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会長は僕にだけ刺々しい  作者: たむ


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8/12

8. 会長の弱音を見た夜

恋愛相談任務をきっかけに、蒼と凛の関係には少しずつ変化が生まれていた。しかし凛は相変わらず強気で、弱さを見せることはない。学校では完璧な生徒会長として知られている彼女だが、その裏では多くの責任を一人で背負っていた。ある夜、蒼は偶然、誰も知らない凛の本当の姿を目撃することになる。

その日は生徒会の仕事が多かった。


文化祭の準備。

校内トラブルの報告。

掲示板の管理。


気づけば外はもう暗い。


僕は生徒会室で書類を整理していた。


時計を見る。


午後八時。


「遅くなりましたね」


僕が言うと、黒瀬は椅子の背にもたれた。


「忙しい時期だからね」


凛は机でパソコンを見ている。


相変わらず集中している。


黒瀬は立ち上がった。


「僕はそろそろ帰るよ」


「お疲れ様です」


僕が言う。


黒瀬はドアの前で振り向いた。


「蒼くん」


「はい?」


「会長、無理しがちだから」


小さく言う。


「見ててあげて」


僕は少し驚いた。


黒瀬は笑って帰っていった。


生徒会室に静けさが戻る。


僕は凛を見る。


まだ仕事している。


「会長」


「何」


「もう帰らないんですか?」


凛は画面を見たまま答える。


「まだ」


「でも遅いですよ」


「任務」


いつもの言葉だ。


それから三十分。


僕は書類を整理し終わった。


凛はまだ仕事している。


僕は少し心配になった。


「会長」


「何」


「休んだ方がいいですよ」


凛は手を止めた。


少しだけため息をつく。


「あなた」


「はい」


「いつからそんなこと言うようになったの」


「前からです」


凛は僕を見る。


そして小さく笑った。


珍しい。


でもその瞬間だった。


凛の表情が少しだけ崩れた。


ほんの一瞬。


疲れた顔。


僕は思わず言った。


「会長、疲れてますよね」


凛はすぐ目をそらした。


「……別に」


「でも」


凛は静かに言う。


「生徒会長だから」


その声は少しだけ弱かった。


僕は何も言えなくなる。


凛は机の上の書類を見る。


「この学校の問題は多い」


「責任は私」


「だから止まれない」


僕は初めて知った。


この人は――


ずっと一人で背負っていたんだ。


そのときだった。


凛の手が少し震えた。


僕は驚く。


「会長?」


凛はすぐ手を引っ込める。


「見るな」


「でも」


凛は少し黙った。


そして小さく言った。


「……たまに」


「え?」


「疲れるだけ」


それは弱音だった。


いつも強い凛の。


僕はゆっくり言った。


「じゃあ今日は終わりにしましょう」


凛は僕を見る。


「まだ仕事が」


「明日でもできます」


凛は少し黙った。


そして言った。


「……命令?」


僕は笑う。


「お願いです」


凛はしばらく考えた。


やがて立ち上がる。


「……帰る」


僕はほっとした。


二人で学校を出る。


夜の空気は涼しい。


しばらく無言で歩く。


そのとき凛が言った。


「雑用係」


「はい」


「今日のこと」


「はい」


「誰にも言うな」


僕はうなずく。


「言いません」


凛は少しだけ安心した顔をした。


そして小さく言う。


「……ありがとう」


その声は、いつもの会長の声じゃなかった。

第8話では凛の弱さが初めて描かれました。完璧に見える彼女も、一人で多くの責任を背負っています。そしてその姿を蒼が初めて理解する回でもあります。二人の距離は確実に近づき始めています。次回は文化祭が近づき、生徒会の任務も大きく動き始めます。

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