大変楽しい学校生活
学校生活が始まった。
私はこの国に多い茶髪のかつらをつけてメイドとして寮で過ごしている。
既に学園内には先生のサポートや購買の受付、周辺警備用の人形を50体ほど納入した。
大変良いお金になりました。
これらすべてに、映像記録の能力を付加しており、学校内で見たもの聞いたものを記録し、学校と王家へ定期的に自動で提出されるようになっております。
なので、映像は改変出来ない設定です。
様々な”証拠”として有効活用されることでしょう。
もちろんレイラドールにも搭載済み。
ロナルドバカ殿下の行動もすべて記録しております。
学校に入るにあたりもう少し太めに作った私への暴言の数々はすべて記録させていただいておりますのよ?
王族だから侮辱罪が適用されないとでもお思いなのですかね?
廃嫡された後が楽しみです。
あと、リラも学校でうまくやっているようです。
認識阻害の魔道具のおかげで、男爵や子爵のご令嬢とも仲良くなれたようです。
レイラドールには子爵や男爵では声をかけられませんからね。
私と繋ぎを作りたい貴族達はリラに声をかけるのが早いので余計かもしれません。
「レイラさん、今日も1件人形の依頼がありました」
「どこのお家かしら?」
今はリラと二人でゆっくりと湯船につかって情報交換中。
裸の付き合いですわね。
リラは私よりちょっと発育がいいようで、私が育てたわけではないと思いたい。
最近ではこうして一緒にお風呂に入り、洗いっこもできるまでに打ち解けてくれた。
「えーと…ロックウェル子爵家ですね。メイド人形を一つ欲しいと」
「そう、わかったわ。それにしてもリラは営業がうまいわね」
「あ、ありがとうございます」
そういって私が肩をなでてあげると、ぽっとリラが赤くなる。
最近ではかなり打ち解けたというか、そういう行為についてもリラは抵抗感がなくなってきている。
あと、例の計画も私とリラが女性として成長し始めたおかげで進んでいる。
不浄の物なんて言われているが、私からすれば最高の研究材料なのだ。
私とリラの血を継承する”ホムンクルス”の製作。
ドール家の夢は”新たなる人類”を生み出すこと。
初代ドール家当主は、このライスター王国につくにあたり、この禁断魔術の研究をすることを初代ライスター国王に許可されている。
父は自らの精液を使用しての従来のホムンクルス製造にこだわり、研究はとん挫したと言っていた。
私はそれを9歳のころから引き継ぎ、過去の文献を紐解きながら、構想をしていたのだ。
女性の力なくしてホムンクルスは出来ないと理解した。
必要な物は別の人間の二つの血…私とリラがいれば可能だ。
リラには申し訳ないが詳細は伝えずに血を提供してもらっている。
現時点ではまだ成功していないが、その芽は見えてきている。
学校卒業までには研究が完了するだろう。
「じゃあ、子爵令嬢には来月には納品すると伝えて」
「わかりました。レベルCの人形なのに随分納期を取るんですね?」
「もったいぶるのよ。すぐできるなんて思われたらいやじゃない」
「そ、それもそうですね・・・今のレイラ様なら1ヶ月もあれば1個師団の兵力を整えられるだけの生産能力がありますもんね」
「レベルCならね。レベルAだと本当に1ヶ月かかるわよ」
そういって、お風呂を上がる。
リラに体を拭いてもらいながら、最近作ったレベルについて再度考える。
基本的に人形は魔力を供給されれば自立稼働する。
レベルCとは、掃除洗濯をメインとするメイド。
この部屋を掃除しなさい、この洗濯物を処理しなさいとある程度特定の指示に対して自己分析し忠実に作動する。
命令されない限り作業はしないし命令されたこと以外は行わない。
なので、レベルC人形には正確に指示をしないといけないが、指示は最後までやりきる。
レベルBはそれに追加で、自己判断機能が付く。
命令された業務については、より高度な自己判断分析によってある程度能動的に作動する。
レベルAは最上位機種、動作はより人間らしくなり命令された仕事について常に作業を行う。
そして、より複数の命令に対応する。
伯爵家のメイドとしてなら、専属メイドとして仕事が可能なレベルだ。
そのため、販売金額も通常の伯爵家専属メイドが受け取る給料の10年分となる。
分割支払いも受け付けているが、多くの家は一括で支払ってもらっている。
販売分としては、このレベルAまでが一般販売で、この上にレベルSと呼ばれる人形がある。
レイラドールがそれだ。
父と母の専属メイド人形もこれに当たる。
魔力充填以外はほぼ自己判断で”普通の人間のようにふるまう”からだ。
作成当初に命令した内容とその能力値による自己判断で作動する完全自立人形。
ドール家の外には出していない品だ。
王家に頼まれても出さない、ドール家門外不出の人形だ。
レベルSはホムンクルス製造の過程で生み出された人形である。
これには「操作者の血」を必要とする。
こちらは本当の意味での血液だ。
レイラドールにも私の血を吸わせている。
おかげで”私として振る舞えている”のだ。
レベルSのドールはリラが来る前にしか製作していないので、彼女も存在は知らない。
もしかするとうすうす気が付いているかもしれないが…
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学校生活は平然と流れている。
バカ殿下は相変わらず浮気をして”私用の経費”を男爵令嬢につぎ込んでいる。
リゼル男爵家のノーラという令嬢であることまで突き止めた。
リゼル家は古くからある男爵家だが特徴がないのが特徴と言える家だ。
そんな家の令嬢が何を企んでいるのか知らないが、第二王子にべったりである。
潜伏している学園の人形の情報では「すべてゲームの通り進んでいるのに、悪役令嬢に絡まれない?」とこぼしていたという。
独り言は頭の中にとどめておいていただきたい。
奴は、この国でたまに起こると言われる”テンセイシャ”という輩なのだろう。
レイラドールは人に一切の危害を加えない様に設計したので、人を虐めるなんてことはしない。
相手から突っかかってこなければ、咎めることも、目線を合わせることもしないだろう。
バカ殿下の側近二人も彼女の虜のようだ。
私の送り込んだ2体の人形は彼女に全く靡かない割に、言うことにはすべて従うためそれで満足しているようだ。
愚かな女だ。
だが、王家の計画の為には大変良い材料である。
リゼル家には悪いが、娘を止めないお前らも悪い。
共に沈んでもらおう。
日中私は部屋でメイド服を着て、レイラドールからの信号を楽しみながら人形をゆっくり作成し、午後はリラとまったり過ごす大変充実した生活を送っている。




