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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔出しNGの事情があるのです 16

花沢さんが倒れた。


ずっと下を向いていて、顔を上げたと思ったらそのまま仰向けに倒れたんだからビックリしない訳もなく、そのまますぐに保健室へ運んでいった。



「勇志、アンタ何したのよ?」

「入月くんは女の子に触れることなく気絶させることができるのね」



と、女性陣から酷く罵られたが、まさか本当に俺の所為だというのだろうか…


花沢さんをおぶって急ぎ保健室に着くと、相変わらずやる気なさそうなシゲ先生が診てくれたのだが、過度の緊張とストレスによるものらしい、しばらくすれば目を覚ますから心配するなということだった。


ふぅ、ホッとした。 てっきり俺の顔を見て気絶したから、物凄い酷い顔でショックを受けたか、物凄い息が臭くて耐えられなかったのかと思ったが、試合で随分と頑張り過ぎたのかな。


とにかく原因が俺じゃなさそうで安心した。


暇そうにしているシゲ先生に花沢さんを任せて、俺はその場を後にすることにした。


体育館では午後から男子バスケ部の練習があり、明日は遂に地区大会だ。


なんとしても県大会出場権を勝ち取り、限定プレミアゴールドダンガムプラモを小畑からいただきたい。


俺はその想いを胸に練習に励んだのだった。





……


………







なんか今日1日凄い長かったような気がする。


家の玄関で靴を脱ぎながら今日1日の疲労感をヒシヒシと感じていた。


こんな時は1番に風呂に入るに限る。


リビングにいるであろう妹の愛美や母さんにただいまも言わず、そのまま風呂場に直行した。



「はぁ… 」



脱衣室に入ると先客がいるようで、自然にため息が溢れてしまった。


ふと視線を落とすと、綺麗に折り畳まれた服の上に、やけに可愛らしい花柄のパンツとピンクのブラジャーが置かれていた。


ったく愛美のやつ、上下違う種類の下着じゃないか。 それにこの花柄の可愛らしいパンツはなんだ? 中学3年にもなってまだこんな可愛いのを履いているのか? やはりまだまだ子供だな。


置かれたパンツを手に取って、そんなことを考えていると風呂場のドアが開かれ、中から妹の愛美が出てくる…. はずなのだが、出てきたのは



「歩美!?」

「きゃッ!勇志!?」


「ごッ、ごめん!! てっきり愛美が入ってるのかと思ってた!!」

「そう、ならしょうがないけど…」



ふぅ~、さすが歩美。


どっかの金髪娘と違って、いきなり蹴りかかってくることがなくて助かる。


最悪の事態を覚悟して出た額の汗を拭きながら一安心する。



「勇志? ちなみにその手に持っているものは何かな?」

「へ?」



俺が今、額の汗を拭き取った物を広げると、なんとも可愛らしい花柄のパンツがヒラヒラと揺れていた。


あ、やっぱりまたこのパターンか。


俺が最後に憶えているのは、迫り来る歩美の右ストレートを見ながら、歯を食いしばったところまでだった。






……


………







「ハッ!?」



目を覚ますと俺はリビングのソファーに横になっていた。


どうやら部活で疲れて帰って来て、そのままソファーで眠ってしまっていたらしい。


しかも、何故か頭がガンガンする。何か悪い夢でも見ていたような感じだ。



「あら、勇志起きた?」

「あれ、歩美来てたのか?」



キッチンでは母さんと歩美が並んで料理を作っているみたいだ。


歩美は家に常時置いてある部屋着を着ているので、今日は家に泊まるつもりのようだ。



「う、うん。 それより何か憶えてる?」

「何かって… 何だ? 疲れてたのか帰って来てすぐ横になってたみたいだ。 でもよく覚えてないな」


「ちょっと強くやり過ぎたかも…」

「何?」


「なんでもない! 勇志が悪いんだからね!」

「あらあら~、本当に2人は仲良しね~」



母さん、どこをどう見たらそうなるんだ。 話しが全く噛み合ってないんだが。



「あ、お兄ちゃん気が付いたんだ。 もうビックリしたよ! 今度は歩美ちゃんのパンッ ー … ふぐぁ!?」

「ちょっと愛美ちゃんはこっちに来ようね~」



愛美が何か言いかけた瞬間、歩美が物凄い勢いで口を塞ぎにいった。


歩美ってあんなに早く動けるんだな、バスケでもやったら結構いいとこまでいくんじゃないか?



「えぇ!? お兄ちゃん記憶を!?」

「そう、だからそっとしといてあげて、私のために」

「わッ、わかりました…」



あの2人の方がよっぽど仲良いと思うのだが、なにやらコソコソやっていて楽しそうだ。



「ねえ勇志、明日バスケの試合でしょ?」

「うん、そうだけど?」



何事もなかったように戻ってきた歩美が唐突に俺に尋ねる。



「明日、私と愛美ちゃんとで応援に行くから、今日は泊まっていくね」

「俺がなんて言っても泊まっていくだろ、歩美は」


「まあね~」



まあそんなことは今に始まったことじゃないから驚きはしないが、年頃の男がいる家に泊まるのはあまり関心しない。


いくら幼馴染みと言えど、俺が100%歩美に手を出さないという保証はない。 歩美は可愛くて綺麗で魅力的だし、伊達に《Godly Place》のセンターをしていないというのは、幼馴染みの俺が1番よくわかっている。


時と場合によって俺は、過ちを犯してしまうのではないかと、人知れず心配しているわけだ。


まあそんなことは歩美が知る由もないのだが、本当に俺がジェントルマンで感謝してほしいくらいだ。



「はあ… 」



明日には試合もあるし、今は余計なことは考えずに寝よう。


ささっと寝支度を済まし、自分の部屋のベットの中へ潜り込む。


1日の中でベットの中へ入る時が1番幸せだなと再確認し、少しニヤけてしまう。


段々と遠のいていく意識を心地よく感じながら呼吸を整えていると、ふとベットの中に誰かが入ってくるような感じがした。


おそらく愛美のやつだな。


愛美は時折寂しいからと布団の中に潜り込んでくることがあるので、今回もそうなのだろうと別段怪しむこともしなかった。


こういう時は愛美のやつをそっと抱き締めてあげるとぐっすり眠れるということらしいので、今回も隣にいるであろう愛美をギュッと自分の方へ抱き寄せた。



「うッ…」



抱き寄せた際に少し声が漏れたのか可愛い声が聞こえたが、そのまま御構いなしに抱きしめ続ける。


ちょうど俺の顎の下あたりに愛美の頭がすっぽりと収まるような形になり、髪の毛からは女の子独特の甘くていい香りが鼻を刺激する。


そこで俺はある異変に気付いた。


いつもなら感じることない2つのとても柔らかくて尚且つ大きな膨らみが、俺のお腹のあたりにムギュッと押し付けられているのを…


いや、愛美を抱き締めるときにいつもその2つの膨らみ感じないこともないのだが、今回は異常にその膨らみがデカかった。


何かがおかしい…


可愛い我が妹が、いずれナイスバディなレディになるだろうとは思ってはいるが、たかが数週間でここまで成長するなどあり得ないだろう。 そこから導き出される答えはひとつ…


今抱き締めているのは妹の愛美ではないということだッ!!


その疑問を確かめるために俺は恐る恐る口を開く。



「歩美… なのか…?」



俺の顎の下に隠れていた顔が少し離れ、歩美の綺麗な顔が目の前に現れる。



「うん… ゴメンね起こしちゃった?」

「いや、でもどうして…?」



言い訳などいくらでもできたが、目の前の歩美の顔はどこか寂しそうに見えて、どうしても理由を聞かなければならない気がした。



「最近、勇志がずっと遠くいるような気がしてて…」

「別に、学校でもガップレでも、家でだってこうして会ってるじゃないか?」


「違うの、そういうことじゃなくて、うまく言えないけど、距離を感じるの」

「そっか… 」


「あの約束、憶えてる?」

「どの約束だ? いっぱいあり過ぎてわからん」


「とぼけないでよ!」

「う゛ッ!」



歩美の拳が無防備な俺の腹に食い込む。もうちょっと手加減というものをしてほしい。



「『俺が歩美を歌わせてやる。悲しい唄じゃなくて、誰かを笑顔にする希望の歌を俺が歩美に歌わせてやる』って、私すごく嬉しかった… 」



そういえばそんなこともあったな、今でこそ考えられないが、昔の歩美はまるで別人だったからな。


生きることに希望をなくした女の子、それが昔の歩美だった。



「ねぇ! ちゃんと聞いてるの!? 人が真面目な話をしてる時はちゃんと聞く!」

「はい、ごめんなさい!」



一応、俺の家族のことを気遣ってか、声のボリュームは最小限にして怒ってくれている。


それでも怒られていることに変わりはないが、口元が少し緩んでしまいそうになる。



「ねぇ勇志…. 」

「ん?」


「私たち、これからもずっと一緒だよね?」

「うん、これからも一緒にいるよ」



〝ずっと〟とは言えなかった。


歩美は俺とずっと一緒にいることに拘っている気がする。でもそれは歩美の自由を奪っているのではないかと、心の何処かで感じていた。


だから〝ずっと〟とは言えなかった。


でも、ガップレや学校がある限り、当分は一緒にいることになるだろう。


なんだかんだ思っていても、結局俺は歩美の優しさに甘えているんだろうか…



「なあ、歩美?」

「……….」



目線を下ろすと、歩美は目を閉じて静かに息をしていた。


言いかけた言葉を呑み込み、俺もそろそろ寝ようかなと目を閉じてみるが、一向に眠れる気配がしない。


ダメだ!眠れん!!


お腹の辺りにあるけしからんものが俺の意識を覚醒させる。


無だ、無心になるのだ!!


必死に無我の境地へと達しようという努力も虚しく、カーテンの隙間から日が差し込んでくるまで、俺は己の欲望と戦い続けるのであった。

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