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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
116/127

顔を隠したある休日の話 1

お待たせしました!

人気投票で1位になったキアラちゃんのお話です!

『ーー 私はユウさんのことが大好きです! ーー』



ふとした瞬間にどうしてもあの事ばかり思い出してしまいます。



『ーー いつかユウさんが私のことを好きになってくれるように私… 頑張りますッ!ーー』



本当は告白するつもりなんてこれっぽっちもなかったのに、ついその場の雰囲気で言ってしまいました。


私が好きと言った時のユウさんの驚いたような困った顔が、今でも脳裏に焼き付いていて、凄くどうしようもない気持ちになります。



「はぁ… もう何であんなこと言っちゃったんだろう…」


スターエッグプロダクションにある自室に、私の溜息だけが何度も響き渡ります。


こういう時、シンプルで余計な物を置いていない自分の部屋がすごく広く感じてしまいます。


あれから何となくメールも電話も出来ずに、ただ過去のユウさんとのメールのやり取りが残った画面を見るだけになっている携帯を、そっとテーブルに置いて顔を伏せます。



「なぁキアラ、最近ずっとそんな調子だけど、本当に大丈夫なのか?」

「えッ!? アキラちゃん!! いつの間に来てたの!?」


アキラちゃんの声が聞こえて急いで顔を上げると、私のベッドで寝転がったアキラちゃんが心配そうな顔をして私のことを見ていました。


どうやら、ユウさんのことで頭が一杯になっていて、アキラちゃんが部屋に入って来たことに全く気が付かなかったみたいです。



「さっきからここにいたんだけどなー」

「ごめんね、全然気付かなくて… 」


「別にいいけどさ、なんかあの学園祭から、キアラ元気ないよな? まさか、またユウに変なことされたんじゃ…!?」

「違う違うアキラちゃん! 別に変なことなんてされてないよ! ただ… 」


「ただ?」

「ううん、何でもない… ごめんね、心配かけて… 」


「それなら良いけど… 」



私のせいでアキラちゃんまで何だか落ち込ませてしまったみたいです。


ここは何か話題をふって、雰囲気を変えなくちゃ!



「あ、アキラちゃんは私に何か用事でもあった?」

「そうだったそうだった! えーと、マリーちゃんに頼まれたお使いがあって、キアラに行ってもらうように言われてたんだ!」


「マリーさんが私に?」

「うん、そうそう!」



普段お使いなど頼まないマリーさんが、私にお使いを頼むなんて、珍しいこともあるんですね。


それにしても、わざわざアキラちゃん経由で私に連絡しなくても、電話かメールで直接伝えてくださればいいのに…



「それで、何をすればいいの?」

「えーっとね、このメモに書いてあるって」



そう言ってアキラちゃんは、綺麗に折りたたまれた小さな紙を私に差し出します。



「読んでみて!」

「えーと… “10時に玄関前のエントランスに1番のお気に入りの服を着て待てってね♡” これってどういうことなのかな、アキラちゃん?」


「さっ、さあ〜…? とにかく急いだほうが良いんじゃない? 10時まであんまり時間ないしさ!」

「アキラちゃん、なんか怪しい… 」



この様に、アキラちゃんが私と目を合わそうとしなかったり、そわそわして落ち着きがない時は何か嘘をついているか、私に知られたくないことを誤魔化すときが多いんです。



「そッ、そんなことないよ! ほらほら早く支度して!!」

「わッ!? もう、そんなに急かさないでよ〜」



アキラちゃんに背中を押されながら、ウォークインクローゼットに入った私は、何か怪しいと感じながらもお気に入りの服に着替えることにしました。






……


………








10時に玄関前のエントランスで待て、とだけ書かれたメモの通りにエントランスに来ましたが、この後のことはアキラちゃんに聞いても『聞いてないから知らない』と言われてしまいました。


今日のアキラちゃん、やっぱりなんか変だったな…


もしかして、私とユウさんの間に何かあったって勘付いているのかな…



「おーい! キアラ? もしもーし!」

「えッ!? あっ、はいッ!!」



エントランスのソファーに座って考え事をしていると、突然誰かに私の名前を呼ばれて驚いて顔を上げます。



「ゆッ、ユウさんッ!?」



顔を上げた私の目に飛び込んで来たのは、いつものムンクの叫びのようなお面を被った《Godly Place》のユウさんでした。



「大丈夫? なんか難しい顔をしてたけど… 」



ええーッ!!? どうしてユウさんがここに!? なに!? 一体、何が起こっているの!?


とっ、とにかく何か返事をしないと…!



「でゃ、大丈夫でひゅ!!」



キャーッ!! 思わず噛んじゃったよ〜!!



「ふッ、あははははッ!」



慌てふためく私を見て、ユウさんはお腹に手を当てて笑い出しました。



「もっ、もう! 笑わないでください! いきなり声を掛けられて驚いただけなんですからね! 」



そう言って少しいじけて見せるのは、もちろん照れ隠しです。


でも、声を掛けられたのがユウさんじゃなかったら、こんなに驚いたりしなかったので、ちょっとくらいいじけてもいいですよね?



「いや、ごめんごめん… それじゃあ早速だけど行こうか….?」

「ちょっと待ってくださいッ!」



そういってショップが並ぶエリアの方に向かおうとするユウさんの腕を掴み、ユウさんの前に回ります。



「その… どうしてユウさんがここにいるんですか? それに私と一緒に行くって… 私、ここで待っていること以外は何も聞いてなくて… 」



ユウさんに会えたことは素直に嬉しいですが、ユウさんが来てくれた理由も、これからどこかへ一緒に行くということも、何も知らないのは何よりもユウさんに申し訳ないです。



「えーっとね… 俺も詳しいことは言えな… 知らないんだけど… まあとにかく! これからキアラは俺とデートをします!」


「えぇーッ!!??」


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