11. 屋上の最終尋問
文化祭の最中に始まった「偽装恋人作戦」。任務として始まったはずの関係は、蒼と凛の距離を確実に近づけていた。しかし二人ともまだ本当の気持ちを言葉にできないままだった。文化祭の夜、学校が少しずつ静かになっていく中で、凛は蒼を屋上へ呼び出す。そこで二人は、これまで避けてきた本当の気持ちと向き合うことになる。
文化祭の夜。
校庭では後夜祭が始まっていた。
音楽。
笑い声。
拍手。
でも僕は校舎の中にいた。
スマホにメッセージが届いたからだ。
屋上に来なさい。
送信者は凛。
僕は少し不思議に思いながら階段を上がる。
屋上のドアを開ける。
夜風が吹いた。
そこに凛がいた。
フェンスの前に立っている。
月の光が髪を照らしていた。
「来たわね」
振り向く。
僕は近づく。
「どうしました?」
凛は少し黙った。
そして言う。
「任務の確認」
「偽装恋人作戦?」
「そう」
僕はうなずく。
「成功してますよ」
実際、文化祭の間はずっと一緒にいた。
怪しい人物もいなかった。
凛は静かに言った。
「もう終わり」
僕は少し驚いた。
「任務ですからね」
凛はうなずく。
でもその表情は少し違った。
「蒼」
突然名前を呼ばれた。
僕は驚く。
凛が僕を名前で呼ぶのは初めてだった。
「はい」
凛は少し視線をそらす。
「一つ聞く」
「何ですか?」
凛は少し迷った。
そして言った。
「あなた」
「はい」
「任務じゃなくても……」
少し言葉が止まる。
やがて続けた。
「私と一緒にいた?」
僕は一瞬答えられなかった。
そんなこと、考えたことなかった。
でも今なら分かる。
僕は言った。
「いましたよ」
凛は驚いた顔をする。
「任務じゃなくても」
僕は続ける。
「会長といるの、嫌じゃないです」
凛は少し黙った。
そして小さく笑った。
「変な人」
僕は苦笑する。
「よく言われます」
そのときだった。
屋上のドアが開いた。
黒瀬だった。
「やっぱりここか」
僕は驚く。
「副会長?」
黒瀬はニヤニヤしている。
「作戦の最終段階だよ」
凛が睨む。
「黒瀬」
黒瀬は笑う。
「会長、まだ言ってないの?」
「何を」
黒瀬は僕を見る。
「この人ね」
凛を指す。
「ずっと蒼くんのこと気にしてたんだよ」
凛が叫ぶ。
「黒瀬!」
顔が真っ赤だ。
僕は驚いて凛を見る。
凛はしばらく黙っていた。
そして小さく言う。
「……本当」
僕は言葉を失った。
凛は続ける。
「最初から」
「あなたのこと」
その声は震えていた。
夜風が吹く。
僕の心臓はすごく速くなっていた。
そして僕はやっと気づいた。
僕も。
きっと同じだった。
第11話では物語のクライマックスに向けて、ついに凛の本当の気持ちが明かされました。黒瀬の作戦もここで明らかになります。ずっとすれ違っていた二人の関係は、ここから大きく動きます。次回はいよいよ最終話。蒼と凛の物語の結末が描かれます。




