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運命の赤い糸  作者: 頭山怛朗
14/21

なぜ、私の処に?

<11>



 津田四郎の殺人事件(「元M市教育長殺人事件」)の捜査は暗礁に乗り上げていた。


 殺人事件の現場には一切の遺留物はなく、目撃証言は老人の頼りない証言だけ。被害者がいしゃが誰かの恨みをかつて殺された可能性を、まず捜査されたが何も出てこなかった。

 息子、娘のアリバイも確認された。

 ただ、被害者自身のことを調べると意外な事が分かった。

 被害者は肺がんを患っていて“後三ヶ月の命”と医者に宣告されていた。さらに、本人も先立ったっ妻のところに早く行きたいと言っていたことも分かった。

 ひょっとして本人が誰かに“自分の殺害を依頼した? ”と捜査本部は考えたが、不自然な金の動きは全くなかった。

 次に“通り魔殺人”が疑われた。L町付近の防犯カメラの映像が集めようとしたが、L町付近にはコンビニもなく役立ちそうな防犯カメラ映像はなかった。


 そんなある日、捜査本部に一通の手紙が送られてきた。

「4月×日の午後、L町で“3”ナンバーの車を見た。ナンバーの下2桁は“43”か“48”だった」

 ただ、不思議なことに差出人の名前はなく、さらにあて先(元M市教育長殺人事件 捜査本部)も便箋の字もプリンターで打ち出されたものだった。指紋も一切なかった。切手の裏からも唾(DNA)を検出できなかった。

 差出人は自分が特定されるのをよほど嫌ったのだ。


 捜査会議……。

 はたしてこの情報は信用できるのか?

 何故、手紙の差出人はそれほど自分が特定されるのを嫌ったのか?

 素人は封筒や便箋に指紋が付かないように注意しておきながら、切手の裏をうっかり舐めるというドジを踏んだりするがそんなドジも踏んでいない。

 単に警察に事情調査されるのを嫌っただけか? 裁判に出て証言させられるのを嫌ったのか? あるいはあの日、あの時間、あの場所にいたことを知られると都合の悪い理由があったのか?

「あて先がM警察署でなく“元M市教育長殺人事件 捜査本部”となっていたことも不思議だ」と、M署の品川刑事が言った。「市民はこの名前で殺人事件の捜査本部が出来ていることを知らない。この差出人、素人でないかも? 警察関係者かも? 」

“パタン”と音がした。みんな、音がした方を見た。美鈴が資料を床に落としたのだった。

「すみません! 」 美鈴が顔を真っ赤にして小さな声で謝った。

「残念ながら捜査は行き詰っている。ガセかもしれないが、一度、この情報に従って調べてみよう。ダメで元々です」M署の福田刑事課長は言った。

 誰もその意見に異義を挿まなかった。


「取締役、M署の刑事さんがお話を聞きたいと来られたのですけれど……」秘書が私の部屋に入ってきて、困惑しながら言った。

“ついに来たか? ”と、私は思った。“でも、どうして私にたどりついたのだろう? ”

「先日、ドライブした時、山の中で立小便したのがばれたのかな? 」と、私は冗談を言った。秘書は微かに笑った。

「おっと、これはセクハラかな? 」

「お通ししていいですか? 」と、気心を知り合っている秘書は私のくだらない質問、あるいは冗談を無視して言った。

「そうしてくれ」

 秘書が私の部屋を出て行き、すぐに二人の男女が入ってきた。

 男は三十歳半ば、女は三十前の美人。数日前、私の家を窺っていた女だ。やはり、この女警官は私の家を窺っていたのだ。


 でも、この女警官はどうして私にたどり着いたのだろう?


ヤフーブログに再投稿予定です。

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