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p.6

 翌日。ここ最近の刺すような日差しが嘘のように、どんよりとした分厚い雲が空を覆っていた。今にも雨が降り出しそうな空を見上げながら、「今日はいないかもな」と思った真由は、牛乳パックを購入せずに、タバコ入りのポーチだけを携えて公園へと向かった。


 真由の予想通り、公園に黒尽くめの子の姿は見当たらない。これまでも天気の良くない日には決まって姿を現さなかった。本人に確認をしたことはなかったが、きっと雨が嫌いなのだろう。


 久しぶりに、真由は指定席に腰かけ、タバコに火を付ける。空を覆っている分厚い雲を吹き飛ばすかのように、空に向かって目一杯息を吐き出すと、そんな貧弱な風では相手にならないと言わんばかりの強風が、真由の吐き出した煙を掻き消すかのように吹き付けてきた。そう言えば、今日は近づいてきている台風の影響で天気が悪くなると天気予報が伝えていた。


 強風がジジジと容赦なくタバコを燃やしていく。仕方がないので、真由は、最後のひと吸いと大きく吸うと、至福の時を惜しむかのように、細く長く息を吐き出し、これ以上風にタバコを燃やされないように、携帯灰皿に吸殻を押し込んだ。


 強風にバサバサとあおられる髪を片手で押さえながら、昼休憩を終わろうと腰をあげたとき、視界の端に何か黒いものが映ったような気がして、視線を公園入口に向けた。ちょうど、男性が一人、公園へと足を踏み入れたところだった。


 男性は何かを探すように、視線を下げ、地面付近をキョロキョロとみている。それから、すぐに入口近くの茂みにしゃがみ込んだ。


 探し物でも見つけたのだろうと真由が、特に興味もなく、その男性の横を通り過ぎようとしたそのとき、男性が覗き込んでいる茂みの中からカサリという小さな音が聞こえ、真由の意識は音がした方へ向けられた。


 視線を向けたからと言って、茂みの中など、そう簡単に見えるものではないはずなのに、そのとき真由には、茂みの中で、黒い尻尾が揺れている様子が見えたような気がした。


「クロっ!?」

「えっ?」


 愛猫クロを見つけたと思った真由は、周りも気にせず、茂みの前に勢いよくしゃがみ込む。途端に、耳元で、聞きなれない男性の声がした。


 声に驚き、視線を横に向けると、男性の驚き顔が真由のすぐそばにあった。どうやら真由は、勢い余って、男性のすぐそばにしゃがみ込んだようだった。


「うわぁぁ。ご、ごめんなさい。うちの猫がいると思って、つい……」

「い、いえ……」

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