死神との出会い
私はバカだ。
こんなことになるなら、打ち明けずにずっと仕舞っておけば良かった。
でも、どっちにしても普段の行ないの代償がこれなら結局は一緒か。
本当は打ち明ける気はなかった。
いくらサクちゃんでも受け入れてくれないだろうと思っていたし、友達のままの方がずっと一緒に居られると思ったから。
だからと言って、サクちゃんが男の子達に寄り付かれるのを見るのも嫌で、サクちゃんが見てないところで睨みつけて牽制もした。
だから大丈夫と思って油断した。
まさか夏休みに他のクラスメイトに会うなんて思ってもなかったし、私が珍しく家族の予定で早く帰った後にクラスの男の子に出会って告白されるなんて思っても見なかった。
相手はよくサクちゃんに話しかけようとして私が牽制してきた要注意人物。
なんで私は女で生まれてきたんだろう。
なんで男ってだけで私より付き合いが浅くてサクちゃんの事よく分かってないあいつがサクちゃんと付き合えてるんだろう。
すぐに帰る気も起きなくて、感情も顔もぐちゃぐちゃなまま無機質にただひたすらに歩いていた時だった。
不意に誰かに背中を押された。
気づいたときには目の前は崖で私は体制を崩して落ちる瞬間だった。
なんとか後ろを見たとき映ったのはサクちゃんに告白した男の子にそっくりな顔のお兄さん。
きっとアイツのお兄ちゃんだ。サクちゃんだけじゃなく私の命まで奪うのか。
まぁ、もういっか。生きていても仕方ないし。そう思いながら目をつむった…
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いつまで経っても衝撃がこない…?
しかも紅茶のようないい香りもする…
恐る恐る目を開けると、目の前にはうさ耳のついた黒フードをかぶった女の人の顔のドアップが。
「良かったー!目が覚めたのね!」
「うわぁぁ!?」と思わず飛び起きた。
女の人はぶつかる寸前に華麗によけて「元気そうで良かったわ。お腹すいてない?紅茶とスコーンがあるの。そんな警戒しないで?状況の説明もちゃんとするから。」
危ない人ではなさそう…?まぁあの男より危ない人はいないだろう。
「…食べる。」
「良かった。そこ座って」
言われるがまま席に着き紅茶とスコーンをいただく。
美味しい…少し落ち着いた。
「あの…あなたは誰なんですか?それにここはどこ?私死んだと思ったのになんで…」
「私はそうねぇ…あなたたちが俗に言う死神ってやつね。そしてここはあの世とこの世の狭間。あなたの魂が壊れる前に私が回収してここに連れてきたの。」
「ふざけないで!私が子供だからって…!」
「ふざけてないわ。窓の方見てみ?」
そう言われて窓に近づき覗き込む。そこは夕暮れに色に包まれながら、ぽつぽつと変わった形の建物があり、行きかう人はみんな動物の耳がついた黒フードを被りながら歩いている。
「何…ここ…」
「だから狭間の世界。まだ寿命が残ってるのに緊急要請のリストにあなたの名前が載ってびっくりしたわ。急いできたけど魂だけでも無事に回収できて良かった。あと一歩遅かったら魂ごと消滅してただろうから。」
「言ってる意味が分からない!それに頼んでない!別に消滅しても…!「良かった?」」
「あのね?消滅するってことは転生もできないし、現世に残した人達を見守ることもできない。無に還るってことよ?私たち死神は、不可抗力で寿命を全う出来なかった魂を回収し、選別して、転生のサポートしたり地獄に送ったりしてる言わば仲介業者なのよ。」
「仲介業者…??え、でも死神って、鎌もって枕元に立って殺しにきて地獄に落とすやつじゃないの?」
「それは大昔の話ね。昔は寿命を全うする人の方が珍しかったし、良い人だろうが悪い人だろうが皆死の淵でギリギリで生きていて、その中でも特に生かしておいたら危ない極悪人だけを回収して即地獄送りにしていたそうよ。加えて、死と隣り合わせのギリギリを生きてる人ってこちら側の人が見えるって人多いのよ。だから回収現場をたまたま目撃した人達が話た事がさらに尾ひれがついて今の時代まで受け継がれたって感じかな。」
「そうなんだ…。」
「疑問はすべて解決した?そしたら一緒に来てほしい所があるの。早速行きましょ!」
そう言うとお姉さんは私の腕を引っ張り上げた
「行くってどこに!?」
「私が所属してる事務所よ!」
お姉さんは楽し気に私を引っ張りながら歩きだした。
こうして死神との奇妙な物語が幕を開けた。