4. 失踪したテスト答案
蒼の初任務は無事に終わったものの、生徒会の仕事はまだ始まったばかりだった。そんな中、学校で大きな問題が発生する。期末テストの答案が、提出前に消えたというのだ。もし本当に流出していたら学校は大混乱になる。秘密組織である生徒会は、この問題を表沙汰にせず解決しなければならない。蒼にとって、これは本格的な事件だった。
「答案が消えた?」
僕は思わず聞き返した。
放課後の生徒会室。
凛は腕を組みながら言う。
「正確には、数学の期末テスト答案の一部が紛失」
黒瀬が机の上にファイルを置いた。
「三クラス分だね」
「三クラス!?」
それはかなり大きな問題だ。
凛は冷静だった。
「教師はまだ気づいていない」
「え?」
「気づく前に解決する」
さらっと言う。
しかしもし答案が盗まれていたら、テストはやり直しになるかもしれない。
学校中が大騒ぎだ。
凛はホワイトボードに図を書いた。
「答案は職員室の保管棚にあった」
「つまり先生の近くですよね」
「そう」
黒瀬が補足する。
「普通なら盗むのは難しい場所だね」
僕は首をかしげた。
「じゃあ誰が?」
凛は言う。
「それを調べる」
そして僕を見る。
嫌な予感。
「雑用係」
「はい」
「職員室へ行きなさい」
「僕がですか?」
「あなたは顔が普通だから」
それ褒めてるのか?
黒瀬が笑う。
「要するに怪しまれないってこと」
なるほど。
いや納得したくない。
それでも僕は職員室へ向かった。
職員室の前に立つと、少し緊張する。
僕はドアを開けた。
「失礼します」
中には数人の先生がいた。
僕はなるべく自然に歩く。
心臓がうるさい。
そして問題の棚を見る。
答案は封筒に入っているはずだ。
しかし。
確かに一つだけ空いている場所があった。
僕はさりげなく近づく。
そのとき。
「どうした?」
数学の先生だった。
僕は一瞬固まる。
「え、えっと……提出物です」
適当に言う。
先生は特に疑う様子もなくうなずいた。
助かった。
僕はすぐに職員室を出た。
廊下でイヤホンをつける。
「会長、棚ありました」
凛の声が返ってくる。
「封筒は?」
「一つ空いてます」
少し沈黙。
「やっぱり」
黒瀬が言う。
「盗まれた可能性高いね」
僕は廊下を歩きながら考える。
そのとき、ふと気づいた。
職員室から出てきた女子生徒がいる。
手には封筒。
僕は思わず止まる。
「あの……」
女子生徒はびくっとした。
封筒を隠そうとする。
やっぱり怪しい。
僕は言った。
「それ、答案ですか?」
彼女は顔を青くする。
そのときイヤホンから凛の声。
「蒼」
僕は小さく答える。
「はい」
「落ち着いて聞きなさい」
凛の声は静かだった。
「相手を責めるな」
「え?」
「まず理由を聞け」
僕はうなずく。
そして女子生徒に言った。
「どうしてそれ持ってるんですか?」
彼女は少し黙った。
やがて小さく言う。
「……返すつもりだった」
「え?」
「友達が赤点取りそうで」
彼女は震えながら言った。
「問題を見せてあげたかっただけ」
僕は困った。
確かにルール違反だ。
でも悪意はない。
そのとき凛が言った。
「蒼」
「はい」
「その封筒を回収」
「でも……」
「これは学校の問題」
凛の声は厳しい。
「個人の優しさで決めることじゃない」
僕は少し迷った。
でも、うなずいた。
「それ、返してください」
女子生徒はしばらく黙っていた。
やがて封筒を差し出す。
「……ごめんなさい」
僕は受け取った。
「僕から先生には言いません」
彼女は驚いた顔をする。
僕は言った。
「でももうやめてください」
彼女は強くうなずいた。
そのあと僕は生徒会室へ戻った。
凛は封筒を確認する。
「間違いない」
黒瀬が笑った。
「事件解決」
僕は椅子に座る。
「なんか疲れました」
凛は僕を見る。
「よくやった」
「え?」
凛は少しだけ目をそらす。
「対応は悪くなかった」
それだけ言った。
僕は思わず笑った。
凛が睨む。
「何」
「いえ」
僕は思った。
この人、やっぱり優しい。
第4話では、生徒会の仕事が単なる事件解決だけではなく、人の気持ちにも関わるものであることが描かれました。蒼の優しさと、凛の責任感の違いが少し見えた回でもあります。二人の関係も少しずつ変化しています。次回は、学校に広がる奇妙な噂が新しい事件を呼び込みます。




