リラから見たレイラ
ちょっとリラが恋?に落ちた形に修正しました。
現在私は、レイラ様に連れられてお屋敷の中にある”工房”を見学しています。
ドール家はライスター王国で唯一”自立稼働型人形”を製作できる家で、先日侯爵家になった新興貴族です。
私、リラはそんなドール家の現当主であるレスター様の隠し子ということになっていて、メイドとして働くことになりました。
なので、レイラ様とは血のつながりがあることになりますが、魔力はありません。
侯爵家を乗っ取るなどで出来ようはずもない立場ですし、後も継げません。
年齢はレイラ様と同じ10歳です。
1年ほど前、流行病にかかり衰弱して亡くなった母は、もともとドール家に嫁いだアイシャ様専属メイドとして一緒に家に入ったメイドだったそうです。
”そこでレスター様からお手つきにあった”ということに表向きはなっています。
ライスター王国の貴族ではよくあることで、醜聞にはならないそうです。
レイラお嬢様に聞かれ、このあたりの話をしたのですが、どうもレイラ様は”真実”に気が付いておられるようです。
10歳にしては、相当ませて居て擦り切れていると、執事のマイヤー様から聞いておりましたが、事実のようです。
「つまり3人で一夜を過ごされたのね、納得」
とはレイラ様のお言葉。
私の母もアイシャ様もどうやら”男性を愛することができない”人種らしく、政略結婚であったアイシャ様は、母を屋敷に連れていくことを条件に嫁いだのだそうです。
ちなみに、アイシャ様は現国王陛下から数えて7番目の妹さんだそうで、ドール家に臣下されたのだそうです。
で、レスター様とアイシャ様、私の母は一夜を共にしたと。
ちなみに、ドール家にレイラ様しか跡継ぎがいない最大の理由だそうです。
「お父様の作るメイド人形を見れば、それぐらいわかるわ。お母様のもだけど」
とはレイラ様の言葉。
それは擦り切れますし、ませるでしょう…しかもアイシャ様と母は別に恋仲であったわけではなく、肉体的な関係だけだったそうです。
これは母から聞きました。
娘に何を教えてくれるのだ母よ…しかも死ぬ前に言うことか…
おかげで葬儀の時に涙一滴出ませんでした。
案内していただけたレイラ様の工房は、作りかけの人形で埋め尽くされていました。
この部屋の整理整頓ぐらいは仕事をしたいと提案したところ、了承していただきました。
作りかけの人形だけは触るなと言われましたが。
しかし、その”作りかけの人形”ほど怖いものはありません。
思わずちびりそうでした。
木を削って精巧に作られた骨格に、魔法で人工的に皮膚を張り合わせてある体のパーツは、精巧すぎて嫌悪感すら抱かせます。
まだ、服も着せられず頭が開かれ最終調整前の人形は死体のよう。
レイラ様はこんな中で一人で人形を製作されているそうです。
魔力のない私では、作るお手伝いも出来ない工房でした。
「お父様の工房はこんなに人形は転がっていないけれど、調整待ちの美男美女を眺めるられるのは圧巻よ」
レイラ様が楽しそうにお話をされますが、ちょっと遠慮したいです。
レスター様の後ろに控えるメイドさん以上の綺麗な人形が並んでいるのは美しくも狂気な気がします。
レイラ様の目標は、レスター様が作られる人形を超える美人を作ることだそうです。
そしていま全力で製作しているのがコレと見せていただけたのが、”レイラドール”工房の最奥にある1体のドールを見せていただきました。
レイラ様と瓜二つの人形。
まさか”ご自身”をおつくりになっているとは…
レイラ様はにこやかに笑いながらおっしゃりました。
「世界で一番美しいと思っていたのは、私自身なのよ。でも、それを今日打ち砕いてくれたのがリラね」
そういいながらレイラドールの頭を外すレイラ様。
自らの頭を握り、その唇にキスを落とすと、突然投げつけました。
「この顔はダメね。全然私に似ていないし美しくもない!でも大丈夫リラという最高のモデルを得られたもの!すぐに美しくできるわ!」
いや、怖いですレイラ様!!
そして、すごくいい笑顔です!初めて見ましたそんな笑顔!
リラはそこに座っててと言われ、椅子に座らされると、レイラ様から真剣なまなざしを向けられます。
そして、手にもつ粘土と木片に魔力を流し成型していくのです。
私はレイラ様から色々な角度から眺められ、身を固くしてしまいました。
そして、徐々にレイラ様の手の中には私の顔が出来上がっていくのです。
私はそれを少し美しいと思ってしまいました。
貴族らしからぬ笑顔と、普段であれば1滴も流さないであろう汗を拭くこともせず人形作りに熱中されるレイラ様が、初めて年相応の女の子に見えました。
「さぁ出来たわ!」
レイラ様は、仕上げに髪の毛を生やして、人形の首を掲げられました。
そして、その頭を先ほどの人形に取り付けます。
「これよ!これだわ!私の最高傑作よ!」
レイラドールは私の顔を得て、ゆるりと起き上がります。
スッと見開かれた瞳の綺麗なガラスはその蒼い色をたたえています。
髪の毛は、私よりも少々レイラ様よりでしょうか?
やっぱりちょっと怖いです。
「今日は魔力を使いすぎたわ。続きはまた明日にしましょう。リラ、付き合ってくれてありがとう」
「いえ、お安い御用です…」
大変上機嫌なレイラ様に連れられ、工房を後にしました。
メイド服を着ているはずの私をまたお部屋に連れ込み、お茶の時間となりました。
私、メイドとしてやっていけるでしょうか?
というか、愛玩動物にされそうな気がして心配です…
でも、あの人形を作るときの美しいレイラ様に”おもちゃ”にされるならやぶさかではないとも思ってしまいました。
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