6. 副会長の悪い笑み
旧校舎の怪談騒動も無事解決し、蒼は少しずつ生徒会の任務にも慣れてきた。しかし、そんな蒼と凛の様子を面白そうに観察している人物がいる。生徒会副会長・黒瀬だ。飄々としていて何を考えているのか分からない彼は、ある日突然「面白い作戦」を思いつく。それは蒼と凛の関係を大きく揺らす出来事の始まりだった。
放課後の生徒会室。
僕は机の上の資料を整理していた。
雑用係になってから二週間。
最初は何も分からなかったけれど、最近は少しだけ慣れてきた気がする。
「雑用係」
凛の声。
僕は顔を上げた。
「はい」
凛は腕を組んでいる。
「その書類、順番が違う」
「え?」
見てみると確かに並びが違っていた。
「すみません」
僕が並べ直していると、横から黒瀬が覗き込んできた。
「会長、厳しいねぇ」
凛は即答する。
「当然」
黒瀬は笑った。
「でもさ、蒼くんにだけ厳しくない?」
凛は少し眉をひそめる。
「気のせい」
「そうかな」
黒瀬は僕を見る。
「蒼くん、どう思う?」
僕は正直に言った。
「めちゃくちゃ厳しいです」
凛が睨む。
「任務だから」
黒瀬は肩をすくめる。
「本当にそれだけかな」
凛は何も言わない。
そのときだった。
黒瀬が突然、机を軽く叩いた。
「よし決めた」
「何を」
凛が言う。
黒瀬は楽しそうに笑った。
「テストしよう」
「テスト?」
僕と凛は同時に言った。
黒瀬はホワイトボードに何か書き始める。
恋愛相談任務。
僕は固まった。
「え?」
凛も眉をひそめる。
「どういう意味」
黒瀬は説明した。
「最近、恋愛相談が掲示板に増えてるんだよ」
確かに校内掲示板にはそういう書き込みもある。
【好きな人にどう話しかければいい?】
【告白するタイミング】
黒瀬は続ける。
「だから生徒会として対応する」
凛は呆れた顔をした。
「それは生活指導の仕事」
「でも面白そうじゃない?」
黒瀬は笑う。
凛は少し考えた。
そして言う。
「却下」
即答だった。
黒瀬は残念そうに肩を落とす。
「えー」
しかし次の瞬間、黒瀬はニヤリと笑った。
「じゃあテストだけ」
「何の」
黒瀬は僕を指差した。
「蒼くんが相談役」
「ええ!?」
凛が言う。
「却下」
「なんで?」
黒瀬は笑う。
「蒼くん優しいし」
僕は戸惑う。
「僕、恋愛とか分からないです」
黒瀬は肩をすくめる。
「だから面白い」
凛はため息をついた。
「時間の無駄」
黒瀬は言う。
「じゃあ会長がやる?」
その瞬間、凛が固まった。
「……」
僕は思わず笑いそうになる。
黒瀬は完全に楽しんでいる。
やがて凛が言った。
「……雑用係がやる」
「え?」
僕は驚いた。
凛は僕を見る。
「任務」
完全に命令だった。
その日の帰り道。
僕と凛は一緒に歩いていた。
黒瀬の提案で、恋愛相談を受けることになってしまったからだ。
僕は言った。
「会長」
「何」
「なんで引き受けたんですか?」
凛は少し黙る。
やがて言う。
「黒瀬がうるさいから」
それだけだった。
でも僕は気になった。
「会長って恋愛とか……」
その瞬間。
凛が止まった。
「……何」
声が低い。
僕は慌てて言う。
「いや、別に」
凛は少しだけ顔を赤くしていた。
「興味ない」
「本当ですか?」
「本当」
でもその声は、少しだけ不自然だった。
そのとき黒瀬からメッセージが届く。
頑張ってね二人とも。
僕はスマホを見てため息をつく。
黒瀬、絶対面白がってる。
そして僕は気づいていなかった。
この「恋愛相談任務」が――
僕と凛の関係を大きく動かすことになるなんて。
第6話では副会長・黒瀬の思惑が動き出しました。飄々としている彼ですが、実は物語を動かすキーパーソンでもあります。そして始まる恋愛相談任務。蒼と凛の関係に大きく関わる出来事の前触れでもあります。次回は、この任務の中で凛の意外な感情が少しずつ表に出てきます。




