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運命の赤い糸  作者: 頭山怛朗
18/21

私と彼はワトソンとホームズ?

<15>



 あの男、大津卓郎が誰にも知られずに屋敷を抜け出す手段があることが分かった。


 和田君のお手柄だ。でも、これではどっちが“刑事”で“警察事務職員”か分からない。和田君がホームズで私がワトソン?

 でも、どっちでもいい! 事件が解決できるなら。

 それにしても大きな一歩だ。ほんと! 和田君のお手柄だ。

 でも、問題は大津が殺人現場まで行った車だ。それを見つけなければならない。レンタカー……。ちょっと、それは危険すぎる! レンタカーではないだろう。それから、動機は何だろう? あの男、大津が被害者が教師をしていた中学校を卒業して二十五年以上経過している。中学生の時に何等かのトラブルがあったとしても、今更“殺人”なんてありえないではないか?

 では、動機は何だ!?

「杉田さん、綺麗だ!」 突然、和田君が言った。それは小さな声だったけれど、はっきり聞き取れた。和田君が美鈴を見つめているのが、男の家の窓からもれる明かりで見えた。ほぼ満月も頭上にあった。

 和田くん! とても、可愛い!

 和田君より背が高い美鈴は顎を少し引き目を閉じた。和田君が唇を重ねた来た。大学の時以来のキスだ。あの時は少し酔っ払っていて、それ程好きでもない同い年の男と“戯れのキス”だった。

 でも、今は、本気! ……かも?

 和田君の手が美鈴の胸を触ってきた。

 美鈴の手が反射的に動いた。手がその目的を果たそうとした時、理性(?)がそれを止めた。ここで大きな音をたてては不味い!?

 美鈴は和田君の手首をつかんでそっと言った。「ダメ! これは痴漢よ。私に痴漢で現行犯で逮捕されたい? 」

「ご、ごめんなさい」と、和田君。声が震えていた。

「帰るわよ」 美鈴がそう言って車に戻った。「勝手に私有地に入っている。長居は無用よ」

 美鈴は道路に出た。でも、和田君は出てこない。

 美鈴は少し戻って和田君にそっと言った。「どうしたの? 」

「ちょっと……。不味いことに……」と、和田君。

 美鈴は“もうすぐ三十みそじ”の刑事だ。男の醜さ、仕様がなさを理解している。

 和田君はつい一月ひとつき前は高校生だった若い男だ。女とキスをして膨らんだ胸に触ったら、若い男の体の一部に変調をきたしたとしても不思議ではない。変化がなかったら、それこそ変だ……。

「先に行っているから、落ち着いたら戻って来なさい」と、美鈴は小さな声で言ってちょっと微笑んだ。“私の和田君! ”


 五分程して和田君は戻ってきた。

「でも、あの男、今、何をしているのですかね? 」 和田君は美鈴の車の助手席に座ると言った。

 ちょっと無理にでも話題を変えてきた。美鈴はそれに乗ることにし車を発進した。

「テレビでも見ているのでしょ!? 」

「美鈴さんの話によると男は一人暮らし。家族はいないのですか? 」

「親、兄弟はなし。一度結婚しているけれど、十数年前に分かれている。子どももいない。それ以来、女気はなし……。週に何度か、何処か近所のおばさんに食事とか掃除に来てもらっているみたいだけれど、それだけ」

「折角、レクサスに乗っているのに天気のいい土曜日にドライブに出かけていない。何かインドアの趣味があるのですか? 」

「詳しく調べていないけれど……。と言うか、正式に重要な容疑者でない男のことを詳しくは調べられない。でも、私がちょっと調べた範囲ではこれといった趣味はないみたいよ。酒もあまり得意でなくて自宅では全然飲まない。部下と飲みに行くこともないみたい。人付き合いも好きじゃない……。映画とかクラシックが好き、なんて話もなかったわ! 」

「それでは夕方帰ってきてから、土日には何をしている? 堪らなく退屈ですよ」

「テレビしかない、でない? AVビデオとか……」

 和田君がとんでもないことを呟いた。「趣味の人殺しの次の計画を練っているとか…… 」


ヤフーブログに再投稿予定です。

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