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人形遊びも、ここまでくるとすごいでしょ?  作者: シャチ


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3/18

メイドと仲良くなりましょう?

 今はリラと私の部屋にいる。

 父の書斎から、私が使うメイド人形に案内させた。

 リラは、すでに屋敷の中は把握しているとのことであったが、私がそうしたかった。

 私に似ていながらも、庇護欲をそそるのその少女を私は”メイド”扱い出来そうにない。


 委縮しっぱなしのリラを私の向かいに座らせ人形にお茶を入れさせる。

 目標はリラと仲良くなる事。

 そのためにはお互いをよく知る必要があるだろうと考えたわけだ。

 仮に今後メイドとして働かせるにしても、その仕事は多分”メイドの仕事”ではない。

 仕事の補佐をしてもらうことは間違いない。


「さて、リラ。お互い仲良くなるためにいろいろお話をしましょう」

 お茶がそろい、お茶菓子が出てきたので、話を切り出す。

 リラは目を丸くして私を見返してきた。

 どうも初めの父との会話で、ひどい目にあわされるのではと思っていたらしい。

「安心してリラ。私はあなたを義妹として、いえ、一人の女性として認めることにするわ。父の行為については一生のネタにするつもりだけど」

「レ、レイラ様。先ほどは不潔で汚らわしい、認めることはない。とおっしゃっていたのにどういった心変わりですか?」

 不安げな声でしゃべるリラではあるが、その所作はしっかりしている。

 子爵家相当の所作だ。

 メイドとしてならば王城に勤められるレベルである。

「率直に言うわリラ。あなたは私の好みよ。あなたを見た瞬間、心の臓がキューッとなったわ。そしてドキドキが止まらないの。私はあなたを守りたいし、すべてを愛したいし、いっそ部屋に閉じ込めてしまいたい」

「…それはそれで怖いのですが」

 リラが私の言葉でびくっとして縮こまってしまった。

 ちょっと欲望を素直に吐露しすぎたようだ。

「欲望を垂れ流してしまったわ。あなたが可愛すぎて歯止めが利かなくなるなんて、はしたないわね私」

「い、いえ私などのことをお気に召していただけたようで、ありがたいです」

 私はお茶を一口飲み、リラにも勧める。

 恐る恐るお茶を口にするリラだが、安心してほしい別に一服盛ったりはしていない。

「改めて自己紹介させてもらうわ。レイラ・ドールよ。趣味は人形作り、恋愛対象は女性」

「は?」

 またリラが目をまんまるくしている。

 その顔もかわいらしいわね。私じゃ絶対そんな表情できないもの。

「驚くことじゃないわ。貴族には割と多いのよ。貴族女性の役割として子をなさねばならないから、表立って言わないだけで、ドール家が販売している淑女向け愛玩人形なんて、半分は雌型よ」

「そ、そうなのですね」

 あ、引いている。可愛いわね、その顔。

 しかし、10歳前後の少女に言うことじゃなかったかもしれない。

 自分もその年齢なのだが随分擦れているなと再認識した。

「じゃあ、今度はリラ貴女のことを教えて」

「はい、お耳汚しになると思いますが…


 リラの母は、どうも過去にお母様のメイドとして一緒にこの屋敷にきたらしい。

 その時レスター伯からお手つきにあったとの事。

 すでにアイシャ・ドールも妊娠しており、話し合いの結果、そのメイドは私の乳母として通うことになったのだそうだ。

 そして、生まれたリラには魔力がなく、貴族として引き取るわけにもいかないということで、市井で彼女の母と暮らすことになったとか。

 私の乳母役を終え、屋敷での仕事を失った母親とリラは父からの支援で普通の生活をしていたそうだが、昨年母親が他界。

 リラは天涯孤独になりそうだった所を、ドール家が引き取ったということである。

 どうも、私の知らない半年間で、リラはメイドの教育と下級貴族の淑女教育を叩き込まれ、私に嫌われないよう毎日風呂にも入り身だしなみを整えたそうだ。

 屋敷にきたばかりのころのリラは市井の平民と同じような生活だったため、肌も荒れ、髪の艶もなく枝毛まみれだったそうだ。

 今は、肩口まで伸びるくすんだ銀の髪には艶もあり、枝毛もない。

 肌も白さが際立ち、顔立ちも私にどことなく似ている。

 まぁ父が手を出す女性だったのだから相当お綺麗な方だったのだろう。

 私に乳母の記憶がないので、まさか同じ乳をのんで育った腹違いの妹がいるとは思いもよらなかったわけだが。


「なかなか大変な生活を送っていらしたのね」

「それでも、ご主人様に引き取られてからは、貴族のような生活をさせていただき感謝しかありません」

「お母様を亡くされての心労は計り知れない心の傷でしょうに、お話ししてくれてありがとう」

「感謝の言葉などおかけにならないでください。お嬢様にとっては突然現れた、どこぞの馬の骨とも知れぬ女でしかございません」

「いいえ、半分は血のつながりがあるのだもの、上司と部下という関係よりは一歩踏み込みたいところよ」

 私はそっとリラに椅子を近づけ、その手をそっと握る。

「ひゃ、ひゃい」

「ぜひ私のことは、姉だと思って気楽に接してほしいわ」

「お、お姉様として…お慕いしたいと思います」

 うんうん、いきなり愛人だの恋愛対象など並べ垂れられても彼女がノンケでは意味がない。

 しっかりと見極めていこうとにっこりとほほ笑むと、ひゅっとリラの息を吸う音がする。

 そんなに獲物を狙うような目をしてしまっていただろうか?

 別に今すぐとって食べようなんて気はないわよ。

 添い寝はしたいけど。

「さて、リラはすでにお屋敷の教育されているということだけれど、工房に入ったことはあるかしら?」

「いえ、そこは立ち入り禁止だと言われております」

「じゃあ私の工房を案内するわ。リラに手伝ってもらいたいことも有るし…」

「それは、どういった内容でしょう?」

「モデルになってもらったり、制御テストに付き合ってもらったりよ」

「できれば、レイラ様の普段の生活についてもサポートいたしたいのですが」

「それは別に不要よ、この部屋のメイド人形を見たでしょ?可能な限り姉妹として過ごしたいわね。ただ、リラがやりたいことがあるなら好きにしていいわよ」

「あ、有難うございます」

 といっても、早朝から稼働し、朝のお茶の準備に着替えの補助、入浴補助に茶会前のドレスアップなどはすべて私が制御するメイドたちで事足りてしまうので、やることなどないと思うが。

 さて、お茶も飲み切ったし、リラと一緒に工房へ行きましょうか

このムーブで仲良くなれるとは思えない…


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