表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

童話

そうたくんとうさぎのおともだち

作者: あるぱかぱかす


 しろうさちゃんとくろうさちゃんは、そうたくんのたいせつなともだちです。

 いつもいっしょにくらしてきました。


 おでかけもいっしょ。

 ごはんのときもいっしょ。

 あそぶときもいっしょ。

 おふろのときはぬいだふくといっしょにそっとみまもっています。

(ときどきおかあさんがせんたくしていますよ)


 ねるときも、とうぜんいっしょです。


「ねたかな?」

 そうたくんのみぎがわでしろうさちゃんがささやきました。

「ねたね」

 そうたくんのひだりがわでくろうさちゃんがささやきかえします。


 ふたりはそっとベッドをぬけだして、くすくすわらいあいました。


「なにしてあそぶ?」

「なにしてあそぶ?」


 わくわくするよる。

 こどもべやはよがあけるまで、ぬいぐるみたちのたのしいあそびばでした。

 しらじらとよがあけるころ、ねむいめをこすりながらそうたくんのりょうがわへもぐりこみます。ねむりにおちるまえ、しろうさちゃんはみぎてで、くろうさちゃんはひだりてで、そっとそうたくんのあたまをなでることをわすれません。


「おやすみ」

「おやすみ」


 そうしてまたあたらしいいちにちがはじまります。


 でも、そのひ。

 いつものいちにちとは、どうもようすがちがいました。

 あさはやくから、おとうさんもおかあさんもばたばたといそがしそうです。

 そうたくんもはやくにおこされました。


「そうた、きょうはおひっこしよ。たいせつなものはわすれずにもっていくのよ」

「うん」


 そうたくんはねむそうにはんぶんこっくりしながら、それでもしろうさちゃんとくろうさちゃんをぎゅっとだきしめました。

 そうたくんたちは、くるまにのってなんじかんもかかるとおくへひっこすことがきまっていたのです。いえのなかのにもつも、どんどんはこにしまわれていきました。


「そうた、こんどのいえはいまよりずっとひろくなるよ」

 おとうさんがいいました。

「にわもあるし、みどりがおおくていいところよ」

 おかあさんもいいました。


 ふたりとも、とてもたのしそうに、わくわくしたかおをしています。

 でも、そうたくんはすこしだけふあんそう。

 しらないところへいくのも、あたらしいともだちができるかも、ふあんなのです。

 ぎゅうっと、しろうさちゃんとくろうさちゃんをだきしめて、ふたりのあたまにかおをうずめました。


(だいじょうぶだよ)

(ぼくたちがいるよ)


 しろうさちゃんとくろうさちゃんは、そうたくんがどきどきしているのがわかり、こころのなかではげましました。


 そうたくんがたいせつにしているほかのおもちゃたち、ひこうきやくるま、ロボットやつみきは、はこにいれられてトラックにつみこまれました。

 しろうさちゃんとくろうさちゃんだけは、そうたくんといっしょにおとうさんのくるまであたらしいいえまでドライブです。


 こうそくどうろをのりついで、サービスエリアでなんどかきゅうけいしました。そのたびに、しろうさちゃんとくろうさちゃんはみたこともないひろいばしょで、たくさんのくるまがとまっているのをみました。

 よいてんきで、ドライブはたのしく、わくわくします。けれど、みんな、あまりにとおいので、すこしつかれてきていました。

 なんどめかのきゅうけいのあと、そうたくんとしろうさちゃんとくろうさちゃんはくるまにのりこみます。 

 そうたくんはつかれていたので、ふたりをだきしめるうでがすこしだけゆるんでいることにきがつきませんでした。


(あっ!)

(あっ!?)


 しろうさちゃんとくろうさちゃんは、こえにならないさけびごえをこころのなかであげました。


 するり、としろうさちゃんが、そうたくんのうでからこぼれおちてしまったのです。


(そうたくん!)


 ばたん、とそのままくるまのドアがしまってしまいました。

 そうたくんやおとうさんやおかあさんは、ちゅうしゃじょうにしろうさちゃんがとりのこされていることにきがつきません。

 そうたくんはうとうとして、そのうでにくろうさちゃんしかいないことにきがついていなかったのです。


 さあ、たいへん。

 しろうさちゃんはうごくこともできず、そうたくんたちののったくるまがとおざかっていくのをかなしくみつめることしかできませんでした。


(どうしよう……)


 しろうさちゃんは、とほうにくれていました。

 さっきまでひろびろとして、たのしげだったちゅうしゃじょうが、きゅうにおそろしいものにおもえてきます。

 なぜなら、しろうさちゃんのまわりにはおそろしいくるまがどんどんやってくるのです。

 しろうさちゃんは、ながいみみをすくめるようにしてぶるぶるとふるえました。

 ぶうん、といちだい、しろうさちゃんをふまずにくるまがとまりました。

 くるまのしたにすっぽりかくれてしまったしろうさちゃんに、だれもきづきません。

 かなしくて、こわくて、こころぼそくて、しろうさちゃんはなきそうになりました。


「えっさ、ほいさ。えっさ、ほいさ」


 みみをしょんぼりさせていると、ふしぎなこえがちかづいてきます。


「えっさ、ほいさ。えっさ、ほいさ」


 かんだかく、ちいさな、ささやくようなこえです。それがいくつもいくつもきこえるのです。

 なんだか、たくさんのひとがいるようです。でも、おかしなことにしろうさちゃんにはひとのあしがみえません。


「えっさ、ほいさ。えっさ。――ちがうちがう、ここだよ!」


 しろうさちゃんのベストをひっぱるちいさなてがありました。

 おどろいたことに、しろうさちゃんのまわりには、しろうさちゃんよりもずっとちいさなひとたちがあとからあとからたくさんかこんでいたのです。

 しろうさちゃんのみみよりもずっとちいさな、こびとたちでした。


「あなたたち、だれ?」


 しろうさちゃんはちいさなこえでたずねました。


「ぼくたちは『わすれられたくに』のおうさまのつかいだよ」

「わすれられたくに?」


 しろうさちゃんは、めをまんまるにしてくりかえしました。

 こびとたちはおそろいのとんがりぼうしに、カラフルなようふくをきています。

 おなじふくだけれど、そのいろはあか、あお、きいろ、みどり、むらさきなど、さまざないろをそれぞれまとっています。

 こびとたちはきれいにせいれつすると、みんな、えっへんとむねをはりました。


「きみを、ぼくたちのくにへしょうたいするためにきたんだ」


 しろうさちゃんはこまってしまいました。

 そんな、どこだかわからないくにに、いくわけにはいきません。

 そうたくんがきっとすぐにむかえにきてくれるでしょうから。


「せっかくのおさそいだけど、あなたたちとあそんでいるわけにはいかないの。そうたくんをまっていなけりゃならないから」


 ていねいにことわると、こびとたちはきゅうにぷんぷんとおこりだしました。


「むかえになんてこないよ!」

「わすれられたおもちゃやぬいぐるみは、だれもむかえになんて、こないんだから!」

「ぼくたちといっしょにくれば、ずっとたのしいのに!」


 くちぐちにいうこびとたちに、しろうさちゃんはおどろきました。


「どうしてそんなこというの? そうたくんはきっとくるよ」


 そうはいいましたが、きゅうにふあんになります。

 ほんとうに? ほんとうにむかえにきてくれるのでしょうか。


 こびとのいちばんはしっこにいた、ひときわむねをはったきいろのこが、いじわるそうにわらいました。


「いっしょにこなくて、ほんとうに、いいの? ぼくたちのさそいをことわってこのせかいにのこると、だれもむかえにこないかもしれないよ」


 しろうさちゃんは、そんなことない、とみみをぷるぷるふりました。

 こんどはあかいこが、ひときわこわいこえでささやきます。


「むかえにこられないと、みんなにわすれられちゃうよ。くちて、ぼろぼろになってしまうよ」


 しろうさちゃんは、こわくなり、ふるえてひげをさわさわをゆらしました。

 さらには、むらさきのこが、やさしいこえでいいました。


「おうさまはいいひとだよ。にんげんのくににいると、いつかぬいぐるみはぼろぼろになってすてられてしまうけれど、『わすれられたくに』ではじかんはとまっているんだ。みんなきれいなままだし、いつまでもとしをとらない。ほころびることも、こわれることもない。おいしいものも、きれいなものも、たのしいものも、なんでものぞみどおりさ!」


 それでも、しろうさちゃんはみみをぷるぷるふって、ゆうきをもってことわりした。


「――いかない。ぼくはそうたくんをまつよ。だって、ぼくがいないとそうたくんはねむれないんだもの」


 しろうさちゃんは、そうたくんのことをおもいだしました。

 いままで、どんなことがあったのか。

 ひとつひとつかぞえます。


「ぼくたちがいれば、あさがんばっておきられるし、かけっこもだれにもまけないし、いじめっこにはちゃんと『だめだよ』っていえるの。ぼくたちがおうえんするから、きらいなにんじんもたべられるし、よるひとりでトイレにだっていける」


 しろうさちゃんは、なきそうになるのをこらえながら、つづけました。


「ぼくたちがいるからそうたくんはがんばれるの。だから、かえらなきゃ。あなたたちとはいっしょにはいけないの」


 やさしいこえをしていたむらさきのこが、かんだかくわらいました。


「いいの、いいの? どうせにんげんなんて、すぐにおおきくなってきみたちをすてるんだよ。いま、むかえにきてくれたって、くちはてるのはじかんのもんだいさ」


 しろうさちゃんは、どきり、としました。

 こびとたちのいうとおりかもしれないと、おもいました。


 それでも、しろうさちゃんは、みみをぴんとたてました。

 まるいしっぽをぴっともちあげます。


「――そんなことないよ。それは『くちはてる』んじゃない。『やくめをおえた』っていうんだよ」


 ほんとうはしろうさちゃんは『やくめをおえた』のいみをよくわかってはいませんでした。

 ただ、くろうさちゃんからきいたことがあったのです。

 くろうさちゃんは、そうたくんのおかあさんがたいせつにしていたぬいぐるみでした。


(ぼくはいちど『やくめをおえた』んだ。でも、そうたくんがうまれて、またこうしてそばにいる)


 にんげんがおおきくなっても、すてられないぬいぐるみもちゃんといるのです。


「ふん、ならいいよ。ひとりでさみしく、くちはてればいい」


 こびとたちはぷんぷんとはらをたてたまま、またいちれつになり、どこかへいってしました。

 きゅうにしずかになってしまい、しろうさちゃんはこころぼそくなりました。

 ちゅうしゃじょうは、なんだいものくるまがきては、はしりさっていきます。

 そこにとりのこされたしろうさちゃんに、きづくひとはいません。


 どれだけたったころでしょう。

 よこたわるしろうさちゃんに、ちかづいてくるものがありました。

 カチャカチャというつめのなるおと、ハッハッというあらいいきづかい。

 それはしろうさちゃんにちかづくと、みみのすぐそばであしをとめました。


「……ワンッ!」


 びくりと、しろうさちゃんはからだをちぢこませました。

 おおきな、いぬがそこにいました。

 くろくてながいしっぽをした、なめらかなけにつつまれた、おおきないぬです。


 いぬはしろうさちゃんのにおいをふんふんとかぐと、ぱくりと、くちにくわえました。


(わあ!?)


 きばがささるのではないかと、しろうさちゃんはぶるぶるとふるえましたが、いぬはそっとくわえているのか、しろうさちゃんがいたいおもいをすることはありませんでした。


 いぬはしろうさちゃんをくわえたまま、とてもはやいスピードではしりはじめました。


「こら、ラブ! どうしたの! とつぜんはしりだしたりして……!」


 くろいいぬは、とおくからはしってきたおんなのひとにむかってしっぽをふりながら、かけよっていきました。


「びっくりしたよ~! だめじゃないの、ラブ。じゆうにはしっていいのはドッグランのなかだけよ」


 どうやら、ひろいちゅうしゃじょうのかたすみにあった、ドッグランからにげだしてしまったいぬのようでした。

 ラブ、とよばれたいぬはおとなしくおすわりをしてあたまをなでるおんなのひとに、くうん、となきながらしっぽをふりました。


「あら? どうしたの、このこ」


 おんなのひとがラブがくわえているしろうさちゃんにきがつきました。

 あわてておんなのひとがてのひらをだすと、らぶはおとなしく、そのてのひらにしろうさちゃんをのせました。

 おんなのひとはこまってしまいました。


「だれかがおとしたぬいぐるみかしら? こまったわね、らぶ、どこからひろってきたのかしら」


 おんなのひとはサービスエリアのたてものへむかいました。

 かかりのひとにおとしものをとどけようとおもったのです。

 

「すみません、うちのいぬがひろってきてしまって……」


 サービスエリアのかかりのひとはしろうさちゃんをやさしくうけとりました。


「もちぬしがあらわれるまで、おあずかりしますね」


 おんなのひとはほっとして、ラブをつれてかえっていきました。

 しろうさちゃんはとうめいなビニールぶくろにいれられて、ばんごうふだをつけられました。そして、そうこにはこばれます。

 たくさんのわすれものたちが、いきをひそめるはこに、そっといれられました。


「しろい、うさぎのぬいぐるみ、おちていたばしょは、ちゅうしゃじょう……と」


 かかりのひとのかくにんのこえがひびきます。

 しろうさちゃんは、さむくもあつくもないばしょにつれてきてもらえて、すこしだけほっとしました。


「――むかえにきてもらえるといいね」


 かかりのひとがなぐさめるようにそういって、へやをでていきました。


 そのへやにはたくさんのおとしものたちがいました。

 かさやちいさなポーチ、ペンやほんもありました。おもちゃやぬいぐるみもいくつかいます。みんないきをひそめたようにしずかにしていました。

 しんと、くらくて、かなしいような、あきらめたようなけはいがします。


 しろうさちゃんは、そんなかなしいけはいをかんじているうちに、さみしくなってきました。

 ここには、こんなにたくさんのものがあるのに、みんなかなしそう。

 いきをひそめて、ねむるようにおとしぬしをまっているのです。


 しろうさちゃんはふあんになるまえに、ぷるぷるとみみをふりました。

 そして、となりにいたくまのぬいぐるみにはなしかけてみました。


「こんにちは、くまさん。ぼくは、しろうさ」

「こんにちは、しろうささん」


 くまさんは、どこかつかれたようなこえでこたえました。


「あなたたちも『わすれられたくに』のつかいのしょうたいをことわったの?」


 くまはしょんぼりとうなずきました。


「そうさ。ここで、ずっとまってるんだ」

「ことわったこと、こうかいしてる?」


 くまはただ、かなしそうにくびをふりました。

 となりにあったボールペンが、くちをはさみました。


「ぼくはこうかいしてる。どうしてことわってしまったんだろう……」


 そのとなりの、ひょうしがおれたメモちょうもうなずきます。


「きみたちはいいよ。ぬいぐるみやおもちゃはむかえにきてもらえることもあるもの」

「そうともいえないけど……」


 くまは、ちいさくいいかえしましたが、ノートやペンたちはいっせいにためいきをつきました。


「――うたがってはいけない」


 そのとき、としおいて、おごそかなこえがきこえました。

 しろうさちゃんがこえのぬしをさがすと、おとしものばこのすみのすみのほうにいた、よごれてくたびれたかたあしだけのスニーカーでした。


「わたしたちは、えらんだのだ。ほこりたかくあろうではないか」

「ほこり?」


 しろうさちゃんがみみをかしげると、はんたいがわからもしわがれたこえがしました。

 しろい、かたほうだけのてぶくろでした。


「そうだ。――くちはてようとも、さいごまで、きぼうはすてるな」

「きぼう……」


 しろうさちゃんがくりかえすと、てぶくろはうなずきます。


「いちばん、たいせつなことはなんだとおもう?」


 てぶくろにたずねられて、しろうさちゃんはかんがえました。


「なんだろう……、わからない」


 てぶくろは、やさしくしろうさちゃんに、かたりかけます。


「じぶんが、どうしたいか、じぶんではっきりきめることだ。そして、きめたこと、じぶんのことをしんじること」

「しんじる……」


 くらかったへやが、ほんのりとあかるくなったようなきがしました。

 しん、とおもかったけはいがすこしだけかるくなっていきます。


(そうだ。ぼくは、しんじている)


 しろうさちゃんは、すこしだけむねがかるくなり、つかれたからだをやすめることにしました。


(――まってる。そう、じぶんで、きめたんだ)


 すこしのあいだだけ、ねむることにしました。






 さて、しろうさちゃんがいないことにきづいているのは、くろうさちゃんだけでした。

 そうたくんはまだしろうさちゃんがいないことにきづかず、つかれてうとうとしています。


(どうしよう……)


 くろうさちゃんは、かんがえました。

 どんなにあせっても、ぬいぐるみがにんげんにちょくせつはなしかけることはできません。

 ぬいぐるみたちにできることといえば、そうたくんのゆめのなかでいっしょにあそぶことくらいでした。


(そうだ! そうたくん!)


 くろうさちゃんは、そうたくんのゆめのなかにはいってみることにしました。

 うまくいくときといかないときがあります。

 くろうさちゃんは、ひっしによびかけました。


(そうたくん、そうたくん! きがついて! しろうさちゃんが、いないよ!)


 そのこえがとどいたのでしょうか。

 そうたくんがぱちりと、めをひらきました。


 そのまま、あちこちさがすようにばたばたとうごきます。

 そして、ひがついたようになきだしました。


 おとうさんもおかあさんも、びっくりしてそうたくんをみました。


「しろうさちゃんがいないの……!」


 おとうさんもおかあさんもこまってしまいました。

 こうそくどうろをはしるくるまはかんたんにはとまれないのです。


「そうた、よくさがしてみなさい」


 おかあさんはそうたくんをなだめるようにそういいます。

 そうたくんはもう、ずっとよくさがしたのです。

 それでも、しろうさちゃんはいません。


「どこかのサービスエリアでおとしたのかもしれないなあ」


 おとうさんもこまったようにいいました。


「つぎのサービスエリアでとまって、とおってきたところにでんわしてみよう」


 おとうさんはあんしんさせるように、にっこりとしました。


「だいじょうぶ。きっとどこかでまっているよ」

「もどることって、できるかしら?」


 おかあさんが、しんぱいそうにききます。

 おとうさんは、ちからづよくうなずきました。


「もちろん。そうたの、たいせつなともだちだからね。かならずむかえにいこう」


 そうたくんも、やっとなきやみました。


 おとうさんはやくそくどおり、つぎのサービスエリアにくるまをとめると、ほうぼうにでんわをしてくれました。


『はい、そのぬいぐるみなら、おあずかりしていますよ』


 ごかしょめにでんわしたところで、かかりのひとがそういってくれました。


「ほんとうですか。では、すぐにとりにうかがいます」


 おとうさんは、ほっとしました。

 ひっこしさきにむかうのがすこしおそくなってしまいますが、みんなはひきかえすことにきめました。






 しろうさちゃんは、ぐっすりとねむっていました。

 ひっこしのしたくをして、ドライブをして、おいていかれてしまい、こびとたちにあって、たくさんのわすれものたちともおはなししました。

 いちにちのうちにしんじられないくらい、たくさんのはじめてのことがありました。

 すっかりつかれてしまっていたのです。


 まっくらなへやが、ぴかりとあかるくなりました。


 ぐっすりとねむっていたしろうさちゃんは、うぅん、とみみをのばしました。

 からだがそっともちあげられたきがしました。

 ゆらゆらとあかるいところへとはこばれていきます。


「――さあ、おむかえがきたよ」


 しろうさちゃんは、そうささやいてくれる、やさしいかかりのひとのこえをきいて、あわてておきました。


 きがつくと、そうたくんがなみだでいっぱいのめをして、てをのばしてたっています。


(そうたくん! おむかえにきてくれた!)


 そのまま、ぎゅっとだきしめられました。

 しろうさちゃんはぽかぽかとむねのなかがあたたかくなります。

 そして、ふかくあんしんしました。


(きてくれた……! やっぱり、きてくれた! しんじてて、よかった)


 そうたくんは、こんどはおとしてしまわないよう、しっかりとしろうさちゃんとくろうさちゃんをだきしめて、しんちょうにくるまにのりました。







 それからどうなったかって?


 もちろん、しろうさちゃんもくろうさちゃんもあたらしいおうちにぶじついて、そうたくんのへやのベッドにならんですわっていますよ。


 そして、あたらしいおうちについてからは、もうひとり、ももいろをしたももうさちゃんもふえました。


「そうた、おにいちゃんになるんだからね。あかちゃんに、うさちゃんたちをかしてあげるのよ」

「うん!」


 そうです、こんど、そうたくんのおとうとか、いもうとがうまれるのです。

 しろうさちゃんと、くろうさちゃんと、ももうさちゃんにはあたらしいおともだちができるのです。

 しろうさちゃんたちもそうたくんも、とてもたのしみでまちどおしいのでした。


 そして、ぬいぐるみたちはこのさきもずっと、ながくたいせつにされたのでした。





(おしまい)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] うさぎさん、良かった〜。 「わすれられたくに」のことちょっと気になりますけどね^_^
2023/01/15 15:43 退会済み
管理
[良い点] 見つけてくれた犬のラブくんにそうたくんのゆめで伝えたくろうさちゃんのお手柄でした。 それに最後まであきらめなかったしろうさちゃんもよかったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ