表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな妖精スフレ、魔法使いの家でやらかしてます 〜彼といっしょの、ちいさな毎日〜  作者: 久寿 たまや


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/8

04. 彼を想って水浴びして、少しだけ近づけたはなし

毎回一話完結の掌編シリーズ。妖精スフレと魔法使いレイジの、少し甘い日常のひとコマです。

※挿絵は、AIイラストです。(使用ツール:ChatGPT Image Generation)

挿絵(By みてみん)

(挿絵: 泡をとばして遊ぶスフレ(使用ツール:ChatGPT Image Generation))


◆◇◆◇


 水浴び、それは乙女の秘密。


 ……なーんて。言うほど特別なことはないけど。

 今日はちょっとだけ、いつもとは違うひみつ。



 レイジのいない隙、それを見計らい。

 キッチンのカップに水を溜め、小さな布巾を浸す。

 レイジの部屋にあった小さな鏡、それも拝借して立てかけてる。



 身体を拭くための準備だった。



 時刻は、まだ朝の時間。

 ヒトは寝る前とか夜にするらしいけど。

 あたしは別に時間を決めてない。


 頻度も、ヒトあるいは妖精によりけり。

 どっちが多いとか、種族の差も特に感じない。


 ただ、臭うのが嫌だから毎日やってるあたしは、ちょっと過剰かもしれない。



 魔法銀の服を解いて横に置き。

 濡れた布巾を絞って、身体に当てる。


 髪は濡れると邪魔だから。

 くるくると上に巻いて、リボンで結んだ。



 どっから拭くか、なんて決めたりしてないけど。

 あたしはたいてい、翅から。


 軽く撫でるように、布を滑らせる。

 ごしごしと強く擦ったところで、翅自体には痛いとか感触は無いけど。


 半透明なこれは、もともとあんまり汚れてるようには見えないし、目立つとこだから痛んだらなんか嫌だものね。



 鏡があれば、直接見えないとこも確認できて便利。

 裏や背中の生え際まで、丁寧に汚れを落としてく。



 気にしなくたって、わからないかもだけど。

 ……見せるヒト(レイジ)が居るから、手は抜き辛いよね。



 布を絞って綺麗にし、身体の方も拭いていく。

 女の子の凹凸って、実はけっこう面倒で……。


 全体を軽く拭きつつ思う、いつもの愚痴。




 けど今日は、少し違う。


 鏡と一緒に持ってきた小さな四角い塊。

 それは、村で買ってもらった石鹸。


 ――これが、特別のひみつ。



 しかも……花の香りがついてるちょっと高めの。

 息をすっと吸って、その香りを楽しむ。



 買ってもらったことと、香りに身を染める期待と。

 ひょっとしたら気づいてくれるかも、なんて思うと……。くすぐったい。



 石鹸と一緒に、布巾を水に浸して擦る。



 わぁ、あわあわ……。



 生み出した虹のあぶくを見ながら、泡ごと身体に布を当てる。

 初めは胸の下とか脇とか、そういう見えないけどちょっと気になるところ。



 泡によって、布は身体の上を軽く滑ってく。


 痛くなる感じがないし、ベタつきも取れるし、何より香りがいいのがいいなぁ。



 ふんふん、と鼻歌を歌いながら、ごしごしと身体を擦っていく。



 全身が泡と、それから香りに包まれる。



 なんか……いつもより、楽しい。


 石鹸を使うだけで、ちょっと仕事めいていた身体拭きが遊びみたいになる。



 楽しくなってきたのでリボンも髪も解いて、そっちも洗ってしまう。

 確か、髪も洗えると言ってた気がするし。



 長い髪に石鹸を使えば、もうあたしは完全に泡の塊。

 ぴくぴくと翅を動かすと、生まれた泡が宙に舞う。



 いつもなら、濡れたらべたっとまとわりつくだけの髪も。匂いと泡を纏った今だけは気にならない。



 ぺたぺたと少し歩いて、くるっと回る。

 長い髪が振り回されて、少し泡が飛んだ。



 滑った足元を翅が支える。

 その翅の動きもまた、泡になる。



 あぁ、とっても楽しい。


 無意味にくるくる回ったり、身体を動かしたり、泡を集めて飛ばしたり。


 香りに包まれたまま存分に、心のままに振舞って。

 あたしに咲いてる輝く丸い泡の花、それを宙に浮かせて遊んだ。



◆◇◆◇



 ――そして……


「レイジー!

今日のあたし、どうかな?」



 わざわざ彼の頭の周りを2周まわってから、顔の真ん前に浮かぶ。



 いつもよりちょっとだけ、彼に近い。


 気づいてくれる?

 そうだったら、もちろん素直に嬉しい。



 ……でもね。気づかれなくても。

 今日は、距離を埋められる理由が味方。



 そっちの方が、重要かもしれない。

 纏った花の香りに、無いはずの蜜を感じる。



 彼の視線をわざと横切って、肩に留まる。

 そこで目を閉じれば、感じる、彼の息遣い。



 いつもよりほんの少しだけ距離を詰める。

 振り向かれたら、もう頬が――。


 ……だから、あたしは少し背筋を伸ばし。

 想いを迎えにいく為に、そっと身体を傾かせた。



 ――ふわり解いた髪が触れてしまいますように。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ