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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔を出していても起こる災難 1

「起立! 礼!」

「「ありがとうございましたー!」」



「はあ、今日も1日終わったなー」


椅子の背もたれに全体重を預け、そのまま教室の天井を見上げる。


いつも通りの学校、いつも通りの授業。それがいつも通り疲れるのは、それもまたいつも通りなのである。



「今日は別に疲れるような授業はなかったろ?」



と、後ろの席の真純がまるでまだ元気が有り余ってるような口ぶりで話し掛けてくる。


勉強できない奴は授業について行くのもやっとだってのに、偉い人にはそれがわからんのです。


こんなことを真面目に真純に言ったところでどうにもならないので軽く冗談で返すことにした。



「おめぇの元気をオラに分けてくれ」

「元気玉作って投げたら、また元気スッカラカンだぞ?」


「ほぅ、なかなか言うようになったじゃないか」

「まあね、このくらいは」



脳みそまで筋肉で出来てる… とまでは言わないが、真面目な真純が冗談に冗談で返すことができるようになったとは、友人として嬉しいものがあるな。



「なあ真純、今日はガップレの予定なんもなかったよな? だったら久々に飯でも食ってくか?」



積もる話がある訳ではないが、たまには男同士でツルみたい時もある。


特に最近は女子絡みの災難が多発していて、男同士で気楽に語り合いたい気分だった。


幸いなことに今日、歩美は新体操部のスケットで帰りが遅くなるから一緒に帰れないと登校の時に言わていた。




「わるいな勇志、今日はこれに呼ばれてるんだ」



と、バスケのシュートのジェスチャーをする真純。



「まさか、男のお前に振られるとはな」

「ごめんごめん、また今度な!」



そう言って真純は体育館の方へ向かっていってしまった。


そういえば、真純はガップレの活動がない時はバスケ部のスケットをしてるんだったけな。


あいつは昔からのバスケットマンで、中学の時は俺も真純と一緒にバスケ部に所属していたこともあった。


俺は高校に入ってから部活は所属せず、趣味のゲームとアニメに全力を注いでいる。


真純に振られてしまったし、今日は大人しくゲーセンに寄って帰ろうかと俺も教室を後にした。






……


………





校舎を背にして歩き出すと、校門の辺りに何やら人集りが出来ていた。


しかもその殆どは男ばかりで、この距離でもむさ苦しさを感じるほどだ。



「おい、神無月学園のやつが来てるらしいぜ!?」

「マジか!あの金持ちばっかの学校だろ?」

「ああ! しかもメチャメチャ美人だってよ!」

「すげーな! 早く見にいこうぜ!」



そうやってまた男子学生たちが俺の横を通り過ぎては人集りに加わっていく。


なるほど、それで男子が多い訳かと

一人納得しつつ、興味もないので人集りの横を通り過ぎようとした時だった。



「なあ、この学校に何しに来たの? 良かったらこれから俺とデートしない?」

「いえ、人を探しているので… ごめんなさい」


「そう言わずにさ~。 いーじゃん! ちょっとくらい付き合えよ!」



うわー、今時あんな誘い方をするナンパ男がいるんだな、それにしても周りの奴らも止めもしないとは世も末だな。


まあ俺はここ最近女性絡みの災難が多発しているため、自らそんな危険を顧みることはしないが、まあ絶滅危惧種のナンパ男を一目見ておこうかなと、通り過ぎながら人集りの中心に目をやると…


いるナンパを受けていた女の子とバッチリ目が合ってしまった。



「あ… 」



ナンパ男の後ろ姿は確認出来たが、その奥にいたナンパをされていた女の子とバッチリ目が合ってしまった。



「やっと見つけた… この時をどれだけ待ち望んだか…!」



うわー… どうも見覚えある人がいたような気がしたけど、そっくりさんかしら?


金髪ショートカットで運動できそうな身体、そして地球のGに引かれない自己主張のしていないお胸。



「うん、人違いだな」



俺は立ち止まることなくそのまま帰路についた。



「ちょっと待ちなさいよ!」



人違い人違い。きっと「待ちなさい」って言うのも俺ではない誰かに言っているのだろう。


俺は背後から聞こえてくる声に構うことなく歩く足を速めていく。



「待てって言ってんだろ、バカ勇志ッ!!」



やっぱり俺なのか…


覚悟を決めて恐る恐る振り返ると、そこには先程のナンパ男を含む野次馬男子30名程を引き連れてこちらに爆走してくる『西野莉奈』がいた。



「ヒィ~~~ッ!!」



その迫力ある光景を前に、俺は回れ右をしてただ全力で逃げることしかできなかった。



「コラー! 待てーッ! 逃げるなーッ!!」



金髪女子も男共を背景に全力で追い駆けてくる。



「待って~ん! 神無月の子~! せめてお名前だけでも~~!」

「そんな男より、ここにいい男がいるよ~~」

「つーか、あの男だれだ?」

「女の子置いて逃げる奴だぜ、ろくな奴じゃねえよ!」



どうやら男共はみな、金髪女子を追ってこんな地獄絵図になってるようだ。


しばらく鬼ごっこは続き、志が低い男共は次々にリタイアしていった。


志が高く強い精神と体力を持った真の西野ファンだけが、この鬼ごっこで唯一生き残り、俺と俺を追い掛ける西野の後をついて来ていた。


よく西野を一目見ただけでここまでできるよな。


確かに見た目は可愛いとは思うけど、中身は全然全く可愛くないんだぞ! こんな状況じゃなかったら、いくらでも説明してやれるのに!


西野ファンとは違い、俺は強い精神も体力も持ち合わせていないため、すでに限界が近付きつつあった。


そこで、咄嗟に駆け込んだ薄暗い路地裏に身を潜め、呼吸を整えることにした。


入り組んだ地形とこの薄暗さから、殆ど人は通らない道なのだが、俺は学校に間に合わない時は、緊急時専用のにショートカット通路としてよく使っていた。そのため、だいたいのコースは頭に入っている。


大丈夫だ、ここなら金髪女子とその取り巻きから完全に逃れることができる!



「あれ!? ここに逃げ込んだはずなのに… 」



俺が隠れた後、すぐに追って入ってきた西野だったが、どうやら俺を見付けられずにいるようだ。



「やっと追いついた…! さあキミ、少し僕たちと話しをしようじゃないか… 」



最後まで諦めずに西野を追ってきた精鋭たちは全部で4人だった。


4人もよくここまで残ったもんだ、正門で見かけただけの女子にお近づきになりたいがためだけに良くここまでやるなとつい感心してしまう。


しかし、当の本人はすごく嫌そうな顔をして「付いてこないで!」と言って奥の方へと逃げて行ってしまった。


そんなことを言われても、すぐに後を追いかけて行く男たち。さすがにここまで来ると西野も迷惑なんじゃないだろうか?


このまま逃げるつもりだったが、西野が逃げて行った方向はちょっとマズイな…


もしあの男共が人気のない路地裏であることをいい事に、西野に何か良からぬことをしでかしたら、少なからず俺にも原因があることになる。


このまま俺が逃げて西野に何かあったら寝覚めが悪くなるじゃないか…



「ああ、もうッ!」



俺も西野の後を追って駆け出すのであった。

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