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運命の赤い糸  作者: 頭山怛朗
19/21

人の気配

<16>



 裏の杉林に複数の人の気配を感じた。若い男と女だろう。

 いちゃついているのだ。

 猫にも“さかり”、おっと品の無い言葉だった。猫にも繁殖期と無発情期があるのに、人間は一年三百六十五日、何時でも繁殖期だ。困ったものだ……。

 嘗ての結婚生活が破綻したのも、それが原因の一つだった。元妻は毎晩、毎晩求めてきた。元妻はそれなりの美人だったしスタイルも良かった。その頃は私も若かった。勿論、それに全く興味が無いわけではなかったが、毎晩、セックスを求められるのはうんざりだった。

 その上、頭の方は決して良くなかった。テレビはくだらないドラマやタレントのゴシップ物しか見なかった。他の興味は私の出世とブランド品のバックや靴だった。

 私は性的満足を得るためのセックスマシーンで、かつ、見栄を張るための財布に過ぎなかった。

 私達の間に子どもが出来なかったのは、アインシュタインではないけれど幸いだった。(※)ただ、モンローの名誉のために言うけれど元妻は兎も角、彼女自身は決して馬鹿ではなかったようだ。


「明日朝の食事に準備をしておきました」と、後から声がかかった。振り返ると身の回りの世話を頼んでいる後藤さんがエプロンで手を拭きながらそこに立っていた。

「ありがとう 」と、私は言った。「今から帰る? 」

「えぇ…… 」と、後藤の小母ちゃん。「何か? 」

「また、アベックが裏でいちゃついているようだ」

「仕様がありませんね。遠回りでも表から帰らせてもらいます」

「すまないね」

「いえ、言いがかりつけられても困りますから。運動だと思って遠回りします」

「その方がいい。……。ところで、今度の土曜日、車、使うかな? 」

「いえ、使う予定はありません。使ってもらって結構です」

「じゃ、お願いする。夕方の五時には帰ってくるから…… 」

「あの車、元々、買ってもらったものですから、自由に使って貰えば結構です」

「でも、主に私の食べる物や身の回り品を買ってくるのに使っているのだから気にすることないよ」

「一緒に私達の物も買っていますから…… 」

「それは、いい。ただ、私が自分の車を置いて、時々、裏から抜け出していることは秘密にしておきたい」

「それは分かります。五月蠅い、ばあさんも近所にいるし! 」 自分より年下を“ばあさん”と言っているのには笑ってしまった。でも、私にとっては都合のいい小母さんだ。

「じゃ、帰ります」

「気をつけて」

 裏口から出て林を抜けた場所の一軒屋に住む小母さんは、わざわざ表を回って帰って行った。本当なら一分もかからないのに、五分はかかる。

 本当、迷惑な連中だ。何者だ……。あの女刑事? あの美人の女刑事が我が家の裏に回って、私が誰に知られずに家を抜け出す方法を探っている?

 まさか! あの女刑事がこんな時間にアベックで捜査にくるなんてありえないではないか。

 私も刑事達が尋ねて来たことに神経質になっているようだ。

 一番気をつけないことが、慌てて私自身が墓穴を掘ることだ。これから、話す言葉、一言一言に注意しなけらばならない。特に市葬儀の会場では発言に気をつけなければならない。


 嘗ての恩師(?)の津田四郎を殺して、その市葬儀の葬儀委員長を何の因果か私がやるはめになった。

 津田四郎の葬儀も四日後になった、と市長から直々に電話があった。つくづく運命の皮肉を笑った。

 それで、次の人殺しをしたくなった。


※マリリン・モンローがあるディナーパーティーでアルベルト・アインシュタインの隣の席に座り囁いた。「あなたの子どもが欲しい。私の外観とあなたの頭脳なら、その子は完璧な子になるわ! 」

 アインシュタインは笑顔で返事した。「しかし、その子が私の外観であなたの頭脳を持っていたらどうする? 」 (ただし、都市伝説)


ヤフーブログに再投稿予定です。

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