卒業記念パーティー
あれから2年。
リラが大変優秀で1年の終わりにはAクラスへ編入できる成績を獲得したので、レイラドールも同時にAクラスへ編入し、爵位の関係もあり生徒会役員となった。
生徒会長はロナルド殿下だが、まぁ仕事をしない。
側近二人についても遊び惚けている状態であり、実質2年生が生徒会運営をしていた。
結果何が起こるかというと、卒業記念パーティーの主催、在校生代表をレイラドールが受け持つことになった。
人形に主催やらせるのかよ…
というわけで、裏で私がほぼすべて取り仕切り卒業記念パーティーの会場を整えた。
学校の資産ではあるが、私が魔力を供給しているレベルBドール50体を給仕係にし、パーティーホールを飾り、食事を用意する。
進行についてもすべて人形だ。
今回はあえて”人の手を使わない”。
後は、この卒業式で、どうも私に婚約破棄を突きつける予定を立てている殿下を貶めればいい。
なので、レイラドールのサポートとして私もメイド服でパーティーには参列する。
学園内のほとんどの貴族たちは、第二王子の素行の悪さを知っている。
一部それでも第二王子派みたいなものもあり、バカを操って甘い汁を吸おうという王国の膿もいるが。
パーティーに参列する在校生側にはすでに今日起きるであろう出来事を連絡済み。
卒業生たちも勘の良い人や”情報戦が得意な家”などは既に知っているだろう。
本来の卒業記念パーティーに大人は参列しないが、今回は国王陛下と第一王子殿下がやってくる。
これで例の約束も守られるだろう。
既に様々な証拠を押さえており国に報告済みだ。
予算の横領、偽装された届出申告、私に対する不敬罪の数々。
大変楽しみなパーティーになりそうだ。
*****
卒業記念パーティー当日。
卒業式も終わり、卒業生たちが入場し始める。
私は主催側なので、エスコートされて入場などはない。
厳密にいえば、ロナルドバカ殿下から正式に申し込まれればエスコートされて入場しただろう。
何にも言われていないので会場に先に居るだけだ。
レイラドールの横に立つ私を他の貴族子女たちも気にした風でもなくレイラドールに声をかける。
それにしても、レイラドールは見事に動く。
私が何の指示もしていないのに侯爵令嬢として完璧に会話をしている。
流石レベルSとして作り上げただけはある。
しばらくしてロナルド殿下がリゼル男爵令嬢を連れて入場した。
案の定彼の瞳の色のドレスを身にまとい、エスコートとは名ばかりの腕に巻き付くように入場するノーラの勝ち誇った顔よ…
レイラドールに見せつけるように歩いているが、本来の見せる相手はソレじゃないぞ。
というか、いまだにレイラドールが人形であることも分かっていないのか…
と、入場したバカ殿下たちがまっすぐにこちらに向かってくる。
まだパーティーも始まっていないのに、事を始めるつもりか?
「レイラ・ドール!貴様の醜悪な性格は見るに耐えん!!ここに婚約を破棄し、このノーラ・リゼル嬢と新たに婚約する!!」
「さようですか、第二王子殿下。婚約破棄して本当によろしいのですね?」
「よろしいも何もない!かわいいノーラを陰で虐めていたことは知っている!!爵位に物を言わせた行いしかできぬ者など私にふさわしくないわ!!」
言質を取った。
さて、レイラドールの機能を停止してやろう。
「ケイヤクガセイリツイタシマシタ。ジリツキドウモードヲカイジョシマス」
どさり
突如全身の力が抜けたようにレイラドールが崩れ落ちる。
機能が停止すれば人の形状など立ったまま維持は出来ないのだ。
「なっ!?どうしたレイラ!!」
バカたちが慌てふためく。
それでも助けようともしないとは面白い。
どうせ、捨てられそうになればすり寄ってくるとでも都合よく考えていたのだろう。
そろそろ種明かしをしてやるか。
「第二王子殿下?そろそろ本人に対して面を向けて話してくださるかしら?」
私は茶色のウイッグを脱ぎ捨て頭を振る。
輝く銀髪が翻る。
もちろん縦ロールなどではない。ストレートの綺麗な髪。
そして認識阻害の魔道具を切る。
「レイラ・ドールは私ですわよ?殿下。それは侯爵令嬢人形。王家の操り人形ですわね」
「「は?」」
側近含めバカ殿下たちの動きが止まる。
どう?私美しいでしょ?
この私を見たら面食いの彼方なんか絶対私を手放そうとしなかったでしょうからね。
「な、何をバカなことを言っているんだ。お前の家の令嬢が倒れているんだぞ?それにしても綺麗な女だな…どうだ人形を作ることしか能のないドール家になど仕えていないで俺の女にならないか?」
「バカはあなたですよ殿下。寝言は寝てから言ってくださいまし?
ドール侯爵家当主、レイラ・ドールは私ですわ。
今まであなたがレイラだと思って見ていたのはお人形。
私の最高傑作ですわ。
まぁ最初の顔合わせの時から、お人形を「レイラ・ドール侯爵令嬢」だと思っていらっしゃったようですから信じられないのも無理はないですか」
「な、なにをいって?」
「今婚約破棄した女にケツを振らないで下さる?下品すぎて吐き気がしますわ」
「貴様!王子であるこの私を欺いたのか!!不敬であるぞ!!ひっとらえろ!!!」
激高した殿下が私をとらえる様指示を出す。
でもねぇ殿下、貴方が指示を出した一人は私の人形なのよ?
「トータル起動停止、エスコ、護衛を拘束なさい」
殿下の後ろにいた2体の人形のうちの一つが、どさりと崩れ落ち、護衛騎士の一人は私をとらえようとした副隊長の息子に向かい捕まえる。
ノーラ嬢も含め、皆が目を点にしている。
会場の他の貴族たちも目を見開いてメイド服を着ている私を注目していた。
「殿下、今一度ドール家はどんな家かお教えいただけますか?」
「っ人形を作ることしか能のない家だろうが…」
「えぇそうですわね。それでライスター王国で侯爵位をいただいた家ですわ。
ただ、人と見分けがつかない人形を作り、それを人と分からない様に操ることができるという部分が抜けておいでですよ。国の貴族がなにを生業としているかぐらい覚えている必要がありましたわね」
私がホール内の人形への魔力供給を止める。
突然会場のいたるところから悲鳴が上がる。
給仕をしていたと思っていたメイドや従者が次々と倒れるのだ。
びっくりするだろう。
「我が侯爵家は役立たずで不要とお考えのようですので、第二王子殿下に関係する人形にはすべて停止信号を出しました。今頃王宮は大変でしょうね」
「なにをしたんだ貴様!!」
「ずいぶん騒がしいじゃないか息子よ」
「ロナルド、君には失望したよ」
ここにいるはずがない国王陛下と第一王子殿下が到着されたようだ。
随分急いで来られたのではないだろうか?
それともこんなパーティーが始まる前から事を起こすとご存じだったのかだな。
全く食えない人たちである。
ちょっとこのお話さっさと閉じちゃいますね




