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運命の赤い糸  作者: 頭山怛朗
17/21

私と彼はホームズとワトソン

できましたら、コメントいただけると嬉しいです……。

<14>


「林の中に小道が見えたような気がします」 和田君はそう言うと、車を降り駆け出した。

 美鈴もその後を追った。

「ありました。小道です」 和田君の姿が消えた。

 勝手に私有地に入るのは不味いかも? でも、美鈴も和田君の後を追った。

「あの明かり、あの屋敷じゃないですか? 」と、和田君が言った。

 確かに前方に窓からもれる明かりが見え、それは大津邸のものと思われた……。


「珈琲、飲むの? 飲まないの、どっち? 」と、美鈴。「はっきり、しなさい! 男でしょ」

「の、飲みます! 」と、和田君。和田君は、美鈴の勢いに少しびびっていた。

 二人はドリンクバーを頼んでいなかった。珈琲は単品で頼むしかなかった。

 美鈴がテーブルの呼び出しボタンを押し、店内にチャイムが鳴った。

「でも、その男が殺人者なら、車で現場まで行ったはずです」と、和田君が話題を変えた。

「そうだ、一回、その男の家まで行ってみませんか? 」と、和田君。

「今から? 」と、美鈴が言った。腕時計は九時をとっくに過ぎていた。

「今から、正確には珈琲を飲んだ後……」

「はい、ご注文を承ります」 例の店員だった。

「ドリンクバー、二つ……」と、美鈴が言った。

 店員が端末を操作した。「では、どうぞ! 」

「じゃ、僕、取ってきます」と、店員が二人のテーブルを離れると和田君が言って席を立った。ここは男の自分の役目だ、と思ったのだろう。

「ありがとう」と、美鈴が言った。

 美鈴の目は和田君を追った。和田君の動きは軽やかだった。“私と彼はホームズとワトソンね”と思った。

 和田君が珈琲カップを二つ持って戻ってきた。美鈴は笑って和田君を迎えた。


 和田君の車をファミレスの駐車場に置いて、美鈴の車で大津卓郎の家に向かった。

 レクサスは駐車場に止まって、窓から明かりが漏れていた。レクサスの前に視線をさえぎる物は一切なかった。

「近所の小母さんは“レクサスはずっとあった”と言っているなら、本当にレクサスはずっとここにあった。動いていないのでしょうね! 」と、助手席の和田君が言った。

「殺人現場に向かったのは、このレクサスじゃないということになります」と、和田君が続けた。

「そんなこと分かっているわ! 」と、運転席の美鈴が言った。「出かけてもいない、とお節介ばあさんが言っている……」

「今の言い方は性差別だと思うな、僕。女性が女性を差別しちゃいけない」

「いいのよ。ばあさんはばあさんで充分。私はあんな中年女にならない、絶対」

「裏がどうなっているのか見ましょう」 和田君が話題を変えた。

「えっ!? 」 美鈴が驚きの声をあげた。

「この家の裏ですよ」と、和田君が平然と言った。「表から出ていないのなら、裏から抜け出したのかも知れない……。この家の裏手に回ってみたら何か分かるかも知れません! 」

「……」 美鈴は唖然とした。美鈴はこれまで表ばかり気にしていた。美鈴の家はこの大津の屋敷の半分の大きさしかないけれど、裏口、というか勝手口がある。この大きさの屋敷なら裏口が二つくらいあっても不思議ではない。そこから抜け出し、誰に見られず……。

「杉田さん、車を出してください」と、和田君が言った。

「分かっているわ! 」 ちょっと強く言って美鈴は車を発進させた。

 最初の角まで結構距離があった。角を左折して、次の角をもう一度左折した。家が何軒か並んで建っていた後、大津の屋敷の後あたりにさしかかると、突然、左右、林になり道は林の奥に消えていた。

「これなら…… 」と、和田君。

「これなら、誰にも知られず家を抜け出すことができるかも? 」 美鈴が和田君の言葉をさえぎって叫んだ。

「ちょっと、車を止めてください」 今度は和田君が叫んだ。

 美鈴が急ブレーキをかけた。

「何よ!? 」


ヤフーブログに再投稿予定です。

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