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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔を出すの? 出さないの? いえ両方です 17

「えっと、その… アキラ? あんまりくっつかれると歩き難いんだけど…?」



俺は左腕にがっしりと自分の両腕を絡めているアキラに話しかける。



「だってユーシ、すぐどっか行っちゃうんだもん!」



絡めた腕はそのままにクルッと顔をこちらに向けて眉間にしわを寄せるアキラに、少しドキッとする。



「だッ、だってしょうがないだろ? そ、その… ふッ、風紀委員とかクラスの仕事が忙しいんだよ、本当…. 」


「だから今だけ、ね? ほら! あっち行ってみよ!」

「ああッ! ちょっと!」



執事&メイド喫茶で賑わう教室を出た後、すぐに義也が無事に保護してくれたkira☆kiraと合流した俺は、2人を控え室に案内しようとしたのだが、キアラはユウさんを探すと聞かず、アキラには一緒に学園祭を回ろうとせがまれて、現状こうなっている。


見事に六花大付属高校の生徒に変装したkira☆kiraのアキラとキアラは今の所、学園祭の賑やかさに溶け込んでいるようで、誰からも気付かれてはいないが、それも時間の問題のような気がする。


なぜなら…



「ユウさーん! どこにいますかー!? 返事して下さーいッ!!」



俺とアキラの位置より少し先の方の人混みの中でキアラがガップレのユウの名前を大声で叫んでいるからだ。


あんなに目立つ事してたらすぐにkira☆kiraのキアラだって直ぐにバレてしまうだろうに…


あー、もう!



「悪いアキラ! ちょっとさっき食べたクレープがあたったみたいだ… ちょっとトイレ行ってくる! 時間かかると思うから先に控え室に戻っ…」

「わかった!ここで待ってるな!」



俺の話も最後まで聞かず、ここで待つと言い張るアキラ。その表情から俺が何を言ってもここで待つつもりなのだろう。



「じゃ… じゃあ、ちょっと行ってくる!」

「おう! あれ? でも私も同じもの食べたけど平気だぞ? ユーシはお腹が弱いのかな? 意外な弱点発見」



何かブツブツいってるアキラを背にして俺はトイレに駆け込んだ。






……


………





「キアラ、ごめんねはぐれちゃって… いや~、学校って広いから困るよね~…」


「ユウさん! 良かった… 心配したんですよ?」

「いや~、ごめんごめん」



物凄く苦しい言い訳をしながらキアラと合流する。


申し訳ない感じの表情を作ってはいるが、もちろんガップレの時のムンクの叫びのようなお面を被っているため意味はない。


首から下は学校指定のいつもの自分の制服を着ているが、これについてはキアラに学園内を歩き回るためのカモフラージュだと言ってある。


キアラたちも同じくカモフラージュの為の制服を着ているため、別段怪しまれたりはしなかった。



「ユウさんお腹空いてないですか? さっきクレープ屋さんを見かけたので、良かったら一緒にクレープでも食べませんか?」

「くッ、クレープ!?」



ぬぬぬ、さっきアキラに連れられてまるまる1個クレープ食べたばっかりだぞ? 別に甘い物は嫌いじゃないが、さすがに本当に腹が痛くなりそうだぞ…



「嫌… ですか?」



俺が咄嗟に返事をできないでいるのを察したのか、今にも泣き出しそうな顔をして聞いてくるキアラ。


そんなキアラを見て、嫌だとは言えるわけがなく…



「クレープ大好きだなー! キアラ、一緒に食べよう!!」

「良かったー… じゃあ、一緒に行きましょう!」



天使のような笑顔のキアラに手を引かれ、俺は本日2つ目のクレープを食べるためにクレープ屋に並んだのだった。








……


………







こんな入れ替わり作戦を始めて何周目になっただろうか…?


もう覚えてないし、時折自分がガップレのユウなのか入月勇志なのかわからなくなってきていた。


ん、どっちも俺か?


2人とも、いなくなった途端に大声で名前を呼んでくれちゃって、世界のスーパーアイドルだという自覚が本当にあるのか疑わしい。


でも大丈夫だ、あと少し… 午後からのライブステージが始まるまで耐えれば俺の勝ちだ!



「ユーシーッ! まだ腹痛いのかー? 大丈夫かーッ!?」



あぁ… トイレの前でアキラが騒ぎ始めて、周りの生徒たちの視線を集め始めたまたすぐ戻らないと…



「ごめんキアラ、ちょっとトイレ行ってくる!」

「え? でもユウさん、さっきもトイレ行ってませんでしたか? もしかして具合が悪いんですか?」


「あ、あれ? そうだったけ!? いや、あ…. うん、ちょっと具合があまり良くないのかもしれないな… あは、あははははは! じゃあ行ってくるッ!」



そう言って急いでキアラの視界から見えない所に行き、使われていない教室に駆け込みお面を脱ぐ。


そして、今度はトイレの前で騒いでいるアキラの元へ向かった。



「ご、ごめんアキラ、待たせちゃって!」

「あれ? ユーシ、トイレにいたんじゃなかったのか?」


「え? あ、ああ~…. いたよ! いたけど、ちょっと温かい飲み物が欲しくなって飲んできたんだ… よ?」


「そっか、腹痛いのはもう大丈夫なのか?」

「お、おう… お陰様でね、ありがとうアキラ」


「べ、別に… 私は待ってただけだから… 」

「お、おう… 」



アキラが時折見せる照れて目をそらす仕草とか、口元が緩んだ顔とか、これが俺への好意の表れなのだと思うと、見ているこっちまで何だか照れくさくなってしまう。



「つッ、次は向こうの方に行かないか!?」

「わかったわかった、だからあんまり引っ張るなよ!」




照れ隠しなのか、アキラが俺の腕を掴み、また何処かへ連れて行こうとする。


人混みの中をアキラに連れられて歩き始めると、気になることを言っている人がいた。しかも、1人2人でなく何人も同じようなことを言っている。



「なあ、あそこに座ってるのkira☆kiraのキアラじゃないか!?」

「え? 本当だ! いつもと雰囲気違うけどキアラじゃん!」

「マジかよ!お前、声掛けてみろよ!?」

「嫌だよ~、お前行けよ!」

「俺、大ファンなんだ…」

「サイン貰おうぜ!?」



不味い… キアラがみんなにバレた…


このままキアラを1人にしたら、あっという間に囲まれて逃げ場を失って、押し掛けられてパニックになってしまう! 最悪の場合、怪我や事故に繋がってしまうかもしれない…!


アキラの方は地味っ子眼鏡が効いてるのか、まだ誰かにバレた様子はない。アキラには悪いがキアラを助けに行かないと…


俺は咄嗟にアキラの手を振りほどき、アキラと向き合う形になる。



「すまんアキラ! ちょっと野暮用を思い出した、ちょっと行ってくる!!」



そう言ってアキラの返事も聞かずに振り返ると、上着の裾をぐっと捕まれ引き戻されてしまった。



「やだ… 行かないで… 」

「アキラ…?」



今にも掠れてしまいそうなほどの声で俺を止めようとするアキラの声は、いつものうるさいくらいの元気なアキラからは想像もできないほど小さな声だった。



「わ、私は世界のアイドルkira☆kiraのアキラなんだぞ…!? 誰でもみんな喜んで私と一緒にいることを選ぶのに… なのに何でユーシは違うの!?」



目に涙を浮かべながら、必死に俺に訴えかけるアキラの姿を見て、揺らいでしまいそうな心をあと一歩のところで食い止める。


口ではアイドルという肩書きを引き合いに出しているが、他に付き合いの短い俺を引き止めるものが何もないからだということは痛いほど、その表情から伝わってきていた。



「確かにアキラは特別だよ、もちろん俺にとっても… だけど、それはアキラが世界のアイドルkira☆kiraだからじゃない… 」


「え…?」


「俺が特別だと思ってるのは、元気で明るくて、たまに口が悪くて男勝りな女の子で、たまたまその子が超有名なアイドルだったってだけなんだよ」


「それって…?」

「ごめん、じゃあ行ってくる!」


「待って! まだちゃんと聞いてないし、言ってないことがあるんだ!」



アキラの手を振りほどき、急いでキアラの方へ向かう。アキラには悪いけど緊急事態だから勘弁してほしい。



「いやだ… やっぱりユーシの側にいたいよ… お願いだからユーシ、待ってーッ!!」



物凄い大声が背後から聞こえ、振り返るとアキラが目に涙を溜めて俺を睨んでいた。



「何だ?」

「痴話喧嘩かしら?」



周りの生徒からも、大声を発したにアキラに視線が集まってきていた。



「う… うぇ~ん!!」



遂にアキラが声を上げながら泣き出してしまい、周りの生徒たちも慌て始める。



「泣いちゃったよあの子…」

「可哀想… 」

「勇志って言ってたよな? あいつじゃね? 2年4組の入月勇志」

「女の子泣かせるなんて最低ー」


「え…? いや、あのちょっと…?」



あれ? なんか俺、悪者になってない? だけど説明している暇もないし、ここは…



「逃げるッ!!」



全速力で人混みを抜け出し、キアラの元へと急ぐ。アキラにはあとでちゃんと謝っておこう…



「あ! 逃げた!?」

「ひでぇ逃げんのかよ!?」

「あいつ捕まえて、ちゃんと謝らせようぜ!」

「そうだな、女の子を泣かせる奴は男の敵だ!」

「「そうだそうだ!!」」

「いくぞ~ッ!!」

「「うぉぉおおおおおッ!!!」」


「何だ? やけに後ろが騒がしいなって、えぇーッ!?」



そう思って後ろを振り返ると、俺の名前を叫びながら猛スピードで迫ってくる男共がいた。



「入月ーッ!? 待てーッ!!」

「可愛い女子に謝れーッ!!」


「何だ何だ何だーッ!?」



非リア充の男子らの前でアキラを泣かせたから、それで彼らの泣いている女の子は放って置けない魂に火を付けてしまったということなのか!?


くそーッ!! よりにもよってこんな時にーッ!!


全速力で男共から逃げ、お化け屋敷の看板の裏の物陰に身を隠し息をひそめる。



「ちくしょー! どこ行った!? 手分けして探すぞ!!」



足音が目の前を通り過ぎ、聞こえなくなったところで大きく息を吐いた。



「は~… 何だってんだよ全く… 」



とにかく今は急いでキアラを助けにいかないと!


俺は懐からガップレのお面を取り出し、頭から被ろうとした所で、突然誰かに腕を掴まれてしまう。



「ちょっと君! 困るよー、うちの備品を勝手に持って行っちゃ!!」

「はい?」



俺の腕を掴んだのはドラキュラのコスプレをした男で、いきなりのことで驚いていた俺の手からガップレのお面を取り上げられてしまった。



「ちょっとッ!?」

「とにかく、これはうちのクラスの備品だから返してもらうよ!」



そう言ってドラキュラはお化け屋敷と書かれた看板が立てかけられている教室の中に消えていった。



「う、嘘… だろ… 」



お化け屋敷やってるクラスに、俺と同じお面を被っている奴がいたのか。でも、それなら追い掛けて説明すれば分かってもらえるはず!



「あッ!? おい! ここにいたぞ!!」

「なッ!?」



俺がドラキュラを追い掛けてお化け屋敷に入ろうとした所を、俺を追い掛けていた男共の1人に見つかってしまった。



「待てーッ!!」

「あーッ! もう!!」



お面を取り返すのは諦め、急いで再び全速力で逃げ出すが、このままではキアラの所に行けないじゃないか!


お面を被らずキアラの所にいったら、今度こそ俺の事がバレそうだし、アキラが知ったら怒り狂うに違いない…



「こうなったらもうやけくそだーッ!!」



俺は追い掛けてくる男共をバスケの応用で振り切り、自分の教室に逃げ込んだのだった。

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