7. 嫉妬という名の取り締まり
副会長・黒瀬の提案によって始まった「恋愛相談任務」。最初は冗談のような話だったが、意外にも相談希望者が現れることになる。蒼は困りながらも相談役を任されることになった。しかし、その様子を見ている生徒会長・白崎凛の機嫌はなぜか悪くなっていく。任務のはずなのに、どこか空気が不穏だった。
恋愛相談任務が始まったのは、その週の放課後だった。
生徒会室の前に、小さな紙が貼られている。
恋愛相談受付中(試験運用)
黒瀬が楽しそうに作ったものだ。
僕はそれを見てため息をついた。
「本当に来るんですかね……」
凛は机で書類を見ている。
「来ない」
即答だった。
そのときだった。
ドアがノックされる。
コンコン。
僕と凛は顔を見合わせた。
「……来た」
僕が小さく言う。
「入って」
凛が言った。
ドアが開く。
入ってきたのは一年生の女子だった。
彼女は少し緊張している。
「あの……恋愛相談って……」
僕は立ち上がった。
「はい」
凛が小さく僕を睨む。
「雑用係」
「はい」
「任務」
つまり僕が担当。
僕は女子生徒の前に座る。
「どうしました?」
彼女は少し恥ずかしそうに言う。
「好きな人がいて……」
「うん」
「でも話しかけられなくて」
僕は考える。
正直、恋愛経験はない。
でもとりあえず言ってみた。
「普通に話せばいいと思います」
彼女は困った顔をする。
「それができないんです……」
うーん。
僕が悩んでいると、凛が口を開いた。
「好きなら行動すればいい」
僕と女子生徒が同時に見る。
凛は腕を組んでいる。
「言葉にしないと伝わらない」
女子生徒は少し驚いた顔をした。
「会長……恋愛詳しいんですか?」
その瞬間。
凛が固まった。
「……別に」
顔が少し赤い。
僕は思わず笑いそうになる。
相談は無事に終わった。
女子生徒は何度も頭を下げて帰っていった。
僕は椅子に座る。
「意外でした」
凛が見る。
「何が」
「恋愛アドバイス」
凛はそっぽを向く。
「一般論」
そのとき黒瀬が戻ってきた。
「どうだった?」
「来ましたよ」
僕が言うと黒瀬は笑う。
「いいねぇ」
そして僕を見る。
「蒼くん人気出るかもね」
「ないですよ」
「あるかも」
黒瀬はニヤニヤしている。
そのときだった。
またドアがノックされた。
入ってきたのは二年生の女子。
彼女は僕を見る。
「夏目くん……ですよね?」
僕は驚く。
「はい」
「ちょっと相談が」
凛の表情が変わった。
明らかに機嫌が悪い。
僕は気づかないふりをして椅子を勧める。
女子生徒は言った。
「実は、同じクラスの男子が好きで」
僕はうなずく。
相談は普通だった。
でも途中で気づく。
凛の視線が痛い。
すごく痛い。
黒瀬はそれを見てニヤニヤしている。
相談が終わるころ、凛が突然言った。
「終わり?」
女子生徒はびくっとする。
「は、はい」
凛は立ち上がった。
「では任務終了」
女子生徒は急いで帰っていった。
部屋が静かになる。
僕は言った。
「会長」
「何」
「なんか怒ってます?」
凛は即答する。
「怒ってない」
でも声が低い。
黒瀬が笑いをこらえている。
僕は困惑する。
「僕何かしました?」
凛は腕を組んだ。
そして言う。
「任務中に距離が近い」
「え?」
「さっきの相談」
「普通ですよ?」
凛は少し黙った。
そして小さく言う。
「……気に入らない」
僕は驚いた。
黒瀬が楽しそうに言う。
「会長、それ嫉妬」
「違う!」
凛は即座に否定する。
顔が真っ赤だ。
「これは取り締まり!」
僕は困惑する。
「何の?」
凛は胸を張って言った。
「校内風紀」
黒瀬は笑いをこらえていた。
第7話では凛の「嫉妬」がついに表に出てきました。もちろん本人は認めませんが、黒瀬には完全に見抜かれています。蒼はまだ気づいていないものの、二人の関係は少しずつ変化しています。次回は、凛の意外な弱い一面が描かれる物語になります。




