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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔出しNGの事情があるのです 8

あれ? 私、男の人にぶつかったんじゃないの? 全然痛くない…


え? どうして入月先輩も倒れてるの?



「花沢さん、怪我はない?」



部長が倒れている私に手を差し出しながら訪ねてくれているけど、私は怪我ひとつしていない。



「大丈夫です。 それより部長、一体なにが… 」

「入月くんが貴女を庇って身代わりになってくれたのよ」


「え…?」



どうして私のためにそこまでするんですか、入月先輩!?


今までずっと迷惑とか嫌な思いしかさせていないのに!


1番最初に出会った時も、私が先輩の顔にボールをぶつけて、私が男の人苦手だから顔を見て謝ることも出来なかったのに…


なんで私なんかのために、そこまでしてくれるんですか?



「おい! 勇志! 脚を怪我したのか!?」

「大丈夫、ちょっと捻っただけだよ… それより小畑、耳元で大声出すのやめてくれないか? うるさいから」


「軽口を叩けるようなら大丈夫だな」

「勇志、脚ってお前、また前の傷が…」


「心配要らないって真純、今回は軽く捻っただけだって」


「とにかく、1度保健室で診てもらわないと。 林田くん、入月くんを保健室まで連れて行ってくれる?」

「了解っと」


「わッ!? ちょっと真純!? お姫様抱っこはやめろよ!」

「いや、でもこれが1番脚に負担が掛からないかなと思ってさ」


「そうかもしれないよ? でもね、こっちは凄く恥ずかしいの!!」



理由を聞かないと納得ができない。

このままじゃ私、ずっと変われない。



「あの! …先輩… どッ… どうして」



先輩の方に顔を向けるけど、やっぱりダメだ! どうしても顔が見れない。 考えてみれば今まで1度も入月先輩の顔をちゃんと見たことない。



「花沢さん、怪我はなさそうで良かったよ。 俺のことなら気にしないで、自分でやったことだから」

「…でも!」


「じゃあ、先輩から1つアドバイスをしよう。 花沢さんは余計なことを考えないで、純粋にバスケを楽しんだらいいよ。 そうすればきっと、思い悩んでいたことが嘘みたいに思えてくるから」



バスケを楽しむ…

そっか、私はバスケを楽しめてなかったんだ…



「入月くん、あなた凄くいい事を言っているのだけれど、お姫様抱っこされながら言っても全然格好良くないわよ?」


「べッ、別に格好つけたかったわけじゃないんだからねッ!」



入月先輩は部長と短くやり取りをして林田先輩に運ばれていってしまいました。



私は…


私は小さい頃から男の人と接したことがほとんどなくて、男の人を前にすると緊張して何もできなくなってしまう。


そんな1種の体質のようなものになってしまっていた。


そんな自分がずっと嫌いで、でもどうすることも出来ずに生きてきた。


学校ではなるべく目立たないようにして友達も作らなかった。


1度、友達がいたことがあったけど、あの人がカッコいいとか、彼氏がどうとかそういう話になって、付いて行けなくなって自然に距離を置くようになった。


陰口を言われている事も知っているし、嫌われている事も知っている。 それで構わないと思っていた。


高校に入って、部活動の紹介で女子バスケ部を見たとき、凄く衝撃を受けた。


素早い動きで相手を躱し、華麗にシュートを決める姿、その容姿も綺麗でカッコいい。 それはまさしく私の理想そのものだった。


その後すぐにバスケ部に入部することを決めた。 運動は得意ではなかったけど、苦手でもないから大丈夫だと思った。


でも、いざ始まってみると、練習はなかなか厳しくて、何度も何度も辞めようと思った。


その度に、立花時雨先輩が励ましてくれて、この人みたいになりたいんだと、また頑張ることができた。


練習も試合も真面目に取り組んできた。上手くなるように人一倍努力もした。


けど1度もバスケをしていて〝楽しい〟と思ったことはなかった。


入月先輩が私に、バスケを楽しんだらいいと言った。


この1週間、入月先輩は事ある毎に私に声を掛けてくれていた。


「ナイスプレー!」とか、「今のパス絶妙だったね」とか、「足の使い方が上手だね」とか、いっぱい褒めてくれた。


凄く恥ずかしくて、ろくに返事もできなかったけど、そのとき始めて男の人に褒められて嬉しいと思った。


そんなときに私のあがり症の所為で、入月先輩に怪我をさせてしまった。


私がいると誰かの迷惑になる。

私は要らない人間なんだ。


私なんかがバスケをしていちゃいけないんだ。



「花沢さん」

「ッ!? 部長…」


「誰かに迷惑を掛けるくらいなら、バスケなんてもう辞めよう、なんて考えてる?」

「どうして…?」


「そんな顔してたら誰だってわかるわよ、でもそれだけは許さないわ。 もし貴女がバスケを辞めたら、入月くんが自分を犠牲にして貴女を助けた意味がなくなってしまうから」

「でも!」


「バスケを楽しむ。 貴女はどういう意味かわかる?」

「わかりません…」


「それがわかったらバスケ部を辞めてもいいわよ」



部長はそう言って優しい笑顔を私に向けてくれた。


でも、バスケを楽しむってどういう事なんだろう… 私にそれがわかる日が来るのだろうか。

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