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エピソード6 未知の世界

Episode6

登場人物

加地 伊織:主人公

館野 涼子:伊織の付き添い

イアン シェパード:武術教室の友達

キース: イアンのシステマのコーチ

レイチェル:イアンの憧れの人 でも中二病


ハンバーガー屋のテーブルに涼子と二人で座っていた。

涼子は二杯目のヨーグルト味シェイクをストローの先ですくっている。

伊織のコーラはとっくの昔の氷だけが、既に半分以上溶けて水になっていた。


伊織:「遅いなぁ。」


この日は、イアンの友達がイギリスからわざわざ秋葉原に買い物に来ると言うので伊織も同行する事になった。 ここん処のいつも通り、涼子も一緒である。 


イアンの友人が調達した巨大で厳ついSUVに乗り、開店前から着く勢いで秋葉原に出陣してきたのだが…11時を過ぎた所で伊織がリタイヤ。 歩き疲れたと言うよりは、人酔いしたみたい。 涼子は付き添いで共に休憩中…という状況である。


預かった荷物が隣の席に山の様に積んであった。


箱入りのフィギュアやアダルトゲーム、18禁の同人誌も有れば何だかコスプレ用の衣装まで、此処だけで小さなフリマが開けそうだ。


伊織:「BL本って、つまりこういう物だったのね…」


伊織、ぽつりとつぶやく。

そこへ、又大量の紙袋を下げた三人組が戻って来た。


イアン:「お待たせ、イオリ。」


一人はイアン。 金髪の美少年で、背は180cm位だろうか、まるでハリウッド映画に出てくる二枚目俳優の様である。 マッチョとは言えないがしっかり筋肉のついたガタイに襟を立てた黒のポロシャツとシンプルなボトムスという出立ちだった。 まあ、イケメンは何を着ていても似合うのだろう。


二人目もやはり相当のイケメン、身長はイアンよりも更に高く190cm以上はあるかも? 殆ど坊主頭に刈り上げた金髪にしっかりあごの張った端正な顔立ち、かなりマッチョなガタイはボディビルダー程ではないが軍人か格闘家みたい。 それも見せかけではなく実際の格闘技の腕も相当の物らしい。 彼はイアンのシステマのコーチでもある。 ラフにアロハと七部丈のチノを着こなしている。 名前をキースと言う。


こんな二人が大量の秋葉原の紙袋を下げてウロウロしている姿は一寸微笑ましかった。


最後の一人もやはりイギリス人で、金髪の女性。 身長は160cmくらいだろうか。 決して太っていると言う訳ではないが、下半身が多少ぽっちゃりしている。 …勿論、伊織も人の事を言える体型ではないのだが。


それなりに彫りのある西洋人独特の顔立ちで、目を見張るほどの美女と言う訳ではないが、決して不細工ではない。 …勿論、イオリも人の事を言える容姿では無いのだが。 


名前はレイチェルと言う。 

因にレイチェルはイアンの憧れの女性だった。 一寸不釣り合いな様な気もするが、…蓼喰ふ虫も好きずき…という奴だろう。



伊織:「又、沢山買い込みましたね。」

レイチェル:「何を言う、まだ半分だぞ。」


見ると…いつの間にかレイチェルは、何処で着替えたのかメイド服姿、

しかも右目に眼帯? 何故? 急に? さっきまで何ともなかったのに…?


伊織:「目、どうかしたんですか?」


レイチェルがにやりと薄ら笑いを浮かべる。


レイチェル:「貴方…とうとう、触れてはならないモノに触れてしまいましたね。 もう、どうなっても責任はとれません事よ!」

伊織:「いや、目がどうかしたのかなって聞いただけで…」


伊織:一体何のキャラ設定なんだ??


イアン:「レイチェルって愉快な人だよね。」


伊織:イアンって、こういう女が好みなのか…?



イアン:「なんだか、秋葉原って凄いよね。 メッカって感じ。」

レイチェル:「イアン、ご存知かしら、…秋葉原には様々な伝説があるのよ。」


伊織:ああ、きっとそれって都市伝説だね…


いつの間にか、ハンバーガー屋の周りは野次馬が集まり始めていた。 映画俳優の様な外人二人組が居るものだから、何かのロケか何かと勘違いしたらしい。 流石に迷惑かけている感じで気が引けて来る。


伊織:「この後、どうするんですか?」


レイチェル:「私とイアンはもう一度「T」と「M」に行って、さっき大人買いした商品を引き取ってきます。」


伊織:秋葉原で大人買いって、一体…この人何者?


レイチェル:「キース、貴方はとりあえずこれ迄に買った品物を車に積み込んでおいて下さい。」

キース:「了解、マム!」


レイチェル:「その後、萌えーな執事喫茶でいろんな体験をします。 …30分後にこの店に集合です。」


レイチェルがチラシを配る。


伊織:「いきなり行って入れるのかな?」

イアン:「ああ、さっき立ち寄った時に予約を入れておいたから大丈夫。」


どうせなら、メイド喫茶というモノに行ってみたかった気もするが、まあ、座れれば何でも良いか。


イアン:「イオリは何も買い物をしないのか?」


そうは言っても、涼子がずっとくっ付いて歩いてるので やたらな物は買えない…と言うのが正直な所だった。


伊織:「そうだな、せっかく秋葉原に来たんだし、…記念に何かオタクっぽい物を買って行こうかな…。」


ちらりと涼子の方を見る。 相変わらず表情に変化は無い。


伊織:「あくまでも記念ね、」


レイチェル:「それでは、早速行きますわよ。 キース後ほど、現地で集合ですわ。」



二軒並んだ7階建ての店に到着、


レイチェル:「イアン、私はB館をもう一度チェックしてきます。 貴方は先ほど頼んでいた商品を受けとって下さい。」

イアン:「了解です。」


レイチェルがあっという間にすっ飛んで行く。



伊織:「ちょっと、物は試しで見て行ってみるか。」


涼子が無表情で頷く


2階までは、普通の本屋でも見かけるような漫画や雑誌、

3階にあがると、所謂「同人誌」であふれかえっていた。



伊織:「凄いな、…これ、皆 素人が描いたんだ、」


見本誌と張られた本を手に取ってぱらっとめくってみる。


伊織:「絵、上手いな。」


オリジナル作品のキャラクター達が、様々な作者達の世界観で独自の物語を展開して行く。 それは、今迄知らなかった友人の一面や、生の生活を垣間みる様で、思いの外刺激的な作業だった。


伊織:「結構、面白そうだな。」


一方、涼子は、何やら挙動不審にあちこちの棚をチラチラ検索している。


伊織:「まだ上にもフロアが有るんだ。」



そこは、鼻の奥から耳たぶ迄熱くなりそうな「ゾーン」だった。

一種独特のオーラというか、バリアというか、こういう物にまだ免疫が無い伊織にとっては、入って行くだけでも少々のポイントを消費する。


伊織:「こ、これは…」


TVで見た事のあるアニメのキャラクターが、あんな事や…こんな事や、…兎に角とんでもない状態になっていた。


ちらりと涼子を見る。 滅多な事で表情を変えない涼子が珍しくヒキツッテいた。


伊織も今迄にこういうエッチな漫画を見た事が無い…というと嘘になるが、


伊織:これは、…凄い。


ちらりと案内板を見る。 


伊織:5階から上は…は18禁なんだ。 …いやあ、やっぱり駄目だろう。


涼子は…


既に見本誌を手に取っている?!


伊織:おい! お前はもっと駄目だろう!!


そう言いつつも、伊織の視線は自然と陳列された肌色満載の表紙の上を泳ぐ。

幼馴染み? 綺麗なお姉さん?? 女教師??? 妹???? ゴスロリ?????


伊織:ゴスロリ…、


何故だか、異様に喉が渇く。 震える手で、見本誌に手を伸ばす。 

生唾を飲み込む…なんて経験をした事は無いのだが、きっと今がそんな感じ、



伊織:これは…


突然! 誰かがTシャツを引っ張った!!

心臓が止まるかと思った…。


見ると、涼子が「妹×SM本」を伊織に差し出して来ている。

顔が赤い。 目がまん丸になってる。 何故だか鼻息が荒い。


伊織:いや、一体、…俺にこれをどうしろと…。



店員:「お客様…」


突然! 店員からの声かけ!!

心臓が止まるかと思った…。


店員:「5階から上は成年向けのフロアとなっておりますので、妹さんを連れての立ち入りは、ご遠慮願えますでしょうか…。」


伊織:そうですよね。 そうですよね!


涼子の手を引いてそそくさと下の階へ。 …顔が熱い。



1階でイレイチェルとイアンが待っていた。


イアン:「良い本は見つかったのかい?」

伊織:「うっ、いや…ちょっと、」


伊織:何だか、知らない世界を垣間みた気がした。


レイチェル:「じゃあ、いざ。執事喫茶に出陣じゃ!」



中略


執事喫茶とは言う物の、限りなく普通の喫茶店だった。 時々、執事の格好をした「俺様キャラ」がご用聞きにやって来る。 その度にレイチェルが「全部乗せ」を注文して何故だか局地的に盛り上がっていた。


伊織:「なあ、イアン、お前に会いたいって言う女の子が居るんだけど、会ってみる?」


イアン:「この間プールで会った、イオリのガールフレンドですか?」

伊織:「いや、別の人、何だか、イアンに一目惚れしたんだって。」


イアン、少し思案する…。


イアン:「イオリも一緒に来てくれますか。 一人で会うのはちょっと深刻です。」




その後もなんだかんだ振り回されて、結局部屋にたどり着いたのは23時を過ぎた頃だった。


伊織:「疲れた…。」


結局何も買えなかったのだが、代わりに? レイチェルが「お近づきの印」と言って大人買いした戦利品の中から紙袋を一つくれた。 早速開けてみる。


伊織:「これって!」


自分の目を疑う…。


伊織:「あの女、…本気の邪気眼! …なのか?」


それは、昼間立ち読み損ねたゴスロリ本だった。


途端に胸の鼓動が早まる。 ほっぺたが熱く引き攣る…。 再び震える手で表紙に手をかける。 …今日二回目の生唾を飲み込む。



突然! 携帯の着信音!!

心臓が止まるかと思った…。


詩織:「今晩わ、東雲です。」

伊織:「あっ、今晩わ…。」


詩織:「あの、イアンさん、どうでしたか?」

伊織:「ああ、大丈夫みたいですよ。 ただ、二人きりで会うのはちょっと緊張するみたいで、最初はグループで会うのが良いって言ってます。」


詩織:「本当! 良かった。 きっと冴子も喜びます。」

詩織:「ああっ、それじゃあ、恋のキューピットって事で、加地さんと私も入れて、4人で会うって言うのはどうですか?」


何だかやけに楽しそう。



詩織:「処で、私の名前と加地さんの名前って、一文字しか違わないって、知ってました?」


結局40分近くとりとめも無い雑談…。


詩織:「それじゃあ、楽しみにしてますね。 …おやすみなさい。」

伊織:「おやすみなさい。」


伊織:確か、結構可愛い子だったよな…。

正直、あまり良く覚えていなかったのだが、今聞いた声は確かに可愛かった。




伊織:「さてと…」


ようやく、一人きりの時間に戻り…。

万全の体勢を整えて、いよいよ未知の世界の表紙を開く。

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