ログインボーナス1日目 A5ランクお肉焼肉セット
午前6時丁度、朝のシャワー後にドライヤーで髪を乾かしていると着替えの上に置いておいたスマートフォンが鳴った。
ポコンという音と共にブルルッとバイブレーション機能の振動音も伝わってくる。
通知欄に表示されたメールの一文はおめでとうございますと詐欺のように感じられた。
しかしこまめにフィルタリングサービスを活用している事を思い出し、通知をタップした。
『おめでとうございます!富士見ヒカル様。貴女は神の気まぐれに当選しました。これから1年間ログインボーナスが届きます。忘れずに配達員から受け取り下さい』
もしこのメールが本当ならば、この後配達員さんが訊ねてくるのだろうか。
とりあえず服を着るかと仕事用の濃紺の作業着を着終えるとインターフォンが鳴った。
本当に来た。
借りているこの部屋にはテレビドアフォンがついていない。
なのでドアスコープから外を覗き見ると銀髪の美女が立っていた。
「こちらが本日のログインボーナス、A5ランク肉、焼肉セットになります。本日中にお召し上がりください」
ドアを開けると銀髪セミロングの美女が大き目の桐箱を渡してきた。
美女は白いシャツと黒いパンツスーツ身に纏っていた。
注目すべきは胸の大きさだろう。
今彼女がジャケットを羽織っていないのは、形がいびつになってしまうからではなかろうか。
よくアニメでみるボタン飛ばし、それがなされるのではなかろうか、今! ここで!!
「どうかされましたか?」
胸に着目してお肉を受け取らないのに疑問を呈したのだろうか。
まあ胸を中止されるのは同姓でも嫌なのだろう。
しかし同姓でも注視してしまうくらい魅力的で大きなたわわなのだ。
「その髪色、地毛ですか?」
あわてんぼうのサンタクロースが頭の中を三周くらいした脳と繋がった口から開かれた言葉はそれだった。
「ふふっ、地毛ですよ」
「そ、そうなんですね。綺麗ですね……良かったらこのお肉一緒に食べませんか?」
「よろしいのですか? ヒカルさんもこの後仕事でしょうから……連絡先交換しましょう」
彼女の名前はシトラスというそうで、アイコンは蜜柑の断面図だった。
定時に退勤を決めて最寄りのコンビニでシトラスさんと合流する。
シトラスさんから家庭用よりも少し大き目な白い車に乗るよう言われ、助手席に乗り込む。
「ヒカルさん、ホットプレートは持っていますか」
「ないです」
「では買いに行きましょうか」
そう言って向かったのは家の方向とは反対側のピンク色の看板が目印の総合スーパー。
一万二千円くらいのホットプレートを買う事に私が難色を示すと、「経費で落ちますので大丈夫です」とシトラスさんは言って買い物かごに入れた。
ホットプレートの他に、海老やイカなどの魚介類、キノコに野菜と彼女はどんどんとかごへ入れていく。
会計では三万円を越えていたがシトラスさんは涼しい顔をしていた。
これログインボーナスのお肉よりも経費の方が出ていませんか?
部屋についている換気口だけでは換気がまかなえず、窓を少し開ける。
もう部屋中もっくもくで真っ白だった。
朝からちゃんと予約して炊いておいた三合のおこめ。
それを普段の二十倍の値段のお肉とコラボレーションして口に入れる。
やっぱり肉は米だ。
「なんかじゃっかん罪悪感を覚えるんですけれど」
銀髪の巨乳美女とご飯を食べているだけでご褒美なのに。
「前世で得を積んでいたと考えるのはどうでしょう」
まあシトラスさんがそういうのでそう言う事にして、新たな肉を頬張った。