表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命の赤い糸  作者: 頭山怛朗
20/21

次の殺人

<17>



 毎日、六時には会社を出て外食をしたとしても、七時には一人暮らしの家につく。食事や洗濯、掃除をお願いしている初老の小母さんがいるが、所詮、彼女は他人で家族ではない。趣味がない私は土曜・日曜は正直、暇を持て余す。五月の連休なんて最悪だ。

 それで、暇つぶしに人殺しを“連続殺人”を趣味にすることにした。それも私とは無関係の人間の連続殺人だ。

 ただ、エクセルが選んだ最初の殺人は、偶々、私の中学時代の恩師(?)の津田四郎だった。


 次の殺人を思い立った私はPCの電源を入れ、エクセルを立ち上げた。

 エクセルの乱数発生機能を使って「家」を特定(それくらい私にとって朝飯前だ)し、その家を偵察する。偵察した時、最初に見た人間を対象にする?!

 殺人の方法もエクセルに決めさせ規則性を持たせない。殺人の方法をバラバラにすれば、楽しみもそれぞれ違ってくる。

“善は急げ”(?)。本当、この台詞には状況が状況だけに思わず笑ってしまう台詞だ。

 エクセルで二番目の殺人対象を決めた。対象は住宅地図G市の87P、4のEの西。G市には私の別荘がある。殺人の方法は「撲殺」

 ……。

 対象の家には「飯田篤」と書かれていた。

「飯田篤……」 私は次の獲物の名を呟いた。正確には今度の土曜日にこの「飯田篤」の家を調べて最初に目に付いた家族を殺す。ひょっとすると子どもになる可能性もあるけれど、そんなこと構わない。一度決めたルールは変えない。それが、私のやり方だ。

「飯田篤……」 私は呟き、その名前に記憶ないか探った。過去に私に関わった人にそんな名前はなかった。一応、K電気の社員名簿も検索したけれど該当する社員はいなかった。

 G市はG警察署の管轄になる。あの美人刑事、名前は杉内美鈴とかいったか? あの女刑事のM署とは別の署になる。殺害方法も“絞殺”と“撲殺”と異なる。津田四郎と飯田篤(仮)とは無関係!

 この二人を殺した犯人が同一犯だなんて誰も思わない。気づかない。

 もし、万が一、仮に警察が同一犯だと気づいても私には結びつかない! 絶対に! 今度こそ私と被害者は“無関係”という関係しかない。

 それにしても、あの女刑事、どうして私のところに来たのだろう?

 ……。

 さっき、裏の林に感じた人の気配はあの女刑事でないか?

 ふと、そんな考えがひらめいた。

 あの女刑事は何を根拠としてかは分からないけれど、私が津田四郎の殺人者と確信し私の身の回りを調べているのではないか!? そして、私があの“ばあさん”に知られずに家を抜け出す手段だあることに気づいたのではないか?

 ……。

 ここは、ひっそりと身を隠した方がいのか!?

 ダメだ! 我慢できない。前回の人殺し、津田四郎殺しは妻に先立たれ、病気に犯され早く死にたかった津田四郎に操られ殺させられた、もっとはっきり言えば“自殺”の補助をさせられたような殺人だった。今度こそ、自分の意思で、冷静に、冷酷に人殺しを楽しみたい……。

 ……。

 “人殺しを楽しみたい”。……。私は多くの愚かな男達が損をすると分かっているパチンコや、何の益もないスピードに喜びを感じているのを、これまで見下してきた。

 それが、今、私は人殺しに喜びを感じるのか? 人殺し以外には満足感、生きているという実感を感じなくなってしまったのか?

 私は何時の間にか、異常者になってしまったのだろうか?

 ……。

 次の殺人で、この“趣味”はやめにしよう。また、何か、新しい趣味でも見つけよう。そうだ、趣味を探すのを趣味にするのもいいかも知れない。

 ふと、何に脈絡もなく約二十年前に分かれた元妻のことを思い出した。今、あの女は、地球の裏側のブラジルの名も知らない町に住む女より遠い存在となった、あの女は、今頃、何をしているのだろう? 確か、再婚してG市に住んでいるはずだ……。


ヤフーブログに再投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ