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運命の赤い糸  作者: 頭山怛朗
9/21

美鈴と和田君、ファミレスで昼食

<6>



「や、山下って、誰ですか? 」和田君が言った。その目は嫉妬に燃えていた?


「異動でW署に替わった警備課の巡査部長よ。なんでもない」と、美鈴は答えた。

「そうですか…… 」若い和田君は美鈴の言葉を素直に信じたようだった。

「そなんことより、さっさと食べてしまいなさい。遅くなるわよ 」美鈴は強制的に話題を変えた。

 若い、高校を卒業したばかりの、まだ一度も給料をもらった事が無い和田君の荷物はそれほたいしたことがなかった。十二時過ぎには全て終わった。

 二人で弁当の残りとペットボトルの珈琲を飲んだ。

“まるで新婚だわ”と、美鈴は思った。美鈴は室内を見回した。“夫婦二人に子どもが一人までなら大丈夫ね……”

 美鈴は自分の顔が赤くなるのを感じた。“私、何を考えているのだろう? ”

「杉内さん、どうしたのですか? 顔が赤いですよ」和田君が怪訝そうに言った。

「何でもないわ! それより、お昼ご飯は足りている? 」

「正直、食べたのが何処に行ったのか分かりません……」

「お昼を食べに行きましょう」

「はい」和田君が嬉しそうに答えた。

「和田君は免許取ったばかりでしょ? 」

「まだ、半年」

「車は私の車よ。私、まだ、死にたくない」

「はい」和田君は再び嬉しそうだった。

 美鈴が運転席、和田君が助手席に座ると官舎の窓からの視線を感じた。月曜の朝には二人のことは噂になっているかも知れない。

“構わない。したい連中にはさせればいい。否定はしない、私は……”


 昨日、夕方のファミレス、ウェイターも昨日のウェイター。

 禁煙席に案内したウェイターは連日現れる“不思議なアベック”に疑念を抱いた。“この二人、何者だろう? どういう関係なのだ? ”

 二人は、また、同じメニュー「ヒレロース・カツ定食」を頼んだ。

「この後食材を買い入れて、その後は掃除よ。お風呂とトイレの掃除もしなくちゃ」と、美鈴。「あの部屋は何年も空き部屋になっていたはずだからしっかり掃除しないといけない。バルサンもしたほうがいいかも? 」

 美鈴は何かと用件を見つけて、なるべく長く和田君と一緒にいるつもりだった。“そうだ、カーテンがなかった。明日、買いに行く……”

 それから、ふと気づいた。“「食材を買いに行く」って言ったけれど、その後何か作るはめになったら何もできないことが和田君にバレちゃう”

「どうしたんですか、杉内さん? 」と、テーブルの向こうで和田君が言った。「“心、ここにあらず”ですよ」

「ごめんなさい、何でもないわ」

「僕といるのは退屈ですか? 」

「そ、そんなことない……。和田君みたいな弟いたらよかったなと考えていたのよ……」

「ぼくは弟ですか? 」和田君はそう言うと黙ってしまった。

 二人の雰囲気が、ますます気まずくなった。

 ……。

「ぼく、弟でなく、せめて“ボーイ・フレンド”になれるよにがんばります」と、和田君がきっぱり言った。

「そう、がんばって! 」と、美鈴が言った。

 二人は笑った。

 そこに、あのウェターが立った。「ヒレロース・カツ定食、お二つです」

「ありがとう」

「ありがとう」

 二人は同時に言った。


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