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運命の赤い糸  作者: 頭山怛朗
15/21

女刑事と私の間に赤い糸が繋がっている

<12>



 女刑事と私の間に赤い糸が繋がっているのが見えた。


 でも、それはほんの一瞬だった。錯覚なのか?

 それとも、私とこの女警官は“運命の赤い糸”で結ばれているのか? 私とこの女警官は恋愛関係になる? 馬鹿馬鹿しい。あり得ない!!

 それに、二人は右手同士で繋がっていた……。

「すみません! 」と、三十代の男が言った。「M署の品川です。こっちは杉田」

 その声で私は現実の世界に連れ戻された。

 二人は警察手帳を提示した。

 私は思わず女刑事の顔を見入ってしまった。“あの女だ! ”

「し、失礼しました。お若い、それも綺麗な女性が刑事なんて始めてで……」と、私。「おっと、これはセクハラかな? 」

「皆さんには、何時も、そう言って頂いています」女刑事は二コリと笑い、そう言ってのけた。

 思わず私も笑った。「で、ご用件は? 」

「元M中の理科の先生、校長。それにM市の教育長だった津田四郎さんが殺された件はご存知ですね? 」

「勿論、市内、それに社内その話で持ちきりですよ。先生のM市葬の葬儀委員長は私がやることになっています」

「そうなんですか!? 」

 二人の刑事、特に女記事の顔に困惑が浮かんだ。

 私はある手段で実際に何もなかったことを確認していた。何も無かったのは幸いだった。もし、あの日、あの時間、電話や宅急便がありそれに対応できていなかったら、たとえその時間が言い当てられたとしても少々不味いことになっていた。天は人殺しの私にみかたしていてくれるのだと思った。

「実は捜査が難航していまして、お手上げ状態でした。ところが匿名の手紙が来ました。内容は“事件当日、現場で大型の乗用車「43」か「48」を見た”」と、男刑事が言った。

「私はレクサスに乗っている。ナンバーの下二桁は“48” それで、やってきた」と、私。

「ご名答」と、男刑事。

「でも残念ながら、と言うか良かったと言うか津田先生が殺された日は、一日、何処へも出かけなかった」と、私は自信たっぷりに言った。

 私は話を続けた。「ですから、車庫に私の車はありました。私もこの街ではちょっとした有名人。近所の人たちは私が何をするか注目している。ですから、近所の人に聞いてください。……。そうだ、一軒置いた右隣の澤田さんの奥さんなら、私のレクサスが一日車庫に止まっていたのを知っていると思いますよ」

「コン、コン」 ドアがノックされた。

「すみません、市長から電話ですけれど……」 秘書の顔に困惑が浮かんでいた。「津田四郎さんの市葬のことで相談したいことがあるとかで……」

「それでは失礼します」男の刑事が言った。「お騒がせしました。もう、来ることはないと思います」

「でも……」女刑事の方は、まだ話をしたそうだった。

「行くぞ! 」男刑事が急かせた。

「はい」 若い、なかなかの美人女刑事は未練を残して私の部屋を出て行った。

 市長からの電話は、津田四郎のM市葬は次に三日後の日曜日に決まったこと。場所はM市の市民ホール。細かな打ち合わせのため、明日、十時に秘書課員がこっちに来ると言うことだった。私はあの女刑事のことが気になって、市長の話を半ば上の空で聞いていた。

 それが相手が分かったようだ。「大丈夫ですか? 聞いていますか? 」と、市長は言った。

「大丈夫だ、ちょっと疲れているだけだ 」と、私は言った。

「弔辞の言葉はこっちで考える 」と、市長は言った。

「ありがとう。文章は得意じゃないし、弔辞を考えるにも最近の津田先生のことを知らなすぎる」と、私は言った。かつて、小説家を目指したがA4一枚書けずに諦めたことは言わなかった。「でも、一言、アドリブを入れさせて貰うよ」


「勿論です 」と、電話の向こうで市長が言った。「先生を送る暖かい一言をお願いします」


ヤフーブログに再投稿予定です。

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