表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命の赤い糸  作者: 頭山怛朗
4/21

私は連続殺人を目指す

ヤフーブログに再投稿予定です。

<1>


 私はK電気の企画・開発部担当取締役だ。五十前だが、末席ながら役員名簿に記載されている。


 K電気はスマホに使われている部品のトップ・メーカーで、余り知られていないがあらゆるメーカーが我が社の製品を幾つも使っている。世界的に有名なあの“何とかホーン”も我が社の製品なしでは存在しえない。当然、K電気はM市では最大の企業規模だ。従業員、その家族、素材や事務製品の仕入先等……。「M市はK社の企業城下町」とまで言う人までいるくらいだ。

 私はそのK社の役員。当然、周囲から一目おかれ、それなりの有名人だ。


 そんな私だが会社からの帰宅後や休日にやることがないのだ……。

 私には家族がいない。結婚もしていない。両親は十年くらい前に相次いで死んだ。兄弟も叔父、叔母、従兄弟もいない。“天涯孤独”というやつだ。

 勿論、私にも過去、好きになった女性がいる……。

「結婚してください」と、若い私が言った。

「ごめんなさい。私、気になる人がいるの」と、珈琲が二つだけ載ったテーブルの向こうでその女が言った。「彼、私が結婚してあげないと一生独身でいることになる。でも、あなたなら私以上に素晴らしい女性がいるわ」

 言葉は優しいが(?)、要するに体よく私は振られたのだ。

 女の予言は見事に外れた。その後、愛してもいない女と結婚したが、一年半で分かれた。その後、結婚しなかった。その分仕事に打ち込んで、今の地位を得た……。ある意味、あの女達に感謝しなくてはならないかも知れない。

 時々、あの女と家族に出会う。一ヶ月程前も、ショッピングセンターですれ違った。あの女は相変わらず輝いている。綺麗だ。すれ違う男どもが思わず振り返っていた。それに引き換え夫の方はぱっとしない。ただ図体が大きいだけだ。娘が三人いる。三人とも母親に似た美人だ。父親に似なかったのを“神”(私は無心論者だが)に感謝すべきだろう。

 すれ違っても、女は私に全く気がつかない……。

 ただ、何時、とても幸せそうだ。

 話が反れてしまった。

 兎に角、仕事が終わった後やることが無い。

 酒は飲まないので、正確には飲めないので飲みにいくわけにもいかない。テレビも面白くない。特に民放のつまらなさといったら犯罪だ。あの内容で“視聴料”取るといったら訴えてやる。映画も面白くない。レンタル・ビデオも同じく……。小説でも読もうと思ったが、面白いか詰まらないか分かる前に目が疲れ肩が凝るだけだと分かった。じゃ“書こう”と思ったが、A4一枚分を書く前に才能がないのが分かった。

 人生、二度目の挫折だ。最初が“女”、二度目が“文才”! とんだ大笑いだ。

 ドライブをするため車、軽のスポーツ・カーも買ったが、幾ら“走って”も面白くなかった。折角の新車もここ数ヶ月車庫に眠ったままだ。

 何をやっても面白くない!!


 それで私は“連続殺人犯”を目指すことにした。ただ、私が目指す“連続殺人犯”は“連続殺人”ではない。“連続殺人”と分からないように“連続殺人”を実行するのだ。

 当然だが、私は捕まらない。絶対に捕まらない!! 警察との頭脳戦だ。

 なぜ、私は“連続殺人”と分からないようの“連続殺人”を実行したいのか?

 日本にも“連続殺人犯”、シリアル・キラーがいる。“酒鬼薔薇聖斗”だ。古くなるが“大久保清”、“永山則夫”、“宮崎勤”だ。その多くが社会的に認められていない人間、虐げられいる人間、知能が低い、人生の敗者が大抵だ。でも、彼らと私は違う。私にはT大学の卒業で社会的地位もあり資産もある。私は自宅以外に海辺のG市に別荘を持っている。車もレクサスの他に軽のスポーツ・カーも持っている。

 私に改めて目立つことをやる必要はない。私は人生の勝者であり、それなりに有名人なのだ。


 “連続殺人は密やかに……”やりたい。暇つぶしに“連続殺人”を実行するだけだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ