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運命の赤い糸  作者: 頭山怛朗
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次の獲物は元妻

<18>



 次の土曜日、午前九時、私はG市へ行った。次の獲物の見える道路に小母さんに買ってやった車を止めた。


 ナビに案内され目的の家はすぐに見つかった。

 それは、精精、建坪四十坪程度の小さな、それでも新築の家だった。どんな家族が住んでいるのだろう? きっと、ローンに追われているに違いなかった。哀れな連中だ。

 玄関ドアが開いて四十半ばの女が出てきた。つまり、次の私の獲物になる人間だ。

 女の顔がはっきり見えた。

 そして、私は氷ついた。それは、私が二十年程前に分かれた、妻だった。

 一緒に生活していれば、何時しか、愛せると、私を勘違いさせた女。唯一、知っている女。セックスのことしか頭に無かった女。私を裏切った女。こ

の私を嘲笑った女。

 今となっては、地球の裏側に名も知らな街に住む女より、さらに遠い赤の他人…。

 私は運命の悪戯、表計算ソフト「エクセル」の悪戯を呪った。前回、最初の獲物は中学時代の恩師(?)、今回は分かれた妻。こんな皮肉があるだろうか?

 獲物を変えようか、と思った。家に帰って、もう一度、エクセルで次の獲物を決める……。

 でも、それは私のプライドが許さなかった。私はこれまで、自分が決めたことは貫徹してきた。出来なかったのは、私が本気で愛した女の結婚と小説を“読む”のではなく“書く”こと……。私は思わず笑ってしまった。

 ここで、あんな女のために挫折するのは我慢ならなかった。

 一度決めたことは貫徹する。私は、元妻を殺す。

 私があの女と別れて約二十年。例え、妻の裏切り行為で分かれたとして、離婚から二十年も経ってから“妻を殺す”なんて、誰が考える。私は元妻がここに住んでいたなんて少しも知らなかったのだ。全くの偶然で、元妻にたどり着いたのだ。

 やはり、この女。元妻を殺そう。元妻が次の獲物だ!

 元妻が家の中に向かって何か言った。高校生と思われる女の子が出てきた。それから、中学生らしい男の子。最後に私と同年輩の男が出てきた。あの男だ。元妻の浮気相手。

 結局、元妻はあの男と再婚したのだ。私とは二年持たないが、あの男とは二十年近く持ったことになる。

 元妻は夫と子ども達を急かして、夫の運転する車で何処へ出かけるようだ。買い物かドライブだろう。壁のない屋根だけの車庫から道路に出る時、遠めに家族が一斉にこっちを見るのが見えた。私は思わず身をかがめた。

 車は私の方とは反対側に走り去った。

 幸せな家族。絵に描いたような幸せな家族?

 そう、絵に描いたような幸せな家族。作り物の幸せ。誤解、勘違いの幸せ……。

 真っ平だ。私はそんな一人よがりの幸せなんていらない。そんな勘違い、喜んであの女にくれてやる……。でも、その勘違いももう少しで終わりだ。この私が終わらせてやる。

 私は元の妻の殺害を決意した。

 ……。

 ふと、元妻と高校生の娘(なかなかの美人だった)と中学生の息子で買い物に出かける自分を想像した。そうしたら、生活に追われ“人殺し”を趣味にするなんてことにはならなかっただろう……。

 幸せな毎日? ……。冗談じゃない!? そんな物いらない。

 今日は、獲物の確認を出来ただけで充分だ。これで帰ろう。

 ふと、空腹感を覚えた。そうだ、ファミレスにでも寄って少し早めの昼食でも取ろう。



「明日、津田四郎さんの市葬が行われるわ。葬儀委員長は、あの男よ。人殺しが被害者の葬儀委員長なんて、とんだお笑いよ! 」と、美鈴が和田君に言った。何時ものファミレスだった。

「声が大きいですよ、美鈴さん!」と、和田君。

 美鈴と和田君は仕事が終わった後や土日には何時も一緒だ。

 まるで恋人同士? いや、違う。ホームズが優秀なワトソンの助言を得るため!?


ヤフーブログに再投稿予定です。


次話が出来ていません。更新が何時になるかわかりません。

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