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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔出しNGで新曲作ります 5

「だあぁぁぁあ~!! 」



スターエッグプロダクションのVIPエリアの1部屋が俺に貸し与えられ、その部屋に入るなり真っ先にベッドにダイブしながら叫ぶ。



「初日からなんてハードなんだ… 」



スターエッグプロダクションに着いた後、キアラに案内された場所はプロデューサーとか、その他諸々、名前は忘れたがお偉いさんが集まる会議室で、着いて早々1人にされた。



「ごめんなさい、私とアキラちゃんはまだ雑誌の撮影の途中なので、終わり次第すぐ迎えに来ますね」



そう言ってキアラはどこかへ行ってしまった。こんな強面のおじさんたちがいるところに1人にしないでくれと内心泣きそうになったが、そこは男らしくグッと堪えた。


会議が始まると、まず最初に言われたのは「その変なお面は何かね?」だった。


一応僕、《Godly Place》というバンドをやってまして、そこでは顔出しNGでやってるもんですから… とか何とか説明して、最終的にガップレのユウをサポートのギタリストとして迎えるという宣伝文句は新しいファンを獲得できるのではということで、お面を付けたままでの参加が認められた。


中にはガップレのファンの方もいたらしく、ギターの腕前とかは特に聞かれることはなかったが、それからは《kira☆kira》とは何なのか、どういう方向性を持っているとか色々説明された。


簡単にまとめると、《kira☆kira》はアイドルの枠を超えたスーパーアイドルだ!! と、いう説明で大体合っていると思う。


2時間程みっちり《kira☆kira》の信者として教育された後解放され、すぐにキアラが迎えに来てくれたのだが、さっきの英才教育の所為なのかキアラと再会した際に、


「キアラ様、私のような者のために、わざわざお迎えに来てくださり、感謝の極みでございます。以後、私のことは執事と思ってくださって結構ですので、何でもお申し付けください」


とか、何か変な事を言っていたらしく、それを聞いたキアラが、まだ部屋の中にいたプロデューサーたちに物凄い形相で抗議しに行ったらしい。


その後、頭に物凄い衝撃と痛みを感じて我に帰ったのだが、一体何が起こったのかよくわからない。今の話も後でキアラから聞いたもので、何も覚えていなかった。


キアラは最後まで俺の頭の衝撃については説明してくれなかったが、まあ何ともないから大丈夫だろう。


その後はコンサートで演奏する曲を楽譜を見ながらCDプレイヤーで、何度も何度も聴いて憶え、今度はCDに合わせてギターを演奏して練習していき、終わったのは深夜0時を回った後だった。


練習が終わりすぐに部屋に案内してもらったが、さすがに風呂にも入らずに寝るわけにはいかない。


明日も普通に学校があるため早く寝なければならないが、身体くらい洗って寝よう。


そう思って同じフロアにある大浴場に向かった。







……


………







「あれ? 24時間開いてるって聞いたんだけどな」



大浴場には男湯、女湯の表記がなく、2つある入り口の片方には清掃中の看板が立て掛けてあった。



「さすがにこんな時間だし、どうせ誰も入ってないだろ。お邪魔しまーす!」



中からの返事もなく、そのまま清掃中じゃない方へ入ることにした。


脱衣所でお面と服を脱ぎ、タオル1枚を持って浴場へ、横スライドのドアを開け中に入るが、もちろん中で女子が入浴しているなんてこともなく、誰もいない浴場で身体を洗い、湯船にゆっくりと浸かることができた。


換気扇が壊れているのか、浴場全体が霧が掛かったように曇っているのが少し気になるがとてもいい湯だった。心が落ち着く。



「風呂上がりにイチゴ牛乳を飲みたいな~… どっかに売ってないかな~」


「それなら、脱衣所を出て左に行った休憩室の自販機で売ってますよ」

「え? あ、親切にども」



独り言のつもりで言った言葉に、親切な人が答えてくれた。


浴場内が真っ白でよく見えないから、いつの間にか入ってきてたんだな。


それにしてもイチゴ牛乳あるんだ… 良かった~…


いや! ちょっと待てッ…! 今の声は聞き覚えがあるぞ、聞き覚えがあるとかないとかにしても、女の子の声に聞こえたのだが、いや… まさかそんな、ねぇ?



「あのー…?」



念の為に一応聞いておこうと思い、親切な人に声を掛ける。



「もしかして、星野キアラさんではないでしょうか?」

「はい、星野キアラです」


「ブッフォッ!!?? なんとぉーッ!!??」

「え!? もしかしてその声はユウさんですか!?」



どどどどどどうしよう!? いやそもそもなんでキアラがここにいるんだ!?



「どッ、どうしてキアラがここに!?」

「それはこっちのセリフですよユウさん! ここは女湯ですよ!?」


「なぬーッ!? 一体何がどうなっているというのだ…!?」



幸いなことに辺り一面が蒸し風呂のように曇っていて、キアラの姿はよく見えていない。視力がいい俺ですら見えないのだから、おそらくキアラの方も同じだろう。



「ごめんなさいユウさん、ここのお風呂は毎日0時になると男湯と女湯が入れ替わるんです」


「そうか、それで片方は清掃中の看板が掛けてあったのか。こんな時間だし誰も入らないだろうと思って、ちゃんと確認しなかった俺の不注意です、ごめんなさい」


「いえ! 私の方こそ、ちゃんと説明しなかったので、本当にごめんなさい!」


「「ふふっ」」



こんなシチュエーションなのに、2人して謝っているという、何とも不思議な光景が面白くて、つい笑みがこぼれる。


どうやら俺だけでなく、キアラもそう思ったようで、2人して笑っていた。



「じゃあ、俺がここにいたらいけないし、先に上がるね」

「はい、ではまた明日ですね、おやすみなさい」


「うん、おやすみ~」



そう言い残して浴場を後にしようとした時、脱衣所の中に誰かが入ってくる音が聞こえてきた。



このタイミングでか!?

不味い、大いに不味い!!



「お~い、キアラ! 先に入ってるか~!?」

「あッ、アキラちゃん!?」


「おーう、今日は遅くまで練習頑張ったから、でっかい風呂に入ろうと思って!キアラも誘おうと思って部屋に行ったら、先に行ってるみたいだったからさー!」



何ということだ…!? この前やっとアキラから俺への変態疑惑が解消されたと思ったのに、この状況じゃ現行犯で言い逃れできない!


たとえ悪意はないとしても女湯にいるという事実は変わらない。


終わった…

何もかも…


これから一生、変態お面男として生きていくのか…


そうだな、それも悪くない。もういっそのこと変態道に身も心も捧げよう、きっとそれはそれで楽しいかもしれない。


そう思えば、これからアキラに変態と罵られても開き直ることができそうな気がする。



「(ユウさん! こっちです!!)」



僅か数秒足らずの間で、そんなことを考えていると急に後ろから手を引っ張られ、そのまま物凄い音を立てて湯船の中に引き倒された。



「ぶっはッ! な、何んだぁ!?」

「(そのままジッとしていてください! アキラちゃんは私が何とかします。ユウさんは隙を見て脱衣所に逃げてくださいね)」



俺を湯船に引き込んだキアラが、こちらに背を向けながら俺を庇ってくれている。


あえてこちら側を見ないようにしてくれているのだろう。反対側を向きながら俺に向かって話しかけてくれていた。


ふと後ろから見るその顔は風呂に当てられたのか、赤く染まっているように見えた。



「いいのか、キアラ?」

「はい、ユウさんは悪くないですから」



ありがとうキアラ!! 俺はこの最後の希望に縋ることにした。



「大丈夫かキアラ? なんかドボーンって大きな音がしたけど」



浴場のドアを開きながら、アキラが先程の俺が湯船に引き込まれた際の不自然な音を気にする。



「ちょっと大きなお風呂で興奮しちゃって…!!」

「キアラもまだまだ子供だな~」



そう言いながら脱衣所の扉と湯船の間にある洗い場の1つに腰掛けてシャワーのお湯を出すアキラ。



「くッ…!!」


「(気にしないでキアラ、気にしたら負けだ)」

「(だっ、大丈夫です、これくらいはいつものことですから…)」



キアラの後ろから小声で慰めの言葉を掛けておいた。


それにしてもアキラのやつ、キアラの咄嗟に出たアドリブにサラッと嫌味で返すなんて… こいつはきっとあれだ、正真正銘の天然なんだな。



「そ、それにしてもアキラちゃん? ほんと珍しいよね、アキラちゃんが大浴場に来るなんて!」

「そーなんだよねー、私もなーんか今日突然入りたくなったというか、何だろうな、虫の知らせってやつ?」



くそーッ!意味わからんが当たってやがる~



「そ、そうだ!アキラちゃん? 良かったら頭を洗ってあげようか?」

「えっ、いいの!? じゃあ頼んじゃおうかな~」



「(ユウさん! 私がアキラちゃんの頭を洗っている隙に後ろを通って脱出してください)」

「(ラジャー!!)」



キアラはこちらを振り返ることなく湯船から上がると、靄の中にボンヤリと見える人影に向かって歩いて行った。


頼むぞキアラ!



「じゃ、じゃあシャンプー付けるね!」

「そんな声を大きくしなくても聞こえるって〜」

「そ、そう?ゴメンね」



キアラは俺に聞こえるように大声を出して、脱出するのにベストなタイミングを教えてくれている。


さすがキアラ、シャンプーをしている状態なら足音も気配もほとんど察知できないはずだ。


「ちょっとキアラ!シャンプー付け過ぎじゃない!?」

「え!? そう? これくらいが普通じゃない?」



好機!! 今がその時!!


俺は波音を立てないようにゆっくりと湯船から上がり、忍び足でアキラとキアラの後ろを通り抜けようとする。


いくら視界が悪いといっても、2人の後ろを通り抜ける際には、限りなく距離が近付くため、2人の姿がばっちし見えてしまうが、今はそんなことを気にしている場合ではない!


俺はなるべく視界に入れないようにして進むことにした。



「キアラ、そろそろ流してくれよ~」

「え!? せっかくだから背中も洗ってあげるよッ!!」


「シャンプーは流さないのかッ!?」

「さっ、最近の流行りはシャンプーをしながら身体を洗うんだよ! アキラちゃん!」

「へー、そうなんだ! わかった!!」



ナイスだキアラ! 後はこのまま2人の後ろを抜けるだけだ。



「あッ…!!」



しかし、事件は起こってしまった。


俺がちょうど2人の背後に差し掛かった時、キアラの手から滑り落ちた石鹸が俺の足元に落ちてきたのだ。


それを踏んで転ぶ、などというお決まりの展開は流石の俺でもしない。


しかし、石鹸の方に気を取られてしまい、腰に巻いていたタオルが下に落ちてしまう。


急いで拾い上げようとしたが、石鹸を拾おうと振り返ったキアラの目線に俺の股間がばっちり重なってしまった。



「え゛!!?? ここここれはもしかして、いやもしかしなくても、ももももしやユウさんのユウさん!? ヤダ!そんなキャーーッ!!」



そのまま突っ伏すように意識を失うキアラ。そんなに俺のゾウさんが迫力があったのか、はたまたグロテスクだったのか… いや!今はそんなことより、この状況はヤバい!!かなりヤバい!!



「おーい、キアラ? 大丈夫か? なんか変な声出さなかったか?」



アキラが今にもシャンプーを洗い流そうとシャワーに手を伸ばしている。させるかぁッ!!



「ぁっ、アキラちゃん大丈夫だよ、石鹸が変なところに行っちゃってビックリしただけだから… 」



精一杯の裏声を駆使し、なんとかキアラっぽく喋るように努める。これでうまく騙されてくれればいいが…



「なんだー、そうなのか。てかキアラ声がちょっと変だぞ?」

「え!? ちょっと変な声出したから喉がおかしくなっちゃったみたい!」


「ふーん、そうか」



なんとか誤魔化せたー!普段からガップレでキーが高い曲を歌っていたのが良かったみたいだ。



「まあいいけどさ、もう少し背中を洗ってくれない?」

「えッ!?」



ここで拒むのは不自然か、いやでもアキラの背中を俺が洗うなんてことは理性が、その、大変なことにですね…



「どうした? 早く洗ってくれよー」

「わ、わかったよ…」



覚悟を決めて、そっとアキラの背中に泡立てたスポンジを当て、ゆっくりと上から下へ撫でるように洗い上げる。



「んあっ! ちょっとくすぐったいよキアラ〜!」

「ごめん!もう少し強めにするね!」



女の子の背中を洗うなんて、小さい頃、妹の愛美の洗ったことがあるくらいで勝手が分からない。とにかく言われた通り少し力を入れて擦ってみる。



「痛ッ! 今度は強過ぎる〜!」

「ごごごごめん!」


「もう!なんで急に出来なくなっちゃったの? さっきとはまるで別人みたいだぞ?」


「いやいやいやいや!そんなことないよ!?ヤダなー、アキラちゃんったら」



今度は力を入れ過ぎたみたいだ。


ダメだ… このままじゃ時間の問題だ、何とかしてこの状況を打破しなければ俺に未来はない…


背後で気絶しているキアラもこのままだと何かと良くないだろうし、早めにケリをつけなければ!



「アキラちゃん、私そろそろ上がるね?」

「えー!? 一緒にお風呂入ろうよー、今すぐ泡を流すからさ!」



待ってー!! 洗い流したら全てが終わってしまう!! えーい!こうなったらもうヤケクソだ!!



「あれ!?アキラちゃん、お風呂の中にヌッシーがいるよ! 捕まえなきゃ!」

「なんだって!?私が捕まえてやる!!」



勢い良く立ち上がったアキラは、そのままお風呂にダイブして行った。


ほら、あれだアキラはやっぱり紛れもなく天然だから、でもその天然に救われたな、ありがとう…


直ぐにキアラをなるべく見ないように、そっと抱き抱え、急いで脱衣所に駆け込む。


中へ入ると、すぐに近くのソファーに横にして寝かせ、扇風機を当てておいた。


幸いキアラは身体にバスタオルを巻いていて、余計な気を使わないで済んだのが助かった。



「キアラー!ヌッシーいないよー? あれ?キアラどこー?」



風呂場のガラス戸にアキラの影がどんどん近付いて来るのが見える。俺は自分の衣服を持ち、急いで脱衣所を抜けて向かいの男湯の脱衣所に駆け込んだ。


あとは脱衣所に入ってきたアキラがキアラを見つけて介抱してくれるだろう。何とか助かった…


誰もいない脱衣所で俺はそっと胸を撫で下ろした。


もう帰りたい…

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