6話:高等部、一年教室で。(2)
「よし、じゃあ今日は帰りに下ムラなっ!」
「オレも部活休んで行こうかな、実は前から気になってるパンツがあるんだよ!」
「……ん?」
教室中が下ムラ談議に花を咲かせる中、一人だけお通夜ムードの男がいた。
……山下和斗だ。
「……」
目が合っても不自然に逸らす山下。
普段はクラスのムードメーカーである山下は、怯えた表情でその身を窓際のカーテンに隠している。
そういえばコイツ、着替えの時はいつもこうしてコソコソしてるな。
実は恥ずかしがりやなんだろうか……。
「山下?」
「お……おう、橘か……」
「お前、なんでいつもカーテンに隠れて着替えてるんだ?」
「いや、その……ちょ、ちょっと恥ずかしくて……な」
「今さら何を恥ずかしがってるんだ。ほら、お前の個性を見せてみろ」
「ちょ、まっ……!」
ガバっと、カーテンをめくってやった。
不意打ち気味の行動に、山下の抵抗もなかった。
「んなっ――――――!」
そして僕が目にしたもの……。
――それはそれは、まるで想像だにしなかった光景だった。
「山下……お前……まさか……」
「橘っ!」
瞬時にカーテンを僕の手からひったくり、再びカーテンに下半身を隠す山下。
しばらくして着替えが済んで、山下はふくれっ面で慌てた様子のままでまくし立てた。
「橘! 今見たことは忘れてくれ! ……いや、忘れなくとも、誰にも言わないでくれ……! 仕方なく、これは仕方なくなんだよ!」
僕は黙ってコクコクと頷いた。
とても忘れられるようなものではなかった。
だから、絶対誰にも言わないという意思を込めて頷いた。
……山下が穿いていたもの。それは、
腰回りを紐で括り、
前方の布を股を通して後部に伸ばし、
もちろん尻は丸出しの……。
――真っ赤な六尺褌、そのものだった。
「や……山下……お前、漢だな……」
「くぅ……できることならお前にだけは見られたくなかったぜ……」
「何を恥じるんだよ。そうして和の伝統を受け継ぐお前は、まさしく日本男児だ!」
「だぁぁっ! だから叫ぶな! 静かにしろ!」
僕はしばらく、モジモジする山下の褌から目を離せずにいるのだった。




