表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/21

2話:ダイニングで。



 (さげす)みと哀れみの視線飛び交う第82回家族会議、その翌朝。

 スズメのさえずりが聞こえる爽やかな月曜日。学園での新たな一週間がこの日からまた始まる。


「ふへーい。おはよ~」


「おう、みちる。おは……て、おいおい」


 朝食を済ませ登園準備をしつつ、そろそろ起こしに行こうか……というところで、当の眠り姫のご登場だ。

 ただ、その様子は可憐なお姫様とはほど遠い。朝の光に惑う、行き場を失いさまよう死者のそれだった。


 ちんまい体を包みこむパジャマは“凱旋”という二文字を連想させるほどにヨレヨレ。

 いつもは大人しい黒髪の頭は、これでもかと言わんばかりにアホ毛のオンパレード。


「どうしたみちる? なんでそんなゲッソリしてるんだ?」


「ふへーい、兄さまー。わたしは睡眠不足なのです-。一睡もできなかったのですー」


「たしかに頬はやせこけ、頭は苔むし、昨日の夕飯は茶碗むしだったが……」


「朝っぱらからしょーもない韻踏まないでください。そして苔生してませんー」


「……ツッコむ気力は残っているようだな。ところで、何か眠れない事情でもあったのか? 期限が今日までの宿題を忘れてたとか、先日忘れた宿題の罰として出された課題をし忘れていたとか、それとも夜中になって宿題を忘れるというテーマについて思い悩んで……」


「兄さまの中でわたしどんだけ宿題忘れてるんですかー。わたしは宿題忘れたことありませんし、成績も結構やんごとないですー」


「やんごとないのか。じゃあ、なんで寝不足なんだ?」


「昨晩、兄さまのナンバー3を入手しそこねたので……」


「あの白黒か。……ん? それが眠れない理由とどう関係が?」


「悔しさのあまり一睡もできなかったのです」


「……。それほどまであの縞々に固執してたのか」


「未練たらたらです。そして夢の中で、それはそれはおぞましい声で語りかけてくるのです」


「何が?」


「何がって、今の流れでおわかりでしょう?」


「…………縞々が、か」


「そうです。わたしを被れ~、置いてくな~って……。ヤバイでしょう?」


「ヤバイな。色々ヤバイが、一睡もできてないはずなのに夢を見るってところがまじヤバイ」


「なので昨日は八時間しか眠れませんでしたー」


「兄以上に寝とるやんけ!」


「アンタら何やってんのよ。さっさっと学園行ってきなさい」


 ズビシッ、とツッコんだところで母親からの一声。

 もうそんな時間だったのか。


「ふぅ、兄さま……茶番は終わりにしましょうや」


「どっちかっつうと僕被害者ぁー」


 そうして僕たちはそろって学園に向かう準備を始めた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ