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凹んだ旦那


昨日病院に行って尿結晶症と診断されたニーナに朝ごはんを出した孝は療法食に変わったご飯を食べるニーナをしゃがん見てる。

何となく哀愁が漂ってる気がしないでもない。


楓「朝ごはん出来たよ」


呼びかけると「んー」と生返事をする。


楓「おーい、ごはんだってば。なに昨日から凹んでんのよ」


孝「・・・だってさ、ニーナ具合悪くさせちゃったじゃん、もっとごはんとか気をつけてあげればよかったのかな」


立ち上がることもなく背中を向けたままボソボソ言ってる。


楓「ニーナ拾ってからまだ1ヶ月ちょっとだよ 、多分元々そういう体質持ちだったんだよ」


孝「具合悪そうにしてても俺じゃ病院連れてった方がいいのか判断出来なかった」


楓「(´-ω-`)ふー あのさ、孝今までペット飼った事は?」


孝「? ないけど?」


楓「ペット飼った経験が無いなら孝はまだ飼い主初心者なわけ。初心者がベテランと同じ事が出来ますか? そうじゃないでしょ?」


孝「そうだけど」


楓「これから何年もニーナと暮らしていくんだよ? 色んな事経験して初めて知識として貯まっていくんだよ」


孝「でも病気なんてしない方がいいじゃん」


楓「生きてる限り病気をしないなんて有り得ないからね。あとペットは絶対に自分より早く死ぬから」


孝「! なんで今そう言う事言うかな!」


孝はカッとして立ち上がって振り返っると楓は怒ったようなそれでいて悲しそうな変な顔をしていた。


楓「生きてる限り病気は絶対にするし自分よりも早く死ぬ、そういう覚悟が出来ないなら今すぐ里子に出した方がいい」


孝「なんで・・・そんな泣きそうなんだよ」


楓「だって、この先猫の方が先に歳をとって具合悪くなった時に治療とか、本当にこれでよかったのか、とかずっとずっと後悔するんだよ。そんなの孝に耐えられるの?」


孝「・・・あのさ、」


楓「・・・なによ」


孝「楓はそういう思いしたって事?」


楓「・・・12際から飼ってたの、15歳まで生きてくれてわたしが27の時に亡くなったのよ。ペルシャのチンチラシルバーで、10歳までは病気もしないで元気だった。でも10歳の時多発性嚢胞腎を発症して、ペルシャの遺伝病なんだって。それから腎臓の療法食に変えたり色々してしばらくは大丈夫だったの。15歳になった1ヶ月後に腹水が溜まって病院に行ったら肝嚢胞で腹水に出血があるから手術しないと持たないって言われて、手術したんだけど開いたら癌も出来てて、結局術後2ヶ月で肝嚢胞再発して、嚢胞破裂して出血性ショックで亡くなったのよ」


孝はそういえば結婚前の一時期楓が飼い猫の具合が悪いから出掛けられないって言ってた事に思い当たった。


楓「大人しくて我慢強い子だったの、手術にも頑張って耐えて無理させた。最後の日は仕事だったの、出かける前のあの子の顔が忘れられない。休めばよかった、お母さんとお姉ちゃんが看取ってくれて、帰った時にはもう息してなかった。出血が酷くてペットシーツが何枚も血だらけ目を閉じてあげようとしても下がんなかった」


楓はボロボロ泣きながら話し続ける


楓「治ると思ったの、手術すれば元気になるって、結局痛い思いさせただけで、もっと苦しまない方法があったのかも知んない、飼い主のエゴで無理させたの」


孝は楓にタオルを渡してソファに座らせると頭を撫で続けた。


孝「ごめんな、思い出させて」


楓はタオルに顔を埋めたまま首を横に振る。


孝は楓が猫飼った経験があるのにニーナに対してちょっと距離を置いてた理由がやっとわかった。


孝「俺、ちゃんと覚悟決まったよ。大丈夫なんかあったら2人で乗り越えよう」


しかし、俺ってホント察しが悪いんだなとまたしても凹む孝だった。

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