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俺はお前たちを許さない

作者: 毛狩り隊

男の娘とか、男勝りとかは普通に好きですけど、本人が嫌だと言っているのに周りが洗脳のごとく言っていたり、選択肢を潰すのはムカツクし虫唾が走りますよね。

 「ごめんなさい。生まれてきてごめんなさい。女の子じゃなくて、男の子として生まれてきた僕を許してください。女の子の服を着るのを嫌がって、かっこいい服が欲しいと我儘を言ってごめんなさい。可愛いと言われることがとても嫌なんだと思ってしまってすみませんでした。僕はとても親不孝者です。僕が男として生まれてきたばっかりに、あなたたちを不幸にさせてしまいました。

 ごめんなさい。女の子として生きていけなくなって、男としても生きていけなくなって、辛くて、苦しくて、僕は逃げることにしました」


 この手紙を書いて死んだ俺の友人は、いわゆる男の娘と言われてしまう部類の容姿を持っていた。

 彼は男として自覚を持っていた。男を好きになるのではなく、女を好きになる、れっきとした男だった。

 しかし、周りはそれを許さなかった。

 小さいころから母親に女ものの服を着せられ、妹が生まれてからもそれは治ることはなく、彼の「性」は親によって否定され続けた。

 それは死ぬ直前まで続いた。

 俺は何度も訴えた。押しつぶされてしまう彼の代わりに、母親に、父親に、妹に、彼を放してやってくれと頼み込んだ。それを鼻で笑い、彼の意志でこうしているのだと言ったのは、彼を守るべき家族だった。

 高校に入り、バイトをし、親に土下座して金をひねり出して彼をその家から遠ざけようとした矢先だった。


 彼が死んだ。


 小、中、高と親や周りの奴らに男なのに女だと、女として生まれてきていたらな等と言われ続けた彼の心はもう、救いようのないほどに壊れてしまっていたのだった。

 彼の葬式で、彼の親は彼が死に、その遺書を読んでも尚「彼」を否定しつづけた。

 俺は我が目を疑った。彼の衣装は男の物ではなく、女のものだったからだ。

 彼の家族は、あの遺書を、自分たちの都合のいいように解釈したようだった。


 その時の俺は、自分で言うのもなんだが恐ろしい鬼のような形相をしていたのだろう。

 彼の家族に向かってありとあらゆる呪詛を投げつけたお前はとても怖かった、とその時出席していた自分の親に言われた。

 もちろん後悔も反省もしていない。それをすべきなのは彼の家族であって俺ではないのだから。

 俺の言葉を聞いてなお、彼の家族は「女装することが彼の意志だったんだ」と喚き散らした。

 選択肢を潰し、それ以外を選ばせなかったくせにそれを彼の意志だと言ったことに腹が立った。

 

 俺はお前たちを許さない。


 そんなに彼を否定するならお前たちも否定してやる。死ぬなんて許さない、生き地獄を見せてやる。

 

 俺はお前たちを許さない。


 家族だけじゃない。彼に押し付けをした者はすべからく罰を受けるべきだ。

 

 俺は彼を否定した者すべてを否定し、彼を肯定し続けよう。

 彼と同じような待遇の人間に救いの手を差し伸べよう。

 それが、助けることができなかった彼への祈りであり贖罪であると信じて。


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