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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔出しNGなのにどうしてモテるのか 2

「ねぇ!聴いた? ガップレの曲!」


「うん!聴いた聴いた、すっごくイイよね~」


「ドラムのマシュ、ちょーカッコよくない!? 顔は隠してるけど、ドラムを叩くときのあの筋肉がたまんな~いッ!」


「え!? 確かにカッコいいけど、私はベースのヨシヤみたいな、なんかフワッとしてて優しそうな感じのがタイプかな~」


「わかってないな~、甘い歌声とアコギのアルペジオが織り成すハーモニー。そして謎に包まれた素顔… ギターボーカルのユウくんこそ、女の子の憧れの的、白馬に乗った王子様よ!!」


「確かに… つい妄想しちゃうもんね」


「ユウの素顔を知っているのは世界でただ1人、身も心も許した私だけ… みたいな~~ッ!」


「でもどーすんのよ? もしあのお面の下がすっごいブサイクだったら…」


「そーよ、そーよ!あんな趣味の悪いお面を被ってるくらいだもの、何か後ろめたいことがあるに決まってるわッ! 」




おいーッ! 勝手に持ち上げといて、最後の最後でボロカス言うのやめなさいよ! 近くで本人が聞いてるんだからね!?


授業の合間や休み時間の高校生の話題と言えば、流行りのドラマや映画、好きなアーティストや音楽の話だろう。


そして今日1番の話題と言えば、瞬く間に時の人となった《Godly Place》の面々や曲の話だ。


それは俺が通う『立花大付属高校』の2年4組も例外ではない。


まあ、テレビやラジオであれだけ騒がれればこうもなるか…


クラスの女子たちは、まさか同じ学校の同じクラスに噂のGodly Placeのメンバーがいるとは夢にも思っていないことだろう。



「それにしてもボーカルのミュアって、ちょー可愛いくない!?」


「ねー、モデルみたいにスタイルいいし、歌もちょー上手いし」


「あたしもミュアみたいになりたいなー」


「「ムリムリ」」


「だよねー」



こうして自分の机から、聞きたくなくても聞こえてくる大音量のお喋りは、ガップレ男性陣の話からボーカルのミュアの話にシフトする。



「でもさ、ミュアって謎だよね?」


「確かに! 年齢も本名も、なんもわかんないもんね」


「でもさー、テレビで見た感じ、化粧してやっとお姉さんってところだから、化粧とったら案外アタシらと同い年くらいだったりするかもよ~?」


「うそーッ! マジウケる~!」



うわー… そんなこと言って知らないぞ?ほら見ろ、噂のご本人様が教室の入り口からやって参りましたよー。


横目でガップレの話で盛り上がる女子を見ながら、一直線に俺のところへやってくる歩美。



「はぁ… 勇志のクラスもガップレの話で持ちきりみたいね」

「と言うと、歩美のクラスもか」


「朝からずっとこんな感じで、さすがに嫌になってきたわ」

「同感です。 まあ、俺は朝のホームルームの時点で嫌だったけどな」



一体この騒ぎがいつまで続くのだろう、そう考えると頭が痛くなってくる。


それにしても…



「おい真純、どうしてお前はそんな涼しい顔をしていられるんだ?」



と、俺は後ろの席でドラムマガジンを読んでいた真純に問い掛ける。



「ん? そうだなー」



俺に質問された真純は、読みかけの雑誌を机に置き、少し考えるそぶりをしておもむろに口を開く。



「ガップレの時の俺たちって、もう1人の自分みたいなものだろ? だから今の自分とは別の自分と考えれば、そんなに気にならない… かな」


「どうしよう歩美、真純がそれっぽいこと言ってるみたいなんだけど、何言ってるかわからない…!」

「つっ、つまり、気にするなってことよね? 真純くん!?」


「あれ? 俺なんか変なこと言った?」

「自覚ないんだ… 」



この後ろの席のちょっと天然が入っていて、背が高いイケメン筋肉くんが《Godly Place》ドラム担当の『マシュ』こと『林田はやしだ 真純ますみ』だ。


俺とは付き合いは長く、鼻水を垂らしていた頃からの仲なのだが、お互いこれといって趣味も性格も合わず、どうして一緒にいるのか疑問に思ったことは数え切れない。


一緒にいる中で音楽やらバスケやら共通点が誕生し、今では親友と呼べるほどの仲になっていた。


《Godly Place》というバンドも、最初は俺と真純の2人で始まり、駅のロータリーで細々と路上ライブをして活動していた。


そんなに前の話ではないが、もう既にいい思い出となっている。それはまあ昨日単独アリーナライブしているんだから、そうもなるだろう。


この立花大付属高校の2年にガップレのメンバーが3人もいて、偶然とは恐ろしいものだなと思うかも知れないが、実は残りの2人も全員この学校の生徒だったりする。


ベースの『ヨシヤ』の本名は『山崎やまざき 義也よしや』で、俺たちより学年は1つ下の1年生。


そして、存在を忘れている人も多いであろうリードギターの『ショウちゃん』


彼の本名は『白井しらい 翔平しょうへい』俺たちより1つ上の学年の3年生だ。


どうしてメンバー全員が同じ学校なのかというと、結論から言えば“偶然”だ。


俺と歩美と真純は中学も一緒で、家から近い高校を選び、3人で立花大付属高校に進学。


そこの上級生にたまたま翔ちゃんがいて、その次の年に「僕だけ仲間外は嫌だ」とかいう理由で義也も入学してきたというわけだ。


ちなみに、俺と真純は同じクラスで、歩美は別のクラスなのだが、歩美は授業の合間や休み時間の度に俺のクラスにやって来ては世話を焼いて帰っていくのが当たり前になっている。もちろん俺は頼んだ覚えはない。


かくして、1つの学校に今話題の超人気バンドのメンバー全員が在学しているわけだが、その事実は本人たちとその家族、関係者しか知らない秘密となっている。


そりゃあバレたら色々と面倒だろうし、何より俺の趣味満喫ライフが送れなくなってしまうことだけは何としても避けたいからなのである。



「それより勇志、忘れてないでしょうね? 今日はガップレのファーストアルバムの発売日で、駅前のタウレコでミニライブとサイン会あること… 」



そっと俺の耳元に顔を近づけて、小声で今日の予定を教えてくれる歩美。


そういえば昨日のライブ終わりに水戸さんがそんなこと言ってたような気もしないでもない。


とりあえず、親切に教えてくれた歩美に愛想笑いで返すと、額に軽くデコピンされました。



「じゃあ放課後、直接タウレコに行けばいいか、でも1時間しないで着いちゃうな」


「私はメイクとかあるから、着いたらすぐ控え室に行くけど、2人はどうするの?」


「俺はせっかくだから楽器屋巡るかな、あの辺は楽器屋多いし」



真純はもう立派なバンドマンだな… 発言からして違いますもの。



「あー、俺はゲーセンにでも行きます」

「ふーん…」



なんですか歩美さん、その目は!? そんな目で見ないで!



「じゃあ、放課後みんなで行きましょう。あとの2人には私から声を掛けておくね」

「おう、頼んだ」



とは言ったものの、あの2人のことだから一緒に来ないと思うな。


最後のホームルームが終わり、歩美が俺のクラスに来たところで3人で駅へ向かう。


案の定、義也も翔ちゃんも後から行くとのことだったらしい。


よくこれでバンドが成立してるなと疑問に思わなくもないが、これでいいと思うようにしよう…


それより俺は早くゲーセン行きたい!


最近はバンド練とかで、殆どゲーセンに行けてなかったから今から既にウズウズしていた。


そんな気持ちを歩美に悟られないように俺たちはタウレコに向かったのだった。

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