1話 電話
場面:謎の白兎にと一緒に戻ってきた男。一人はダイニングテーブルの椅子に、一羽は向かい合うようにして中央に陣取っていた。両者向き合ったまま、時間だけが過ぎようとしていた。
男はうつむいていたが、あまりにも進展が起きない為、顔を上げてウサギを見つめる。すると動き続ける口元から、ウサギが話し始めたと錯覚し始める。話していないウサギと自分の妄想会話が始まった。
場面:謎の白兎にと一緒に戻ってきた男。一人はダイニングテーブルの椅子に、一羽は向かい合うようにして中央に陣取っていた。両者向き合ったまま、時間だけが過ぎようとしていた。
男はうつむいていたが、あまりにも進展が起きない為、顔を上げてウサギを見つめると、動かし続ける口元から、何かウサギが話し始めたと錯覚し始める。
ウ:お前、いい加減にしろよ、いつまで黙っているんだ。勝手に押し掛けたとはいえ、茶も出さないなんて失礼じゃないか。
男:すみません、うっかりしていました。緑茶でいいですか?自分お茶なんて出先でしか飲まないので、コンビニ言って買ってきます。
ウ:お茶なんていいわ。お前、ウサギが何飲むかわかってんのか?緑茶なんて苦い飲み物飲むわけないだろ。何も考えてないんだな。興味ないんだろ。俺のこと、ウサギのことなんてどうでもいいんだろ。
男:そんなこと。ないですよ。
男はまた目線を下げて、うつむいてしまった。図星だったのだ。さっきまで、もう疲れたから楽になりたいと思っていたのに、予想外の展開になっていたが、ウサギが話していようがそんなことは自分のことに比べたら些細なように思えた。とにかく死んだと思ったのに生きている。この事実だけが、彼の頭のほとんどを埋めており、これからどうしたらよいのかと思案するのだった。
男:”そういえば・・・仕事行ってない。電話しないと。でもなんていうべきだ?もう仕事もしたくなかったし、今日休んだら明日も行きたくなる。そもそもなんて言えばいいんだ”
時間は彼が乗る電車を見送ってから1時間。すでに8時半を回っており始業時間には間に合わない。電車遅延で遅刻したことはあったが、故意ではなかった。今回はそもそも自分が電車に飛び込んだことが発端の為、電話しづらいと感じていた。
男:”とにかく、具合が悪いと言えばいいんだよ。今日はそれで済む。明日は・・・明日は出勤しないといけないのか。”
カバンから取り出したスマホを見つめたまま、男の動きが止まった。本当はなかったはずの時間、そして明日からも続く人生という名の絶望。彼の思考は闇に落ちていった。
ウ:『お前、もう仕事辞めろ。』
声をした方を見ると、テーブルに鎮座していたウサギが男の近くまで接近していた。また口を開いたと思ったウサギは、また沈黙を始めた。男はウサギが自分に言ってほしいと思う言葉を妄想して、2人の会話の続きを始めた。
ウ:俺が電話してやるから。お前はもう嫌だったんだろ。何もかもが急に嫌になった。それだけなんだよな。
男:・・・
ウ:別に悪いことでも、恥じる必要もないんだ。正直になればいい。どうなんだ?
男:・・・確かに、その通りです。自分が嫌になった。何もかも。それで、終わりにしたかったんです。
ウ:分かった。それなら、まずは仕事を辞めるんだ。
男:仕事を辞めたいけど、収入がないと生活費がないです。貯蓄もないですよ。どうやって生きていったら良いんですか?
ウ:じゃあ、お前は同じ人生を歩めるのか?何かを変えるときは、まずは環境を変えないといけない。仕事を変えるということは、毎日の1/3の時間に変化があるということだろう?
男:分かってますよ。でも転職をこの年で実行するのは無理があると思います。スキルもない中年を雇う職場なんてないですよ。
ウ:俺が言いたいのは、”転職しろ”ということではない。”仕事を辞めろ”といっただけだ。とにかく電話してみな。
ウサギの妄想発言に促されながら、男は電話した。
男:すみません、仕事を続けられないので辞めたいんですが。・・・理由ですか、出勤したときに命を助けてくれたウサギがその方がいいって。・・・ご迷惑を掛けますが、宜しくお願いします。
電話を切ったあと、男はスマホを置いてしばらくの間うつむいていた。その後ウサギに向かってまた話しかけ始める。
男:大分疲れてるようだから、とにかく今週は休んで、来週の月曜日に改めて話をしましょうって。
大分頭がおかしいと思われたみたい。確かにウサギと会話してる奴はいないもんね。
男は急に天井を見上げて大声で笑い始めた。笑いながら、涙を流して号泣していた。何が苦しくて、何が辛いのか、感情の理由が一切不明だったが、心の奥底から幾度もあふれてきた。男の様子が落ち着くまでウサギはじっと見つめるのだった。
男の涙が枯れ果て、すっきりした顔がティッシュの隙間から見えるようになると、目の前のウサギが突然話し始めた。
ウ:『落ち着いたら、出かけるぞ。旅行だ』
誰が読んでくれているか分かりませんが、仕事が落ち着いたので続きを掛けると思います。
最低でも日曜日には1回更新する予定ですので、気に入った方は続きを見てくださるとありがたいです。
この小説の趣旨は、”自分自身への勇気づけ”です。自分にこんなウサギがやってきたら変化があるのかという話の展開をしていくと思います。モデルも自分ですし、自己満足の小説だと思います。生きていくことに疲れたらどうしたらよいのか。自分でその答えを見つけ出すことは難しいです。でも誰も知り合いがいないのに、助けてくれる存在は多くの人がいません。
この物語の主人公を救ってくれたのは、宇宙人でした。もちろんその話については後半になると関係してくるかもしれませんが、彼は一人ではありません。
現実の自分含め、孤独に飢えた人たちを救えるような話になると思って書いています。まだどんな展開になるか分かりませんが、どうぞお付き合いください。




