻想的な光景に、まるで夢でも見ているような気分です。


そして歌が終わると、いつの間にか回復していたスポットライトに照らされた私とアキラちゃん、そしてユウさんに今までにない大きな歓声と拍手が贈られてきました。



「なあ!あのギターのお面つけてるやつって、まさかガップレの?」

「ああ!ガップレのユウだぜ!」

「ええ!? なんでガップレのユウがいるの!?」

「すげー!こんなすげーの初めてだよ!」



客席からはガップレのユウさんがkira☆kiraのバンドでギターを弾いていることに驚きの声が上がっています。



「みなさん!今日は特別にkira☆kiraのギタリストとして、Godly Placeのユウさんが来てくれました!!」


「「「おおーーー!!!」」」



ユウさんがステージの前へ出てきてくれたので、折角なのでみなさんにユウさんを紹介します。


先程は客席の後ろ方でよく分からなかった人たちも、両サイドに設置されている大型スクリーンにアップで映し出されたユウさんに大歓声を送っていました。


それを受けて、私とアキラちゃんに挟まれているユウさんは客席に向かって深くお辞儀をして、手を振っています。


そんなユウさんの姿を見て、私はやっぱりユウさんのことが大好きなんだと再確認しました。


その後、私はより一層、歌にも踊りにも気合いが入り、無事にコンサートを終えることができました。


途中ハプニングはありましたが、本当に私の人生で最高のコンサートになりました。


ユウさん、本当にありがとうございます!

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