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運命の赤い糸  作者: 頭山怛朗
11/21

殺人事件発生!

<8>



 L亭の女将は自転車を降りると、回覧板を持ってお隣さんの津田四郎邸への庭への石段を登った。

 庭に上がり二・三歩歩いたところで女将の足が止まり、悲鳴を上げた。

 そこにお隣さんが倒れていた。

 素人目のも明らかだった。それはピクリともしなかった。それは素人目にも死体なのは明らかだった。



 美鈴と和田君が食事を終え美鈴の車に乗ろうとしたとき、美鈴のスマホが鳴った。

 と、同時に美鈴の右手と誰かが赤い糸で繋がった。

 スマホが同じ刑事課の品川からの電話だと表示していた。

「はい、杉内です。事件ですか? 」

「そうだ。事件、それも殺人だ。すぐに署に向かってくれ。おれも今から署に行く。ところで、会計課の新人君も一緒か? 」

「はい」

「それなら、新人君と一緒に署に向かってくれ」

「和田君も? 」

「そうだ、和田君も、だ。被害者がいしゃは“津田四郎”さんだ」

「津田四郎。……。中学校長に市の教育長? 」

「そうだ、元校長に元の教育長だ。健康上の問題を理由に教育長を半年前に辞めている。今度の事件は世間の注目を浴びる大事件だ。マスコミも騒ぐだろう。署内の交通整理が必要になる。それで、会計課の新人君も頼むと言うことだ」

「はい、分かりました」

 美鈴はスマホを切り、和田君に言った。「お引越しは中止よ」

「何かあったんですか? 」と、和田君。

「殺人事件よ。私は殺人現場、和田君は署内で対応よ」

 それにしても右手の赤い糸の先には誰がいるのだろう? 


 美鈴は不謹慎だけれど少しほっとした。これで、料理が何も出来ないことが和田君にばれなくてすんだ。

 美鈴は車の中で被害者がいしゃのことを知りうる範囲で説明した。

 津田四郎。元中学校の理科の先生。教頭・校長を勤めた後、市の教育長をした。美鈴は知らなかったが、“健康上の問題”で半年前に教育長を辞めた。街には津田四郎の教わった人々が大勢いる。つまり“街の名士”だ。マスコミの関心も高い筈だ。市民の関心も高い。

 大勢のマスコミも押しかけてくるだろう。




 現場はM市L町。幹線から外れM市でも最も山間にある集落で、集落をG市に抜ける県道が通っているが、道幅が狭く峠にはトンネル、G市側の道が曲がりくねっているためあまり利用者がいない。その上、被害者の家は集落から少し離れた一番上に建っていた。偶然、第一発見者は土曜のその時間回覧板を持って被疑者宅を訪れたけれど、そうでなかったら火曜に家政婦によって発見されまで被害者の死体は放置されていたはずだ。

 殺人者は、そこまで計算して“殺人”を行ったんだろうか?

 被害者の死因は首を絞められたための窒息死。首に手で閉められたと思われる後があった。ただし、殺人者は手袋をしていたのだろう、首を絞めた指の後が角ばっていた。足跡もその他遺留品もない。目撃者もいない。ただ、昼過ぎに(死亡推定に合致していた)見慣れない車が一台、県道を上がっていったという目撃者はいたが頼りないものだった。

「軽トラではなかった」と、日向ぼっこしていた八十過ぎの男は美鈴に言った。

「その車は降りてこなかった。トンネルを抜けたのだろう」と、老人は度の強い老眼鏡越しに言った。

「ただ、おれもずっとここにいたわけではない。小便に何度か行った。年取ると近くなって困る……。今は若いあんたもそのうちおれの気持ちが解るようになる」


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