9. 文化祭、極秘護衛任務
文化祭が目前に迫り、学校は準備で大きく盛り上がっていた。しかしその裏では、生徒会に新しい問題が持ち込まれていた。文化祭の日に外部の人物が学校へ入り込み、トラブルを起こす可能性があるという情報だ。秘密組織である生徒会は、この問題を表に出さず解決しなければならない。そして蒼は、凛と共に重要な任務を任されることになる。
文化祭の前日。
学校はいつもより騒がしかった。
廊下には飾り付け。
教室では準備。
どこもお祭りみたいな空気だ。
でも生徒会室の空気は違った。
静かだった。
凛はモニターを見ている。
黒瀬が机の上に資料を置いた。
「情報が入った」
僕は顔を上げる。
「何ですか?」
黒瀬は言う。
「文化祭の日に外部の人間が来る」
「外部?」
凛が説明する。
「去年問題を起こした連中」
「文化祭に紛れて侵入する可能性」
僕は驚いた。
「そんなことあるんですか」
凛は冷静だった。
「ある」
そして言う。
「だから任務」
黒瀬は地図を出した。
校内の配置図だ。
「侵入ポイントは三つ」
「正門、裏門、体育館側」
僕は聞く。
「僕は何を?」
凛は即答した。
「護衛」
「誰の?」
凛は少し黙った。
そして言う。
「私」
僕は一瞬固まった。
「え?」
黒瀬が笑う。
「会長は文化祭の中心人物だからね」
確かにそうだ。
生徒会長は挨拶もあるし、行事にも参加する。
つまり目立つ。
凛は腕を組む。
「万が一のため」
「あなたが近くにいなさい」
僕は驚いた。
「僕でいいんですか?」
凛は少し目をそらす。
「……雑用係だから」
黒瀬が小さく笑った。
その翌日。
文化祭当日。
学校は人でいっぱいだった。
他校の生徒。
保護者。
卒業生。
とにかく人が多い。
僕は凛の後ろを歩く。
「すごい人ですね」
「当然」
凛は落ち着いている。
でも僕は緊張していた。
周りに怪しい人がいないか気になる。
そのとき。
女子生徒が声をかけてきた。
「会長!」
凛はすぐ笑顔になる。
「楽しんでください」
完璧な対応だ。
その様子を見ながら僕は思った。
やっぱりこの人すごい。
しばらく歩く。
そのときだった。
僕は気づいた。
少し離れた場所にいる男。
制服じゃない。
しかもこっちを見ている。
「会長」
僕は小さく言う。
凛は歩きながら答える。
「何」
「三時方向」
凛はちらっと見る。
すぐ理解した。
「移動」
僕たちは人混みを抜ける。
男は少し遅れて動いた。
やっぱり追ってきている。
凛が小さく言う。
「確認する」
「蒼」
「はい」
「離れるな」
僕はうなずく。
体育館裏の通路へ入る。
人が少ない。
男も入ってきた。
その瞬間。
凛が振り向いた。
「止まりなさい」
男は驚く。
逃げようとする。
しかし凛はすぐ動いた。
一歩踏み込み、腕を掴む。
完全に動きを止めた。
「ここは学校」
凛の声は冷たい。
「目的は?」
男は焦った顔をしていた。
結局、ただの迷い込んだ他校生だった。
騒ぎにはならなかった。
僕は安心して息を吐く。
「びっくりしました」
凛は腕を離した。
「任務終了」
僕は笑う。
「でも会長」
「何」
「さっき僕を頼りましたよね」
凛は少し黙る。
そして言う。
「任務だから」
でもその声は、少しだけ優しかった。
第9話では文化祭という大きなイベントの中で、生徒会の極秘任務が描かれました。蒼と凛の連携も少しずつ良くなってきています。二人の距離は確実に近づいていますが、まだどちらも素直になれていません。次回は、黒瀬が仕掛けたある「作戦」が二人の関係を大きく動かします。




