“善は急げ”
何故、“連続殺人”を“連続殺人”と知られない方がいいのか?
答えは単純である。その方が捕まりにくい。
“連続殺人”は密やかに、である。
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何故、“連続殺人”を“連続殺人”と知られない方がいいのか?
答えは単純である。“連続殺人”となれば警察は本気でその威信をかけ捜査してくる。マスコミも騒ぎ立てるだろう。当然、殺人を続けるのは困難になり、捕まる可能性もでてくる。その点、密やかに行われる“連続殺人”は警察の限られた人員は分散する。つまり私が捕まる可能性が低くなる。
では、“連続殺人”と知られないためにはどうしたらよいか?!
“連続殺人”に規則性を持たせないことだ。
具体的には、第一、殺人の相手の特徴を待たせない。若い女性ばかり狙うとか、老人ばかりとかしない。男女、年齢をバラバラにする。第二、殺人方法を同じにしない。殺しを決行する日に規則性、例えば同じ曜日に殺しを続けるなんて最悪だ。数日で連続殺人の後は、数ヶ月鳴りを潜める。
第三、殺人現場にメッセージを残さない……。多くのシリアル・キラーは自分の殺人であることを証明するために現場に何かのメッセージを残す。でも、私に言わせればこんなこと無意味だ。何の得がある? 何の意味がある? そんなことをするのは“愚か者”のすることだ。
“連続殺人”ということは複数の殺す予定の候補者リストが必要になる。それも全く無関係な人間達で、かつ、私の身近な人間は避けなければならない。
では、どうしてそういう連中を「選択」したらいいか?
最初、「電話帳」を考えたが最近固定電話を持たない者も多いし、持っていても電話帳に名前を載せない者も多い。それでは“不公平だ!”。
何が“不公平”なのだろう? 自分でも笑ってしまった。
次に「住宅地図」を思いついた。エクセルの乱数発生機能を使って「家」を特定(それくらい私にとって朝飯前だ)し、その家を偵察する。偵察した時、最初に見た人間を対象にする?!
「これだと」と思った。“善は急げ”(?)と言うことで、早速、自宅のあるM市周辺と別荘のあるG市周辺の住宅地図を買った。それからレクサスも軽スポーツ・カーも目立つので、車も<それ>ように目立たない車を購入した。
丁度よかったので、殆ど乗らなくなった軽スポーツ・カーは処分した。
殺人の方法もエクセルに決めさせ規則性を持たせない。殺人の方法をバラバラにすれば、楽しみもそれぞれ違ってくるはずだ。想像しただけで、ぞくぞくしてした。
“善は急げ”(?)。この台詞、状況が状況だけに思わず笑ってしまう台詞だ。
エクセルで最初の殺人対象を決めた。対象は住宅地図M市の56P、3のDの北。殺人の方法は「絞殺」。
……。
「柳田四郎? 」私は思わず呟いた。……。どこかで聞いたことがある名前だ……。
そうだ! 中学校の時の理科の先生だ。私がこの世界に入った切欠を作ってくれた教師だ。不味いか? いやいや、そんなことで変更していてはエクセルを使った意味がない。それにあの教師とは中学卒業以来会っていなし、M中の理科の先生の後は他の中学校の先生、教頭や校長をやった後、M市の教育長もやっているはずだ……。この地域の住人の多くが柳田四郎に関わりを持っている。私が特定されることはない、大丈夫だ。
「柳田四郎」はM市L町に住んでいる。L町は幹線から外れた山間の集落だ。その先はトンネルを抜けてG市に至るが、道が狭くあまり利用されていない道路だ。住宅地図によると「柳田四郎」の自宅は、そのL町の一番奥で、隣、下の家まで結構ある。“殺人”に場離れしていない最初のシチュエーションとして最高だ。私は「柳田四郎」を選んでくれたマイクロソフト社に感謝した。
次の土曜日、三月始めの土曜日、私は「柳田四郎」の家に向かった。もう、「何もすることがない」なんって悩むことは無くなったのだと痛感した。
幹線を外れL町に入って集落を抜けY字路に出た。一寸迷って左に曲がり、すぐに間違いだと分かった。道は「L亭」という看板を掲げた料亭(あるいは宿)の前に出た。誰かが「なかなか旨い物を食べさせてくれる」と言っていたのを思い出した。“宿泊できます”とあり、二階の窓に人影が見えた。道は行き止まりになっていた。これから“連続殺人”を目論むなら迷子は不味い。“ナビ”を付けた方がいいかも知れないと思った。
でも、ここで「柳田四郎」の今、現在の情報を手に入れられるに違いない。私は今の「柳田四郎」の情報を知らなすぎる。今、何をしているのか? 家族はいるのか? 生活パターン等々…。
ヤフーブログに再投稿予定です。