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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔を隠したある休日の話 6

「… ユウさんのお面の下の素顔を、私に見せてくれませんか…?」



私はユウさんを真っ直ぐ見つめながら、ずっと言いたかったことをやっと言うことができました。


先程、シャンメリーを飲み干してから気持ちの起伏が激しく、それもあって、ほぼその場の勢いでユウさんに素顔を見せてくださいとお願いすることができました。



「えっと… 」



ユウさんはすぐに私から目を逸らして、私に話す言葉を選んでいるようでした。 その仕草でユウさんから返ってくる言葉が何か容易に想像できてしまいます。



「ごめん… キアラの前でこのお面は外せない… 」

「どうしてか理由を聞いてもいいですか…?」



いつもの私なら、今のユウさんの言葉だけでショックを受け、引き下がっていたと思います。でも、今の私は少しでもユウさんと一緒にいたい、ユウさんのことをもっと知りたいという気持ち以外、何も考えられない状態になっていました。



「キアラが好きになったのは“ガップレのユウ”という人物であって、本当の“俺”じゃない」

「ユウさんはユウさんです! 顔を隠していても、いなくても、ユウさんはユウさんです!」


「確かにガップレのユウは俺の一部だよ。けど、全てじゃない… ガップレのユウという人物は俺がある人との約束を果たす為に、俺が作り出した人物なんだ… 」


「私は… ユウさんの全てを好きになる自信があります… 」


「俺にはないよ、本当の俺を知ったキアラが、今と同じように好きでいてくれる自信は… 」



ユウさんはそう言って力なくソファーにもたれかかりました。



「自分でそう言えるほどに、俺は弱くて醜くて、卑しい人間なんだよ… このお面はそんな自分を隠すためのものなのかもしれない」


「自分の弱さを認めて誰かに話すことができる人は、きっと同じように誰かの弱さも認めて許せる優しい人なんだと思います… 」


「違う、そんなんじゃない!」


「トイレの前でぶつかったあの時、私の失態を自分のことは顧みずに助けてくれたユウさんは偽物なんかじゃありません! もしユウさんが偽りだと言っても、私には本物のユウさんです! 私の大好きなユウさんなんです!」


「キアラ… 」


「ですから、ユウさんの全てを私に見せてくださいませんか…?」


「……俺は、今はまだキアラの気持ちに応えることができない、まだ約束の途中なんだ」



ユウさんはそう言った後、私の顔を真っ直ぐ見つめて、再び言葉を繋いでいきます。



「それが終わったら、改めてキアラの気持ちと向き合いたい。それまで待っててほしい… なんて、そんな都合の良いことは言えない… だから、忘れてくれても構わない!」


「私はユウさんを待ちます、いつまでも… だって、私はユウさんのことが大好きですから…!」



その瞬間、窓の外に大きく花火が上がり、笑顔の下に隠した薄暗くてよく見えなかったはずの涙が明るく照らされてしまいました。



「みてみて〜ん、今日はキアラちゃんのために打ち上げ花火を用意してたのよ〜ん」

「ひゃあ〜、すごいな〜!」



マリーさんの計らいでビルのすぐ目の前に上がった花火を見ようと、続々と私とユウさんが座っている窓際のソファーの周りに人が集まってきました。


私も急いで涙を隠すように手のひらで拭ってから窓の外に目を向けて、次々と打ち上がる大きくて色鮮やかな花火をぼんやりと眺めました。


今、ユウさんはそのお面の下で一体どんな表情をしているんですか?


そのお面があったから、こうしてユウさんと出会えました。けれど、今はそのお面が少し煩わしく感じます、


そのお面がなければ、私はユウさんがどんな事を考えているのか少しは分かることができるのに… こんな想いをしなくてもいいのに…


その後、花火が終わると合わせてパーティーもお開きになりました。


ユウさんとはそれから一言も話せませんでした。


話そうと思えば話せたのですが、何となく話しかけられませんでした。それはきっとユウさんの方もそうだったと思います。


今年の誕生日は、私にとって忘れられない大切な誕生日として心に残り続けることになったのでした。

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